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結婚生活は真っ白で  作者: 美雪


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16/24

16 思い出の品



「どうした?」


 廊下で友人たちを待っているエヴァのところにドノヴァンが来た。


「一人でずっと廊下に立っていると聞いた」

「友人たちを待っているのです」


 ドノヴァンは店を見た。


「ここは人気店だ。廊下で待っていると足が痛くなるかもしれない」

「いいのです」

「一緒に入れば良かったのではないか? 今日は大学祭だ。普段しないことに挑戦するのも悪くない。社会勉強の一環だろう?」

「実はそう思って中に入ったのです。でも、一対一なのです。グループではダメだって言われて、友人とは別の席になってしまいました」

「そうか。先に出て来たのか?」

「そうです。このお店はホストと呼ばれる接客担当者がサービスをしてくれるのです。でも、注文しないとダメなので、注文するように誘導しようとするのです」

「わかる。ここは男性がサービスをしてくれるが、女性がサービスをしてくれる店もある。男性客に優しくしたり甘えたりして注文させようとする。一種の駆け引き、ゲームのようなものだ」

「行ったこと、あるのですか?」

「ある。大学祭の店だ。友人たちと一緒に入ったが、別の席になった」

「同じような感じのお店ですね」

「居心地が悪くなって、先に出た」

「廊下で待っていたのですか?」

「まさか。一人で別の場所を見に行ったら、あとから友人たちも来た。大学祭は一人でもグループでも自由に過ごせばいい」

「そうですね」

「少し待っていろ。友人たちのことを聞いてみる」


 ドノヴァンは店の中に入っていった。


 しばらくすると出て来る。


「まだまだかかりそうでしたか?」

「わからない。エヴァの友人たちに、他を見て来ると伝えるよう頼んだ。チップを渡せば引き受けてくれる」

「なるほど。注文をしなくても、チップを渡せば伝言を頼めるのですね」

「ここに立っていても仕方がない。別のところに行こう。疲れていないか? 座れる場所を探すか?」

「そうですね。少し足が疲れました。でも、こういうお店には入りたくありません」

「わかっている。普通の飲食店に行こう」


 ドノヴァンはエヴァを連れて普通の飲食店に向かった。


 だが、どこも大盛況。空席がなかった。


「すまない」

「ドノヴァン様のせいではないです。このまま歩いていても疲れます。テイクアウトの飲み物を買って、適当にどこかに座りませんか?」

「適当にというのは……地面か?」

「階段のところとか」

「なるほど。地面よりはましだな」


 二人はテイクアウトの飲み物を買い、花壇のふちに座ることにした。


「ようやく座れました!」

「そうだな。これほど座れなかったのは初めてかもしれない」

「いつもは混雑していないのですか?」

「そうではないが、友人たちが場所を確保する。その情報を聞いて移動するため、席に困ったことはない。少し待たされる程度だ」

「なるほど。友人がいる時とそうでない時の差ですね」

「普段から友人たちに支えてもらっている。私だけではエヴァの席を確保できないことがよくわかった」

「飲み物を奢ってくれました」

「座れそうな花壇を見つけたのはエヴァだ」

「二人の力を合わせた結果です。財力と視力と」

「財力と視力か」


 ドノヴァンは笑った。


「確かに目の付け所がいい。階段と言っていただろう? 階段を探そうとした」

「私もそのつもりでした。でも、花壇のふちでもいいと思って」

「そうだな。座れるのであればどこでもいい」

「ドノヴァン様はどんなところを見に行ったのですか?」

「ホールの出し物を見ていた。有料席を買えばいい。いろいろ見ることができる」

「なるほど。座って見ることができるなら楽ですよね」

「友人たちが気になると言った場所も見に行った」

「一番良かったのは?」


 ドノヴァンは考え込んだ。


「特別これといったものはなかった」

「一番悪かったのは?」

「メイドカフェだ。召使いは屋敷にいるだけに見慣れている。茶を出してくれるのだが、デルウィンザーの屋敷では侍従か侍女が出す。そして、ご主人様とは言わない。デルウィンザーでは名前に敬称をつけるか閣下だ。違和感しかなかった」

「ドノヴァン様らしい感想で面白いです」


 エヴァは笑みを浮かべた。


「エヴァはどうだった?」

「あまり見てないのです。ずっと廊下に立っていたので」

「一番悪かったのはホストカフェか?」

「勉強になりました。お金を気にしないといけない人は楽しめない店です。会話が上手なホストでした。社交術に長けていそうです」

「そのような者が適役だろう。実際、社交術の勉強として出店許可を取っているはずだ」

「売り上げのナンバーワンを競っているそうです。上位だと賞品がもらえるとか」

「協力してほしいと言われたか?」

「そうです」

「ホステスカフェも同じだ。人気ナンバーワンになりたい。何かを注文するという形で応援してほしいと言われた」

「仕組みは一緒ですね」

「大学祭だからな。本当に売り上げを競うわけではない。いつもとは違う経験や体験に意味がある。ホストやホステスが欲しいのも賞品とは限らない。ナンバーワンになったという名誉が欲しいのかもしれない」

「なるほど」

「小物を売っている店もあった。一緒に見に行かないか? 土産になる」

「今日の思い出になりますね」

「一年毎に一つ買うのもいい。大学時代の思い出になる」

「素敵です」

「何か買ったか?」

「プログラムを買いました。それではダメでしょうか?」

「別のものがいい。私が買う。エヴァは心配しなくていい」

「まだまだお小遣いがあります。なので、ドノヴァン様こそ大丈夫です」

「エヴァの小遣いも私の小遣いも父上の金だ。結局、どちらが払っても一緒だ」

「それもそうですね」


 二人は思い出になりそうな品を探しに行った。


 エヴァが選んだのは、美術部が販売する似顔絵だった。


 ドノヴァンをモデルにして、簡単な似顔絵を描いてもらった。


 すばやく、それでいて特徴をとらえつつ、素敵に描いてもらえたといってエヴァは喜んだ。


 ドノヴァンはエヴァの似顔絵を依頼しようとしたが、エヴァは恥ずかしがって断った。


 そこで土産になりそうなものを探し、手作りの腕輪を購入した。


 右用と左用がセットになったもので、一人で両方つけてもいいが、二人で一つずつ分け合ってもいい。


 カップルに人気だと店員に売り込みをかけられ、ドノヴァンが購入した。


「私とエヴァで一つずつだ。一緒に大学祭を見て回った思い出になる」

「そうですね」


 エヴァは腕輪を気に入った。


「嬉しいです。素敵な思い出の品です」

「喜んでくれて良かった」


 二人は手をつなぐ。


 その手には買ったばかりの腕輪がつけられていた。


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