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NTR勇者、我が道を征く〜闇に堕ちた英雄は、復讐を誓う。〜  作者: アルファベータ
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第5話 甘い毒、魔導師の陥落



 王都の夜空に、重騎士ガイルの醜聞が魔法映像として映し出されたあの日。民衆が怒号を上げ、近衛兵が動き出す混乱の中、一人冷徹にその光景を城のバルコニーから眺める女がいた。王宮魔導師であり、かつて勇者パーティの軍師を務めた「賢者」セーラである。


 「……ふふ。やはり生きていたのね、アルス。あの奈落から這い上がってくるとは、計算外だけれど……面白いわ」


 彼女は動揺するどころか、薄く笑みを浮かべた。彼女にとって、筋肉だけのガイルなど最初から使い捨ての駒に過ぎない。



◇◆◇


 アルスはガイルを社会的・肉体的に破滅させた後、休む間もなく次の標的、セーラへと狙いを定めていた。彼女の魔法障壁は王都最強。正面突破は不可能だ。アルスは略奪したスキル『影移動シャドウ・ステップ』を駆使し、深夜の王立魔導図書館へと潜り込んだ。


 目的は、セーラの魔力の源泉である「固有魔導回路」の設計図を盗み出すこと。彼女の魔法を無力化するには、その根源を【略奪者】で解析し、因果を書き換える必要がある。


 「……あった。これだ」


 書庫の奥深くに隠された禁書。そこにはセーラが神聖魔法と暗黒魔法を融合させた独自の理論が記されていた。アルスは確信した。これさえ読み解けば、彼女の『絶対詠唱』を奪い、無力化できる。


 しかし、その瞬間。図書館の全域に、まばゆいばかりの幾何学模様の陣が浮かび上がった。


 「――ようこそ、私の書斎へ。復讐者さん?」



◇◆◇


 天井からゆっくりと降りてきたのは、優雅に杖を携えたセーラだった。彼女の背後には、数十もの魔導ビットが浮遊し、それぞれが上級破壊魔法の照準をアルスに合わせている。


 「……待ち伏せか」


 「当たり前でしょう? ガイルがやられた時点で、あなたがここに来ることは計算済みよ。だって、あなたは昔から『正解』を選ぼうとする癖があるもの」


 セーラはクスクスと微笑んだ。アルスは即座に『腐食の霧』を展開しようとするが、発動しない。


 「無駄よ。この空間はすでに私の『沈黙の回廊』。あなたの持つ正体不明の闇の力も、ここでは発動条件を制限させてもらったわ。その手に持っている設計図も……私があなたを誘い込むために用意した『偽物』よ」


 ドクン、とアルスの心臓が跳ねる。略奪者の眼で解析していたはずの設計図が、墨のように溶け出し、アルスの両手に絡みついた。


 「ぐっ……!? これは……」


 「『因果の縛り』。あなたが私に干渉しようとした瞬間に発動する呪い。これで、あなたの【略奪】の力は封じられた」



◇◆◇


 アルスは膝をついた。身体が重い。セーラの言う通りだ。彼女はアルスが「情報を得て、弱点を突こうとする」こと自体を予測し、その思考プロセスそのものを罠にかけていたのだ。


 「あなたは昔から努力家だったけれど、頭の回転は私に及ばない。……さあ、その『面白い力』を、今度は私が研究させてもらうわね」


 セーラが杖を振る。極大の雷撃がアルスを直撃した。


 「ああああああああああああッ!!」


 全身を焼く激痛。意識が遠のく中、アルスはセーラの冷たい、蔑むような視線を見た。彼女にとってアルスはもはや復讐者ですらなく、ただの「興味深い実験体」に成り下がっていた。


 「……まだだ……まだ、俺は……」


 「お休み、アルス。次に目が覚めた時は、あなたの魂を切り刻んで中身を見せてもらうわ」


 アルスはそのまま、セーラが用意した地下実験室の闇へと引きずり込まれていった。情報の優位に立っていたつもりが、最初から彼女の手のひらで踊らされていたのだ。




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