第三話 スケーターボーイ(前編)
---三人称視点---
一週間後の土曜日。
トッドは友人のレジー・タピアと約束を果たす為、
彼の息子レジー・タピアJrとカレン・ミヨシと共に
サンフランシスコから、
ニューヨーク・ハドソン川沿いにあるスケボーパーク。
ロッキーパークに向かう事にした。
地理的にはアメリカの西岸から東岸という距離。
車で移動となると、42時間以上かかるし、
トッドしか運転手しか居ないのも少々不安だ。
なのでここは飛行機で移動する事にした。
タピアJrとカレンの旅費は事前にタピアから受け取っていた。
メジャーリーガーのトッドならば、
二人分の旅費を負担する事も可能であったが、
決して安い額ではなかった。
だからレジーはあえて先にトッドに旅費を払ったのだろう。
とりあえずトッド達は飛行機でニューヨークへ向かう事にした。
サンフランシスコからニューヨークまでの平均フライト時間は、
約6時間半といったところだ。
ちなみに席はエコノーミーだ。
一軍のメジャーリーガーのトッドには、
エコノーミー席は少々似合わないが、
旅費を節約する為に仕方なかった。
ちなみにトッド達は、
朝の七時にサンフランシスコの空港で飛行機に乗った。
正午過ぎにはニューヨークに着くであろうし、
目的地のスケボーパークにも丁度良い時間に着く筈だ。
トッド達は機内食には手をつけず、
各々は睡眠、映画視聴などで良い感じに時間を潰した。
六時間半後の午後の十三時半にニューヨークに到着。
そこからはトッドがベースボールの遠征で使う中堅ホテルに
チェックインして、今夜はここに泊まる事にした。
ちなみに部屋割りはトッドとタピアJrのツインルーム。
年頃の女の子のカレンは、気を利かして一人部屋となった。
「とりあえずお互いに着替えようぜ。
三十分後にホテルの一階のロビーに集合してから、
ホテルのレストランで食事を摂るぞ」
「「うん」」
そして三人は食事を摂った。
トッドは大好物のロコモコ丼とコーラ。
タピアJrはチーズバーガー2個とコーラ。
カレンはカリフォルニアロールを頼んだ。
それなりの規模のレストランなので、
三人の注文は無事に通った。
「トッドは噂通りロコモコ丼が好きなんだね」
と、タピアJr。
「嗚呼、ハイスクールの時にハワイ遠征してな。
その時に食べて以来の大好物さ」
「ふうん、でカレンはカリフォルニアロールなんだ。
折角ニューヨークに来たんだから、
わざわざカリフォルニアロールを食べる必要ないじゃん」
「Jr、私の勝手でしょ?
私は何処であろうと、これが一番好きなのよ」
「まあそういう事だ、好きな時に好きな物を食う。
それで良いじゃねえか?
食事を終えたら、部屋に戻って適当に着替えて、
マイボートを持参しろよ。
目的のパークまではタクシーで行こう」
「えー、トッドが車出してよ?」
「わざわざレンタカー借りるのも面倒だ。
それに事故でも起こしたら、一大事だからな」
「そうよ、Jr。
私達の我が儘でトッドに同行してもらってるんだから、
彼の言うことは素直に聞きなさい」
「は~い」
「んじゃ着替えたら、十五分後に一階のロビーに集合な」
「「うん」」
そしてトッドとJrは、自室に戻り、
頭にはキャップ、上はTシャツ、下はハーフパンツ。
そして長めのハイソックス、そしてスニーカーという
スケーター風の格好に着替えた。
「お? Jrのキャップはティターンズか?」
「うん、良いでしょ?」
「でもここはニューヨークだぜ?
誰かに文句を言われるかもな」
「その時はトッドが護ってよ?」
「そうだな、それじゃ自分のボードを持て」
「うん」
「んじゃ一階のロビーへ行こう」
そして一階のロビーへ行くと、
既に着替えたカレンが右手に黒いボードを持って立っていた。
白のTシャツにボルドーのパーカーを重ね着して、
グレーのパンツを合わせて、靴は白いスニーカーという格好。
「へえ、カレン。 似合ってるじゃん」
「Jr、ありがとう。
アナタやトッドも似合ってるわよ」
「んじゃホテルに出て、タクシー捕まえるぞ」
「「はーい」」
そしてトッド達はホテルの外でタクシーを捕まえ、
目的地であるロッキーパークへ向かった。
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ロッキースケートパーク。
ニューヨーク・ハドソン川沿いにあるスケボーパーク。
アメリカはニューヨークには、
スケボーパークがそこらじゅうにあるが、
ロッキーパークもその一つだ。
小規模のパークだけど実は歴史が古い。
最近になり白・黒のストライプ装飾がパーク内中に張り巡らされるようになった。
ストライプの装飾が視界を妨げたりして、
危険だという声もあがる一方で好き好んで遊びにくるプレイヤーもいる。
パーク内に野内設置のステージがあるハウスもある。
しかしコレは会員制で尚且つ上級者じゃないと入れない(※それほど難解なステージだという事)。
「おおー本物のロッキーパークだぁっ!
スゲえ、スゲえ、マジでクールだよ」
「喜んでもらえて何よりさ。
ただJr、なんでわざわざこのパークを選んだんだ?
わざわざサンフランシスコから来たにしては、
少し規模の小さいパークじゃないか?」
トッドの疑問は当然とも言えた。
だがJrは良い笑顔を浮かべて、元気に答えた。
「いやー実は最近嵌まっているヤウ・チューバーがこのパークで、
よく滑ってるんだよね、スケーター・イーサンという名前の配信者で、
このパークで自由自在に滑っててさ。
もしかしたら本物のイーサンに会えるかなあ、っという理由だよ」
「成る程……」
好きなヤウ・チューバーの為か。
最近の子供らしい、と思うが、
トッドもまだ若者であったので、軽く苦笑した。
「カレンもそのヤウ・チューバーが好きなのか?」
「いえ、そこまで好きでもないわ。
でも確かに彼のチャンネルは面白いから、
ついつい動画を観ちゃうのよね」
そりゃ立派なファンじゃん。
と、思いつつもトッドは「そうか」と返した。
何となくカレンは、
そう言う事を言うとむくれそうな気がしたからだ。
「でもずっとその配信者を待つ、って訳でもないよな?
人の混み具合も休日にしては、空いてる方だし、
とりあえず俺達も滑らないか?」
「うん、そうしよう」「そうね」
そして約三十分ほど、このパークで滑った。
トッドは仮にも現役メジャーリーガーなので、
スノボもスケボーも得意としていたが、
Jrはトッドの想像以上に上手く滑っていた。
パークの溝は結構深いので、
ドロップとインには度胸が必要だったが、
Jrは難なく滑っていた。
流石はボクシングの元世界王者の息子。
親の運動神経を見事に受け継いでたようだ。
尚、カレンに関しては及第点といった感じだ。
特別下手でもなく、特別上手でもない。
でも本人は楽しそうに滑っていた。
その時、周囲のスケーターや見物客がどっと沸いた。
そちらに視線を向けると、
Jrが「あっ」と叫んだ。
すると前方に黒いゴーグル付きのスケートボードヘルメットを
かぶった身長170前後の白人男性が右腕の脇に黄緑のボードを抱えていた。
服装は上がねずみ色のパーカー。
下は使い込んだ青のジーンズに白のスニーカーというスタイル。
そしてJrがそのスケーターらしき男性を指さして叫んだ。
「彼だよ、彼が配信者のスケーター・イーサンだよっ!」




