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ショートショート(短編集)

鬱砂漠

作者: 清水進ノ介

鬱砂漠


 旅人が一人、砂漠を彷徨っていた。本当なら、今頃街に着いているはずだったのだが、突然大きな砂嵐に襲われ、方角を見失い、自分がどこにいるのか、どこを目指せばいいのか、分からなくなってしまった。ギラギラと輝く太陽の熱は、容赦なく旅人の体力を奪い、彼は渇きと飢えに苦しみ、行く当てもなく歩き続けていた。


 旅人が朦朧とした意識で歩いていると、目の前に井戸が現れた。周囲に集落や、人が暮らしている痕跡は無い。砂漠の真ん中に、ぽつんとその井戸だけがあった。旅人は水を求めて、井戸の底を覗き込む。すると真っ暗な井戸の底から、何者かの声が聞こえてきた。


「助けてくれ、ここから出られないんだ。縄を投げてくれ、ここから出してくれ」


 旅人は人助けなどしている余裕は無いと、その声を無視して、再び砂漠を歩き始めた。体中の水分が失われ、汗すらかかなくなり、旅人はついに意識を失い、そのまま倒れてしまった。そして目覚めたとき、旅人は真っ暗な井戸の底にいた。見上げると、真上に太陽が照り付けている。そのまま呆然としていると、誰かが井戸を覗き込むのが見えた。逆光でそれが誰なのかは分からないが、旅人は必死に声を出し、助けを求めた。


「助けてくれ、ここから出られないんだ。縄を投げてくれ、ここから出してくれ」


 しかし井戸を覗き込んでいた誰かは、旅人を無視して、どこかへ行ってしまった。旅人は絶望し、井戸の底で体を丸め、彼はいつしか眠りに落ちていた。目覚めたとき、旅人は砂漠のどこかに放り出されていた。足元には一枚の紙が落ちていて、そこには「ヤシの木を目指して歩け。一日も歩けば街に着く」と書かれている。顔を上げ見回してみると、遠くにヤシの木が一本見える。旅人はそれを目指し、砂漠を歩き始めた。


おわり

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