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2章
施設内部を進む男──ナード。
暗い内部はいつ何が起きるかわからない。それも半壊状態なら尚更だ。だが止まるわけにはいかない。
ある程度進んだナードは施設の受付へと着く。
(本来ならすぐにここへ着くはずだったんだがなぁ……)
植物や崩れた瓦礫が積み重なり周り道になってしまっていた。
(どこかに施設の構造がわかるものが……)
受付にあるロッカーや散らばった紙切れなどを手探りで探るがそれらしい物は出てこない。ここでナードはバックから薄型の端末を取り出す。
パッドには長年使ってきた傷がある。
画面を起動して、依頼主から送られてきた情報を確認する。
だが、表示されているのは目的地の座標と軽いメッセージだけだった。
「ルートなし、か」
施設の構造は分からない。マップもない。地下へ続く経路は全てここで探すしかない。
ナードはため息をつくと、端末をしまう。
ここからは経験と勘だけが頼りだ。ナードは少しの小腹を満たすとまたすぐに歩き出した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
受付の先を進んでいると瓦礫で埋もれているが扉を見つけた。
ナードは少し考えるとバックを置いてどかそうとしたがやめた。代わりにポケットにあるプラスチックのゴミを捨て、その場所を後にし、別のルートを進む。
(今は…体力の消耗を抑える事が重要だ)
そんな事を考えるナードだが、うまくはいかない。
別のルートを進んだ先には床にぽっかりと穴が空いており覗くと暗黒だ。
(地下………流石に無理だな)
ここも後にする。そしてまた別のルート、別のルートと進むナードだが、その先では必ず行き止まりだ。
仕方なく、ナードは1番最初の扉のある場所へと戻ろうとする。
ルートへ目印をおいてはあったが、施設状態のせいで困難なルートばかりだ。目印があってもすぐに戻るのは難しい。だが、勘と経験のおかげがすぐに戻ることができた。
(やっぱりここが1番マシだな)
ナードはバックを置いて、手で瓦礫をどかし始める。コレばっかりは仕方ない───
それから数分してある程度退かすことができた。ナードはバックを背負い、扉に手をかける───その時だ。
ヴゥゥゥゥゥゥゥン……
遠く、だが異様に大きな駆動音が施設全体に低く響く。
(………)
ナードは無意識に身を低くしていた。それは恐怖でもあり警戒的でもある。完全な本能による動きだ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
少しして今度こそ扉に手をかけ開けた。
その先は狭い部屋だ。中心には金属製の機械的椅子が床に固定されていた。それ以外はその椅子の装置らしいものだけだった。他には何もない。
ナードは気になり近くで観察する。そこには背面や座面に装置があった。椅子の大きさからして子供から大人まで座れるだろう。
ここで装置のボタンを押す。だが、動きはない。
「まぁ、流石に止まってるよな」
バックから端末を取り出したナードはこの部屋全体を撮った。それを端末に保存すると、バックを置き、また装置を触り出した。
ホース状装置は椅子と、直接つながっておりそれは床下に続いていた。
(でも、なぜ床に固定している?)
そう思いながらナードはホースと椅子直接つながっている部分を持ち、ホースを抜こうとする。
(いや、まて。いつもの癖が出てしまった……)
ナードは首を軽く左右にふり、その場を離れようとする。
(目的は地下だ。珍しい物を見ると、メインを忘れてしまうな……)
ガタッ!
強い音が部屋で鳴った。何かが外れたような音だった。ナードはじっとその場に固まり、周りを見る。異常はない。あるとすれば、扉が何故か上に移動している事だ。
(扉が……いや待て!!?」
床全体が、静かに、だが確実に降下していく。駆動音はすぐ下から響いていた。
「いらない事をしない方が良かった……」
どんどん降りていく。
取り敢えずナードは椅子に座った。するとピコンッと椅子から音が鳴る。
「なんだ?」
ナードが確認しようと身体を起こそうとする──だがダメだった。
(!?)
ナードの手足は固定され、動く事が出来ない。拘束具が椅子から伸び、次々とナードの身体を固定していく。抵抗する暇はなかった。
「クソッ!」
完全に固定されてしまった。同時にピコンッ!と今度を高い音が鳴った。鳴っただけだった。だがこの音にナードは聞き覚えがあった。
(今のは端末だな。それも目的の座標へ到着した時になる……まぁ下に行ってたから、察してはいるがここが目的地の地下だな)
「だが…」
いつのまにかナードは目も拘束されている。もうここがどのような状態にあるのかはわからない。
(……しくったな。こんなミスをするとは……)
だがナードには希望があった。そして
「ここへ向かってるのは俺だけじゃないし、待つしかないな」
ナードは依頼を受ける時のことを思い出す。
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3章
大きな太陽が、連なって崩壊したビル群を照らしていた。
「……ナードの応答が昨日から全くない」
その光の中、錆びたトラックの上に寝転ぶ少女がいた。人形のように整った顔立ちの少女だ。
その少女は薄型の端末を真顔でじっと見ていた。
「想定外だ」
少女は端末でメッセージを送る。だが数分経っても帰ってくることはなかった。
「応答も返信もなし。何かあったね」
そう言って少女は飛び降りる。
素早く、太陽に照らされた集落──拠点へと走っていく。
◆◆◆
少女が向かった先は通信施設。ここで少女は中の人物へ端末を見せた。
小さな腕をグッと伸ばして目の前の女性に画面が見えるようにした。
写している画面は少女とナードの連絡画面
:状況は?
:大丈夫?
この画面を見た目の前の人物の表情は困惑だ。
「えっと…ノアちゃん?コレは?」
ノア──少女の名前だ。
「見ての通りだよ」
「あはは…」と苦笑いする女性。ここで横を通りかかった大柄の男が叫ぶ。
「おーい!ナードの娘が用事あるみたいだぞ!!」
そう言って軽く手を振り去っていく男。女性もノアに「またね」と言ってその場を離れた。取り残されたノアは近づいてくる人物をじっと見た。
その人物は通信管制官。
「どうした?ナードは昨日出発したぞ?」
「そんなの知ってるよ。昨日から応答がないの」
それを聞いて管制官は目を丸くするがすぐにノアの端末を手に取る。
「応答が途絶えたのは……PM8時頃か。だとしたら半壊施設へ着いてるだろう」
「きっとその施設で何かあったんだね」
「そうだね。その可能性が1番だ…………!」
管制官は何かを察したようにノアを見た。
ノアは管制官に向かって手を差し出していた。それは自分の端末へ向けた物じゃない。
管制官が腰にぶら下げている銃に向けた物だった。
それがわかった管制官は「ふっ」と笑った。
「いくのか?」
管制官からの問いに頷くノア。だが
「まぁ待て。今回半壊施設へ向かってるのはナードだけじゃない」
その時、通信施設へ小柄な男が勢いよく入ってきた。
「すんません!!あいつかっ!アイツが!!昨日半壊施設へ向かった相棒の応答が途切れました!!!」
「「……」」
管制官とノアは顔を見合わす。
「あっあの、相棒…カッセルの応答はこちらに来てますか?」
小柄な男は管制官に問う。管制官は目を閉じ首を横に振った。
「私がいくから、早く装備を」
少女は真顔で管制官に手を差し出す。管制官はため息をついて端末を少女にら返す。
「補給庫にいけ。連絡を入れておく」
手を払いながらノアを向かわせる。
「今回もEVOLNOAに頼ってしまうな」
そう言って管制官は端末で補給庫に連絡をする。




