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Silver Slugger  作者: 如月文人
Curtain Call
7/11

第二話 旧友との再会



---三人称視点---


 セラと夜を過ごした三日後の夜。

 MLBの天才投手トッド・ステアーズは、とあるジャズバーに来ていた。


挿絵(By みてみん)


 有名なミュージシャンやアーティストもお忍びで訪れていると噂があるジャズ・クラブ。

 ジャズ・シンガーを目指していたが、

 声帯の酷使により思うように歌えなくなり、

 志半ばで夢を諦めたマスターがつくった個人経営店だ。


 ステージ上で一際輝く真っ白なグランドピアノと、

 目映く輝くガラスビーズが散りばめられた重厚感のある大黒幕が特徴。

 ピアノの客席から見えない部分は、

 このステージに立った人たちのサインで埋め尽くされており、

 ここにサインすると5年以内に"売れる"というジンクスがあるらしい。


 提供される料理は、某有名店から、

 引き抜いてきた凄腕のシェフが作っているらしく、美食家にも好評。

 オープン直後限定で、

 運が良いと聴けるマスターのピアノ演奏が一部の音楽愛好家の間で話題になっているそうだ。


 だが今日はオープン直後だが、

 生憎とマスターの生ピアノ演奏は聴けなかった。


 そんな中、ピアノの客席でトッドは旧友と再会していた。


挿絵(By みてみん)


 茶髪の坊主頭、瞳の色はブルー。

 身長は170前後だが、

 全身から発せられるオーラが常人のそれとは違う男だった。


 その男――レジー・タピアは気さくな口調で旧友と言葉を交わす。


「よう、トッド! サイ・ヤング賞受賞おめでとう。

 でもポスト・シーズンに出れないのは残念だったな」


「レジー、ありがとう。

 まあ来年の今頃はワールドチャンピオンになってるさ」


 そう軽口を交わす二人。

 こうして直に会うのは約一年ぶりくらいであった。


 この男の本名は、レジー・タピア。

 元プロボクサーで元世界チャンピオンという経歴を持つ。


 幼少期には常識では考えられない過酷、否、悲惨な事件に

 何度も出くわして、その度、心が何度も砕けたが、

 ボクシングという競技が彼をギリギリ人間に留まらせた。


 トッドとレジーの出会いは今から三年半ほど前。

 ちょっとしたパーティで二人は出会い、

 何故かよく分からないが、気が付けばお互いに打ち解けていた。


「そうそう、トッド。

 今日はお前さんに紹介したいコが居るんだよ」


「へえ、誰だい?」


「俺の息子の面倒をよく見えてくれるお嬢さんさ。

 さあ、カレン。 この男がトッド・ステアーズだ。

 とりあえず簡単な自己紹介でもしてくれや」


「……こんばんは。 カレン・ミヨシです」


挿絵(By みてみん)

 

 年齢は十七歳。

 日系人で瞳は黒。

 服装は地味で茶色のおかっぱ頭で赤渕めがねをかけている。

 表情は少し暗いが、容姿的には恵まれている方だ。


「よろしく、カレン。

 君もよくメジャーリーグを観るのかい?」


「いえ、ベースボールは殆ど観ません。

 ルールもよく分からないし……」


「そっか、それ以外の趣味は?」


「アニメと漫画です」


「おお、オレもコミックは大好きだぜ。

 日本の漫画も結構読んでるぜ」


「そうなんですか、意外ですね」


「いずれにせよ、宜しく頼むぜ」


「ええ、宜しくお願いします」


 トッドはマイペースだが、

 カレンの方はまだ緊張しているようだ。


「ほう、こりゃ驚いた」


「レジー、何に驚いてるんだい?」


「カレンが初対面の人間にこんなに話すなんて珍しいぞ」


「そうなのか?」


「そうなのさ」


「そりゃ喜んでいいのかな」


「ところでトッド、オフシーズンは結構暇なのか?」


「ん? まあテレビ出演が何件か、あるが暇と言えば暇だな」


「なら来週の土曜日にカレンと俺の息子を連れて、

 ニューヨークのハドソン川沿いにあるスケボーパークに

 連れて行ってもらえないか?

 二人とも最近スケボーに嵌まっていてな。

 本来ならば俺が連れて行くべきなんだが、

 来週の週末が俺の受け持ちの選手の試合があるんだ」


 レジーはボクシング中継の解説などを務めながら、

 ボクシングのトレーナーもしていた。

 

 正直あまり親しくない人間、それも少年少女と

 週末を過ごすのは、やや気が引ける部分もあったが、

 トッドもそのスケボーパークには興味があったので、

 ここは親友の頼みを素直に聞く事にした。


「嗚呼、いいよ。 俺もスケボーは好きだしな。

 たまには少年少女と触れ合うのも悪くな。

 オレは少年少女の憧れの的のスーパースターだからな」


「こんな事をトッド・ステアーズに頼むのは、

 少々気が引けるが、引き受けてくれて助かるよ。

 ところでトッドはスケボーは得意なのか?」


「おう、スケボーもスノボも得意だぜ!」


 笑顔でサムズアップするトッド。

 彼は基本的にスポーツが大好きで、

 色んな競技を嗜んでいる根っからのスポーツマンだ。


「じゃあ当日、旅行費や子供達の食事代などを渡すよ」


「そうだな、それぐらいの費用ならオレが負担してもいいが、

 それだとレジーの気が済みそうにないからね。

 当日に受け取る事にするよ」


「……色々とすまねえな」


「気にするなよ、オレ達は親友じゃねえか」


「……そうだな」


 その時、ジャズバーの壁に固定されに液晶テレビから、

 三十前後の女性アナウンサーの声が聞こえてきた。


「それでは本日のスポーツ・ニュースをお伝えします。

 ロサンゼルス・ドアーズの二刀流選手、

 大月翔太が今日またまたやってくれました」


「おう、お前さんのライバルじゃねえか?」


「その台詞、数日前にも聞いた気がする」


「ふうん、相手は女かい?」


「それはひ・み・つ」


「……女だな」


「さあね」


 トッドはそう言って、両肩を竦めた。

 すると数秒後に液晶テレビから大歓声が聞こえてきた。


「そして大月翔太がこの試合でもまたまたやってくれました。

 迎えた6回の裏に豪快なホームランを打ちました」


 大月がフルスイングして、

 ホームランを豪快に打つ映像がテレビに映った。


「いやあこの男も根っからのスーパースターだね」


「そりゃそうよ、オレの唯一のライバルだからな」


「でも私はトッドさんの方が好きですよ」


 と、カレンが久しぶりに口を開いた。


「そりゃどうも、来年は必ずあの男に勝って、

 ワールドチャンピオンになってみせるよ」


「まるでコミックのような台詞」


 カレンがぼそっとそう言う。

 これも三日前にセラから言われた台詞だ。


「まあでも今日はプライベートな時間。

 今だけはベースボールを忘れて、

 親友とその友人と飲み明かすよ。

 カレン、君も何か飲めよ?」


「じゃあオレンジジュースで」


「いやここはアルコールだろ?」


「いえ、私、未成年なので……」


「オー、それは失礼した」


 そして三人の許に頼んだ酒やジュースが届き、

 三人はグラスを合わせて「乾杯」と叫んだ。


 表面上は明るいトッドだが、

 心の何処かでは大月の活躍に悔しい気持ちを抱いたが、

 彼は良くも悪くも超マイペースな性格なので、

 今夜はレジーとカレンとの時間を心から楽しんだ。



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― 新着の感想 ―
あ~なるほど。こうしてカレンが登場しましたか。 なんかカレンとレジーが並んでいるとなると拙作アメリカ24を思い出す(笑) いや、あんな展開にはならないと思うけど(笑) でも、点と点が結びついて1…
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