表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NTR勇者、我が道を征く〜闇に堕ちた英雄は、復讐を誓う。〜  作者: アルファベータ
1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/19

第3話 偽りの英雄、真実の絶望



 奈落の底から這い上がったアルスの体は、もはやかつての「勇者」のそれとは異なっていた。皮膚の下をのたうつ黒い血管、夜の闇よりも深い漆黒の瞳。奪った魔獣の再生能力により、砕けた骨は歪に結合し、以前よりも強固な肉体へと作り替えられている。


 アルスが最初に向かったのは、王都ではない。彼が生まれ育ち、そして愛するアリシアと共に歩むはずだった故郷――カナン村だ。


 「……嘘だろ……」


 村の入り口に立ったアルスの喉から、乾いた掠れ声が漏れた。視界に広がるのは、のどかな田園風景ではない。黒く焦げた家々の残骸、異臭を放つ家畜の死骸。そして、道端に転がる見覚えのある顔、顔、顔。


 「村長……おばさん……リリィ……」


 かつて自分を「村の誇りだ」と送り出してくれた老人。いつも焼きたてのパンを分けてくれた、恰幅の良い女性。勇者様に憧れると言って笑っていた、幼い少女。


 そのすべてが、無残な物言わぬ肉塊へと変えられていた。


 村の中央広場には、一本の旗が突き立てられている。そこには王国の紋章と、新勇者として祭り上げられたガイルの紋章が刻まれていた。


 「『魔王の残党に襲われた』……だと?」


 アルスは膝をつき、灰となった土を握りしめた。略奪者プレデターが、残留した魔力の残滓を捉える。そこにあるのは魔物の禍々しい魔力ではない。ガイルの放つ重厚な物理衝撃の跡と、セーラが最も得意とする広範囲焼却魔法の術理だった。


 「……あいつらが、自分でやったんだ。自分の手で、この村を……!」


 ガイルたちは「勇者の故郷を守れなかった悲劇」を演出するため、自らの手でアルスの帰る場所を焼き払ったのだ。アリシアもそれを知っていて、あの日、あんなにも冷たく笑ったのか。


 「ああああああああああああああああッ!!!」


アルスの絶叫が、死に絶えた村に響き渡る。その慟哭に呼応するように、アルスの影が意志を持ったかのように蠢き、周囲の死体から「無念の記憶」を吸い出し始めた。


 【スキル:死者の怨嗟レクイエムを獲得しました】

 【効果:死者の最期の記憶を読み取り、負のエネルギーに変換する】


 脳内に流れ込む、村人たちの最期の光景。


 「助けて、アルス様……!」と泣き叫ぶリリィの喉を、ガイルの斧槍が容赦なく貫く。


 「汚らわしい平民ども。勇者の汚れ役として死ねることを光栄に思いなさい」と、

冷笑を浮かべながら魔法を放つセーラ。


 そして、馬車の上から退屈そうにそれを見つめ、爪の手入れをしていたアリシア。


 ブチリ、と。アルスの中で、人間としての最後の何かが千切れた。


 「……救う価値なんて、なかったんだ。この国も、人間も。全部……全部、壊してやる」


 アルスは立ち上がり、背後にいた「何か」に視線を向けた。


 村の焼け跡から這い出してきた、数体の下級悪魔。魔王亡き後、野放しになったはぐれ者たちだ。


 「ヒャハハ! 生き残りがいたぜ! こいつの肉も……」


 悪魔が襲いかかろうとした瞬間、アルスの指先から黒い霧が放たれた。霧に触れた悪魔は、悲鳴を上げる間もなく全身を腐食させ、その魂をアルスへと吸い込まれていく。


 「黙れ。お前たちの『命』すら、俺の復讐の糧にすぎない」


 【略奪完了:スキル『影移動シャドウステップ』を獲得】

 【略奪完了:スキル『腐食アシッドミスト』を獲得】


 アルスは、焼け残った一軒の家――かつて自分とアリシアが将来住むためにと、少しずつ手入れをしていた家に入った。


 床下に隠していた、古びた黒いマントを羽織る。それは、かつて魔王軍の幹部を討ち取った際に戦利品として得た、呪われた防具。かつての「光の勇者」には不要だったものだが、今の彼にはこれ以上なく似合っていた。


 「まずはガイル。お前が手に入れた『公爵』の地位、その強固な『肉体』……。民衆の前で、ゴミのように削ぎ落としてやる」


 アルスの姿が、影に溶けるように消えた。向かうは、祝宴に沸く王都。そこには、自分を裏切った恋人と友が、他人の血で贖った栄光に浸っているはずだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
仲間は魔王軍並みのド外道だったか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ