13 誘拐事件はシャレにならない
「――グリードが攫われた」
絞り出すように言ったマモンの顔には、不安や苛立ち、様々な黒い、暗い感情が混ざり合っていた。
てか、それより、グリードが誘拐された!?
ちょ、状況が飲み込めない……ヘルプ……通訳の人ヘルプ……
「何がどうして攫われたの? 状況が飲み込めないから説明……」
「……仕事が終わって寝ようと思ったら……窓ガラスが割られて、黒い衣服を着た男が……っ……それで……」
「誘拐されたと……なかなかの大事件じゃん!? 魔王様に報告は?」
「した……」
「それで?」
「魔王様が調べてくるから少し待ってろって……」
「それなら大丈夫。それに魔王様なら、すぐ調べて帰ってくるから、取り戻せると思うよ」
「……それ、なら……よかっ、た…………」
それだけ言うと、マモンは床に倒れこむ。
安心して気が抜けたのだろう。
けど、また倒れたってことは、医務室に連れて行った方がいいかな?
いや、昏睡はしてなさそうだし、私の部屋に確か、徹夜……泊まり込み作業用の折り畳み式ベットがあったはずだからそれに寝かせておこう。
「……にしても誘拐ね……絡むとすればどこだろ? やっぱり、「遊び人」とか?……いまいちつかめないなぁ……」
さて、もやもやはするけど私も書類仕事に戻りますかね。
あ、その前にドア立て直しておこ。
ダガァン!
「ふむ、書類がたまっているではないか、ベルフェゴールよ!」
「……何の用ですか魔王様……あと、ドアを突き破らないでください……これでもう三回目なんですけど……」
「まぁ、形あるものはいつか壊れる! それが物の摂理ってものだろう?」
「それはそうでも、三連続でドア破られるのはめったにないことだと思うんですが……はぁ……」
創造の力を発動し、強度を上げた扉を生み出し、立て直す。
この作業二度とやりたくないな……
もう、いっそのことドアなくしちゃおっかな……
「で、改めて聞きますが、何の用ですか?」
「グリードが誘拐されたのは知っておろう? それの情報を集めてきた」
「速すぎませんか……? それで、その詳細を話しに来たと……マモン起こした方がいいですか?」
「あぁ、まぁ、起こしてくれた方が助かるが……起こせるのか?」
「はい、できないこともないです」
まず、創造の力で、現実世界のイヤフォンと音楽プレーヤーを用意します。
次に、音楽プレーヤーとイヤフォンを接続して、マモンの耳に付けます。
その次に、大音量で音楽を流します。
すると――
「べがっ!?」
流れ込んできた、爆音のクラシックに、驚き、マモンは跳ね起きたようだ。
これは私が編み出した寝てる人にやる最大限の嫌がらせなのだが、今回は、本当に申し訳なく思いながらやったので、嫌がらせじゃないよ!
「あ、魔王様……何か……わかったんですか……?」
「うむ! しっかりと、調べてきてやったぞ!」
「あのー……その話……私聞く意味あります……?」
「この部屋にいたのが運の尽きじゃな。ベルフェゴールには協力してもらう」
「ですよねー……知ってましたし、書類仕事から一時的に開放されるんでいいですけど……」
「では早速情報を話そう」
かなり長い報告だったので、要約するとこうだ。
どうやらグリードは「遊び人」のとある幹部に目を付けられその幹部の部下が誘拐してった。
という事だった。
まさか「遊び人」がねー……あれ? でもグリードって幹部じゃ?
「……その時、グリードはサングラスも外して、部屋着でいたので……それで気づかれてなかったんだと思います……」
「あー……それはまぁ……気づけなくてもしゃーないか」
「……それでだな。我は一つ聞きたいことがある。マモン、お前はグリードを取り返したいか?」
一瞬で少し和らいでいた空気がピリッとし、緊張感が走る。
本当に何でここに居るんだろう……
「――もちろんです。……グリードは僕の……大切な存在なので」
「そうか。なら我らは全力で支援しよう!」
静寂の後に緊張感がなくなり、明るい笑みを見せる魔王。
その笑みのまま私の方にくるりと体を向ける。
あれ、イヤナヨカンガスルナー……
「では、ベルフェゴールよ! 確か、幹部にまで上り詰めていたそうだな。それの地位を使って情報収集に行ってこい! あぁ、さすがにマモンも連れて行ってよいぞ! 一人だと可哀想じゃからな!」
「ですよねー……はいはい、行ってきますよ……ほら、マモンも」
「あ、はい……」
そんなわけで再び魔王様にこき使われて、私たちは「遊び人」の本拠地に出向くことになったのであった――
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Q.何故マモンは情報収集しなかったの?
A.自分の能力を忘れるくらい焦っていたのと、顔が分からないとで調べることが出来なかったせいです。