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Silver Slugger  作者: 如月文人
Curtain Call
10/11

第五話 唐突千万



---三人称視点---



 2025年10月下旬。

 MLBのスーパースターのトッド・ステアーズは、

 人気女性アーティストのセラ・ローレンと一緒に

 行きつけの店JAZZ CLUB IDiOMに足を運んでいた。


挿絵(By みてみん)


 トッドはこの店の常連であるが、

 セラを連れて来たのは、今回が初めてである。

 尚、二人のデートはこれで三度目であった。


挿絵(By みてみん)


「へえ、言ってた通り、ハイセンスのお店じゃない」


挿絵(By みてみん)


「そうかい? セラが気に入ってくれたならば、

 オレとしても鼻が高いよ」


「ええ、こういうお洒落なお店は大好きよ。

 とりあえず適当な席に座って、何か注文しましょう」


「……そうだな」


 トッドとセラは近くの席に座って、

 二人そろってペリエを注文した。

 まだ時間的に十九時を少し過ぎたくらいだったので、

 今の段階でアルコールを注文するのは控えておいた。


「この店は開店直後には、マスターのピアノ演奏が

 時々聴けるんだが、どうやら今夜はなさそうだな」


「そう、それは残念ね」


 二人はまずは軽く言葉のキャッチボールをして、

 お互いの距離感を良い感じに調整していく。


 その時、ジャズバーの壁に固定されに液晶テレビから、

 三十前後の男性アナウンサーの声が聞こえてきた。


「それでは本日のスポーツ・ニュースをお伝えします。

 MLBのワールド・シリーズ第7戦の速報をお伝えします」


 この声を聞いて、セラがトッドを軽く一瞥して――


「嗚呼、そう言えば今日もベース・ボールの試合あったのね。

 アナタのライバルは、この試合に出場してるの?」


「出てるさ」


「そう、来年はアナタが出るべきね」


「嗚呼、オレもそう思ってるよ。

 ところでセラ、気のせいか、少し元気がないように見えるが……」


 トッドがそう言うと、セラは軽く目を瞬かせた。

 そして軽く両肩をすくめて、

 彼女にしては珍しく愚痴を吐いた。


「勘が鋭いわね、実は結構前から脅迫やストーカー被害に

 あってたんだけど、ここ数日、誰か後をつけられてたりするのよ」


 セラは名実ともに全米を代表するシンガーソングライター。

 おまけにルックスも抜群だ。


 だから彼女にストーカーがまとわりつくのは、

 自然現象にも思えるが、当人にとっては大問題。

 だからトッドもこの場は彼女に相槌を打ち、

 彼女の溜まったストレスを上手く発散させた。


「……どんな奴か、分かるかい?」


「顔はサングラスとマスクで隠しているから、

 分からないけど、身長は175センチから180センチってとこね」


「直接的な被害にはあってるのか?」


「いえ、今のところは一応大丈夫よ。

 でも正直、不安で夜も眠れない時が多いのよ」


「そりゃ災難だな、相手さえ分かればオレがとっちめてやるのに……」


「あっ、あそこのお客さんに背格好が似てるわね」


 セラが少し離れた席の白人男性を指さした。

 その男は黒いスウェットの上下を着て、黒いスニーカーを履き、

 顔にサングラスとマスクをつけていた。


「へえ~」


 トッドは黒いスウェットの男に視線を向ける。

 するとその男は椅子から立ち上がって、右手を懐に入れた。

 男が懐から手を出すと、黒い拳銃がその右手に握られていた。


「!?」


 そして男は右手に握った黒い拳銃を頭上に掲げて、引き金を引いた。

 「パアン」という音と共に、

 拳銃の銃口から銃弾が飛び出して、頭上の照明に命中。

 当然の如く、照明は銃弾で無残に破砕された。


「銃弾!? うわあああ、あの男だ! アイツ、拳銃持ってやがる!」


「キャアアァッ!!」


「ヤベえ、兎に角、逃げるんだぁ!」


 店の中は蜘蛛の巣を散らしたかのように、

 一瞬にしてパニック状態になった。


 だが黒いスウェットの男は、右手に黒い拳銃を握りながら、

 ゆっくりとした歩調でトッドとセラに迫った。


「オーマイガー! 冗談じゃねえぞ」


 トッドは思わずそう口走った。


「……トッド、巻き込んでゴメンナサイ」


「君が謝る必要はないさ。

 でも向こうはこちらに御執心のようだね」


五月蠅うるさいぞ、二枚目気取りの糞野郎っ!」


 どうやらトッドの声が男にも聞こえたようだ。

 男は苛ついた感じで、早口で暴言を吐き続けた。


「……ったく散々オレが目にかけてやったによお~。

 自分は他の女とは違います。

 ……みたいな振る舞いしてて、これだもんな。

 これだから女は嫌いなんだよ」


「セラ、君は本当にこの男と無関係なんだよな?」


「ええ、まるで知らない人よ……」


「お前が知らなくても、俺は知ってる。

 この二年間の間に、俺は散々お前に貢いだ」


「あのさあ~、アンタのやってる事は只の逆恨み――」


「五月蠅せえっ! オレを見下してんじゃねえぇっ!!!」


 トッドの言葉で、男の怒りの導火線に火がついたようだ。

 男は何のためらいもなく、右手で黒い拳銃の引き金を引いた。

 すると拳銃から銃弾が解き放たれて、店の壁に命中した。


「……マジかよ」


 取り付く島もない、とはまさにこの事だ。

 相手は、この眼前の男は完全に正気を失っている。


 こんな奴にオレの好きな店が荒らされて、

 セラとの大切なデートを邪魔された。


 その事実にトッドは、心底腹を立てたが、

 今は冗談抜きで危機的状況である。


 トッドもセラも未来あるスーパースター。

 それがこんなつまらないことで人生が終わる。

 ……なんて結末を受け入れる気には到底なれない。


 ――ジーザス、まさしく絶体絶命のピンチだぜ。

 ――でもこんなところで死ぬ気はねえ!


 ――兎に角、冷静に考えろ!

 ――そしてオレとセラ、店の皆も全力で護るんだ。


 ――この最高の店をこんな最低な奴に汚されたくねえよっ!



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