13 バラの花
「エヴァに」
ドノヴァンが箱を持ってエヴァの部屋に来た。
「小さいですね?
「開けて見ろ」
エヴァは箱をあけた。
中に入っていたのは、水色のバラの花。
「最高級のシルクで作られているハンカチだ。美しく見えるようにバラのようにして入れてある。よければ使うといい」
「ありがとうございます! とても嬉しいです!」
エヴァは最高の贈り物だと思った。
「ハンカチがバラの花になっているなんて素敵です! このまま飾っておきたいです!」
エヴァは本心から感動していた。
「では、もう一つ買おう。一つは飾るようにしてもう一つは使えばいい。同じ色でいいか? 白、ピンク、赤があった。探せば他の色もあるかもしれない」
「こちらだけで大丈夫です。一つしかないからこそ、大切にしたい気持ちが強まります」
エヴァらしいとドノヴァンは思った。
「見ているだけで癒されます。でも、いつかとっておきの時に使います」
「花の形が崩れてしまってもいいのか?」
「使い終わったら、また洗ってここにバラの花の形にしてしまえば元通りです」
「そうか。そうだな」
「ありがとうございます。いつかこのお礼をしますね!」
「必要ない。今回はいろいろとあった。私の不手際に対する謝罪でもある。喜んでくれて嬉しい。正直、あまり喜ばないかもしれないと思った」
「いいえ。とても嬉しかったです。ドノヴァン様の優しさを感じました」
「良かった」
ドノヴァンは部屋を出て行った。
代わりに入って来た侍女が、贈り物に視線を向けた。
「エヴァ様、箱からお出しして使えるようにいたしましょうか?」
「このハンカチはこのままで。ベッドサイドに飾っておきます。とても気に入ったので、とっておきの時まで使わずにとっておきます!」
「かしこまりました」
「ちなみに、このバラってどうやって作るのか知っていますか?」
「ハンカチを折って丸めるだけですが?」
「ぜひ、教えてください!」
エヴァは侍女からハンカチで作るバラの方法を教えてもらった。
「これでいつ使っても元通りにできますね。良かった!」
エヴァは金で買われた花嫁。
そのことはデルウィンザー公爵家で働く全員が知っている。
だが、どのような理由であれ、デルウィンザー公爵家に迎え入れられて家族の一員になった。
エヴァとドノヴァンの関係は夫婦というには物足りないが、結婚当初より確実に距離が縮まり良くなっている。
結構いい感じなのでは……?
侍女は心の中でそう思った。




