第4話
「1年間みんなの担任をすることになった田中だ。よろしく頼む。」
始業式が終わり、教室に戻ってきて早々担任が自己紹介をし始めた。
(校長の話長かったから、こっちはさっさと終わってくれ...)
口調と服装を見るに明らかに体育会系の人間だろう。情熱の2文字がよく似合いそうな人だと咲斗は感じた。
「先生はなあ、みんなと一日でも早く仲良くなりたいんだ。だから得意の一発ギャグを披露する!」
皆の視線が集まる中、田中先生は
「チャンチャカチャンチャンチャチャンチャチャンチャン!」
(もっとあっただろ...)
そこから先は見るに堪えなかった。
ヘッタクソな裏声、緊張でカッミカミ、ガッチガチの謎の舞、挙げ句の果ての大スベリ。
唯一良かったのは本家通りカンペありだったことくらい。
生徒たちはみんな苦笑いをしていた。
(しゃあない、助けるか...)
「せんせー、めっちゃおもしろいっすね。」
咲斗は大きな声でそう言い、声を上げて笑った。するとクラスメイトも先生のことをイジろうと、
「先生カンペ見すぎ。」
「声出てなかったよー。」
咲斗のおかげで凍てついた空気は和やかになった。
「よし、先生の自己紹介も終わったことだし今度はみんな1人ずつ自己紹介して行こうか。」
(出たー、めんどいイベント...)
「そうと決まれば出席番号1番の愛川と40番の八百、ジャンケンして勝ったほうから順に自己紹介して行ってくれ。」
(だから最後の番号は嫌なんだ...)
『じゃーんけーん』
「じゃあ、八百から前に来て始めてくれー」
(最悪だ...)
そんなことを考えながら咲斗は教卓の前に立った。
「えー、40番八百咲斗、6月13日生まれ、今年度は田中先生をできるだけイジろうと思います。基本どんなジャンルの話もできます。是非話しかけて下さい。皆さんよろしく。」
(まあ無難だろう...)
「やおー、先生もイジられやすくなるため頑張るからな。」
「いえ、大丈夫です。」
「冷たっ!」
教室に笑いが起こる。
それを気にせず、咲斗は席に戻った。
咲斗はボーッとクラスメイトの自己紹介を聞いていた。
(あー、あの人去年も同じクラスだったな...)
その時1人の女子生徒が教卓の前に立った。
「5番の一ノ瀬茜です。7月26日生まれです。よろしくお願いします。」
その女子生徒を見て、咲斗は一気に現実に引き戻された。