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? - 二面性の歴史

視点とは、とても厄介な物である。

前提とは、とても難儀な物である。

真実とは、視点や前提を踏まえても理解できないものである。

 「今から数百年前、世界は崩壊した」

 このありふれた出だしから始まる物語はこの世界で様々な創作物の中にみられる今や王道をゆく設定である。しかし、これは一時的なブームという訳ではない。この酷く普遍的な出だしから始まる本来の物語はこの世界の歴史であり、成熟した人類という種が世界から更なる試練を与えられる様子を表したものだ。

 この物語において鍵となるのは大厄災と呼ばれる全世界的に起きた大地震だ。大地震はこの星に存在するすべての陸地の形を大きく変た。大地はその大きすぎる揺れに耐えきれず、地割れや地滑り等を引き起こした。それは大陸自体に起きた事でもある。更に地上、海底のいたる箇所でマグマがあふれ出し、バランスの崩れた地表は岩石の隆起と沈降を繰り返す。なお続く大地震の中、溜めに溜めたうねりは大きな津波となり、何度も押し寄せては地上はもちろん、大陸自体を破壊したのだ。

 大厄災以前、秘密裏に設立されていたWHPOと呼ばれる世界人類保護機構と、全世界の有力な大企業達が主導となって秘密裏に進めていた「あらゆる終焉を見越した人類の保護と存続をかけた漸進的なプロジェクト」によって少数ではあるものの人類は生存する。大厄災を乗り越え、無事陸地に帰ることが出来た人類は不毛の土地を時間を掛けて再生。そして人類は新たな生存圏の確保と文明の再建を果たす。

 この一連の神話にも似た物語は、昔は老人たちが語り部となり、当時の詳細を事細かく語っていたようだが、現在は一般教養として小・中学生の教科書に載る程度にしか語られない。そんな現状に信心深い学者たちは再度大厄災が起きる可能性とその対策について日々論じ、怪しげな自作本を片手に啓蒙活動を行っている。

 それだけ現代を生きる人類にとってはそのままでは話のネタにもならない程、形骸化した歴史となっている。とはいえ、幾ら昔の事とは言え、ただ世代が変わり、ただ忘れたのではないとしたらどうだろうか。例えば、人類史において存続が危ぶまれた一大イベントですら歯牙にもかける暇がないとしたら。

 そう、この世界において大厄災と人類の再生は前座にすぎない。大厄災より100年の間は文明の再建が軌道に乗り始め、皆の瞳に宿った希望は確かに強く瞬いていた。だが、現実は無情にも希望を絶望で塗りつぶすこととなる。

 ある日を境に、世界中で謎の奇形の生物が多数発見される。これらの生物は総じて生物として全く持って不合理としか言えない見た目をしていた。代表的な例としては森林入口で発見された犬と思われる生物だろう。この生物は犬の頭部と胴体を有していた。だが、山羊と思われるもう1つの頭部とネコ科と思われる後ろ足を持っていた。奇妙なことに、この生物に人為的な縫合は見られず、2つある頭部も喉と食道と綺麗に繋がっていた。まるで元々そういう生物だと言わんばかりのモノだったそうだ。2つあり、種類も違う脳による身体の制御はどうだったかは分からないが、仮に生きていれば、呼吸と食事は特に問題なく出来たとみられている。

 この奇怪な現象は留まることを知らず、ついには人間にも似た症状を訴える者が現れ始める。この症状に一貫性は全くない。ある者は腕が、ある者は頭部が、それぞれ複数の動物の身体へと置き換わっていった。中には、ヒトでは無い別の生物の腕や足が増えたという事例もあったそうだ。原因は不明。変異のメカニズムも不明という全く持って何も分からない状況が続いた。

 そして変異するのは見た目だけではなく、内臓や骨格すらも他の動物に変異する。だが不思議なことに、内側が変異しても死に至る直接的、間接的な要因にはなりえなかった。この症状で拒絶反応は全く見られず、機能的に人にとって明らかな欠陥があったとしても、この変異は生命活動に何ら影響は及ぼさない。寧ろこの変異は不自然なほど自然な形で行われるのだ。これは先ほどの犬の例にもあったことと同じことなのかもしれない。故に、大半の者は身体が変異しても身体的苦痛を覚えることはなかった。とはいえ、変わってゆく身体に精神が追い込まれる者は多かった。それは当事者以外も同様である。

 だが、ある意味身体が変わるだけなら良かったのかもしれない。なぜなら、この症状には最も恐ろしく、悲しい結末が約束されていたからだ。変質が起きたものは最終的に、例外なく全身が変異していく。そしてある程度変異が進むと、次第に理性を失い始めるのだ。理性を失った者は、力のある限りただ暴れ、壊すだけの理性なき歪なドウブツへとなり果ててしまう。

 ただ、これらの症状の進行に一貫性はなく、進行は人により千差万別だった。ある一人の変異者は、全身が変異しきってから1年は何も感じる事なく過ごせたという。この者は他の者が見ても、可笑しなことはなかったらしい。これが、変異した者にとっての唯一の希望であり、一秒でも人として生きる為に縋る事も難しい理由だった。

 この症状が現れたものは例外なく迫害された。何気ない日常を過ごしていただけで何の前触れもなく変異してゆく身体。周りから向けられる恐れや侮蔑の目。変異した者としていない者。人類は肌の色を理由としない新たな二分化が成された。

 その後、長らく人類は停滞を余儀なくされる。症状が現れた者は軒並み気力を失い、絶望の渦にのまれていた。症状のない者達も、自身にいつ症状が現れるのかと怯え、眠れぬ日々を過ごしたらしい。

 そうした長い停滞は「あるウイルスによって変異は引き起こされている」という事実が公になるまで続いた。ゲノビリタと命名されたこのウイルスは、無機物以外の生物を宿主とし、宿主となった生物の身体を他の動物の部位へと変質させる。ただその感染サイクルはほぼ不明で、感染後のゲノビリタの動きは全くと言っていい程終えていない。そして、そもそもゲノビリタと類似のウイルスが全く見つからない事も含め、不可解な部分が多かった。

 だが、世代を重ねながらも諦めない心を持った一部の人物たちの紆余曲折のおかげで、人類はまた歩みを始めた。ゲノビリタに感染した者達も今では希望を胸にヒトと共に歩いているのだ。今に語り継がれ続けるこの歴史は間違いなくこの世界の大きな土台となっているだろう。

 ただ一つ、留意しておくべきことがある。それは、あくまでもこの歴史は一般的に知られている広義の歴史という事だ。


 そして、決して忘れてはならない事が1つある。それは、全ては無意味な積み重ねであるという事だ。

 未来へ残す事の出来る産物はいわば結果といえる。過程は追えなければ無いも当然なのだ。

 だからこそ、考える必要がある。

 だからこそ、悩む必要がある。

 どのように考え、どのような選択を取り、どの過去を排斥するべきなのか。

 来たる未来の為、より、意義のある形骸を残すために。

これは私が書きたいと考えている物語のある種の説明とあらすじです。

一応、最後まで書ききることが出来れば意図は伝えられると思いますが、分からない場合はフロム脳を働かせてみてください。


拙い文章ですが、これから頑張っていきます。

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