第四話 シルバーVSゴールド
---誠也視点---
気が付けば、9月を過ぎていた。
俺が所属するシカゴ・パプスの本拠地のシカゴは、
9月のシカゴは、日中は比較的温暖だが、
朝晩は肌寒く感じる日もあり、
日中と朝晩の気温差が大きいのが特徴だ。
まあでも最近の日本に比べたら、過ごしやすいかもな。
最近の日本の夏はマジで暑いからな。
このシカゴでは日中は半袖シャツで過ごしてるが、
朝晩は冷え込むので、上着は欠かせない状態だ。
まあでも基本はスタジアムで野球する。
というのが俺の、というかメジャーリーガーのライフスタイルなので、
日本に比べたら、過ごしやすい環境と云えるだろう。
尚、今日9月26日では我がカブスは、
ナリーグの中地区の首位に立っているが、
2位のバリュアーズとはゲーム差2だ。
それ故に毎日負けられない状況が続くが、
今日勝てば優勝がぐっと近づく。
尚、この時点の俺――鈴本誠也の成績は、
打率二割四分ニ厘。
本塁打27本、そして打点に関しては92だ。
シーズン序盤は好調だったが、
ここ最近は不調、だがトータルではそれなりの成績を残せたのは、
自信になるし、今年の契約更改が楽しみでもある。
尚、あの男――スーパースター大月翔太は、
打率二割八分二厘、本塁打53本、99打点。
また投手としては、防御率2.87の一勝一敗だ。
今年も大月は絶好調であった。
おまけに投手としても復活するし、
一野球好きとしては、素直に凄いと思う。
だが一人のメジャーリーガーとしては、
本音を云えば、目の上のたんこぶ。
とまでは云わないが、俺の活躍が霞んでいる。
という現実をまざまざと見せつけられる日々である。
とはいえ俺かって結構な成績だ。
だから卑屈になる事はなく、
胸を張ってこのシーズン後半戦。
その後にあるポスト・シーズンを戦っていくつもりだ。
そして今日の2025年9月26日の試合は、
SFティターンズを我がパブスの
本拠地ラグレー・フィールドで行われる。
ラグレー・フィールドのフィールドは、
ライトとレフトのライン付近に観客席がなく、
奥へくぼんだように深くなっている。
そして最大の特徴が、
外野フェンスにツタが生い茂っていること。
時期によって茂り方や葉の色を変え、
地元ラジオの実況アナウンサーも
「メジャーで最も美しい球場」だと口を揃えている。
俺自身もこのラグレー・フィールドに深い思い入れがある。
だから今日勝って何としても地元優勝を果たしたいが、
今日の対戦相手の先発投手は、あのトッド・ステアーズ。
一ヶ月前の対戦では、完敗を喰らい、
ステアーズも順調に勝ち星を積み上げて、
今では防御率1.94、22勝5敗という好成績だ。
こりゃ今年はマジでサイ・ヤング賞を受賞するかもな。
でもよ、今日は打たせてもらうぜ。
というか絶対に打ってみせる。
この日を想定して、俺も個人練習では、
マシン打撃で100マイル(約160キロ)以上の球を打ち込んできた。
今日は必ず勝つ。
ただ勝つだけじゃない。
ステアーズのファスト・ボールを打って勝つ。
それが俺のこの試合の目標だ。
俺はそう胸に深く刻み込んで、今日の試合に挑んだ。
---ステアーズ視点---
今日のオレは絶好調だった。
100マイル(約160キロ)を超すファストボールは、
インハイぎりぎり、またアウトコース低めに
バシバシと決まり、シカゴ・パブスの打者を抑えた。
だがファスト・ボールだけじゃメジャーリーガーは打ち取れない。
だから時折、三種類のカーブ。
また高速スライダーとカット・ボール。
フォークとSFFも織り交ぜて、
インコースとアウトコースを交互に攻めた。
四回過ぎた時点で、奪三振は9に達していた。
打たれたヒットは0本。
これは幸先が良いな。
オレはそう思いながら、
ワインドアップで右腕を思いっきり振り抜いた。
だが次の瞬間、異変が起きた。
恐らく100マイルを超えたであろうオレのファスト・ボールが
ジャスト・ミートされて、センター前ヒットとなった。
打ったのは、日本人のセイヤ・スズモトだ。
あの大月ほどではないが、
この日本人の右打者もかなり良いセンスを持ってるが、
まさかオレのファスト・ボールを打ち返すとはな。
……。
まあそうそうノーヒットに抑えられるわけじゃない。
オレは気持ちを切り替えて、
再び打者に向けて、ボールを投げ続けた。
そのまま試合は七回の裏まで進んだ。
試合のスコアは2-0となっていた。
六回の表に味方がツーラン・ホームランを放って、
オレに二点をプレゼントしてくれたのだ。
オレには二点あれば充分だ。
今日も球数を抑えて、七回の裏で88球。
このペースだと完封も充分狙えるだろう。
我がSFティターンズは、
首位ドアーズと10ゲーム差以上があり、
地区優勝の可能性はない。
だが勝率争い――ワイルドカード争いでは上位に居る。
今日勝てばワイルドカード争いで2位になり、
ポスト・シーズンに出場する事が可能だ。
シーズンの成績に加えて、
ポスト・シーズンで活躍すれば、
今年で契約が切れるオレとしては、
色んな選択肢が広まる。
だがそれはシーズン・オフの話だ。
今は目の前のゲームに集中するぜ。
そして七回の裏も一、二番を連続して三振を取って、
ツーアウト、ランナー無しの状態で三番打者を迎えた。
この日本人の三番打者。
セイヤ・スズモトとは今日、三度目の対決だ。
一打席はセンターフライ。
二打席はセンター前のヒット。
尚、現時点での被安打は、このスズモトに打たれた一本のみ。
ここは何としても抑えるぜ。
このスズモトは本当に良い打者と思う。
何せこのオレのファスト・ボールを打つからな。
でもランク的には、スズモトはシルバー。
そしてオレや大月がゴールドと思うぜ。
と言っても油断はしないがな。
ゴールド級のプライドを持って、
この最高級のシルバースラッガーを打ち取って見せる。
それがこのオレに託された役割。
そう思いながら、捕手のサインを見た。
捕手レイモンのサインは、
アウトコース低めにファスト・ボール。
そう、ここはあえてファスト・ボールで抑える。
それがティターンズのエースであるオレの仕事だ。
そしてオレは大きく振りかぶった。
この勝負は――ファスト・ボールで決めるっ!
次回の更新は2025年9月27日(土)の予定です。
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