実況
都内某宅
『ピーコン、ピーコン……午前ニ時をお知らせします』
「JET BLRACKのCrimson Roadっ!」
ジャーッ、ジャジャジャーッ
フェル「JET BLRACKのボーカル、フェルです。こんばんはー。」
フェル「今夜も最後まで、よろしくー!」
ヨハン「放送作家のヨハンです。よろしくお願いします!」
フェル「夏だから仕方いけどさー、暑いよっ!」
フェル「まだまだフェスシーズンでしょ?野外なんかさー、参加者全員、脳溶けてるから。」
フェル「ホント、言うと怒られちゃうんだけど、ROCKERは、夏も暑さも苦手だから!」
ヨハン「あはは。聞き捨てならないんだけど、そうなの?」
フェス「そう!楽器ばっかりして成長してきてるインドアだから。身体全然弱いのよ。」
フェル「それなのに災害級の猛暑とか、悪意しか感じないのよ。」
ヨハン「あはは。悪意って誰の悪意よ?」
フェル「そりゃー、神でしょ!」
ヨハン「神ぃ?拗らせてるね。あはは!」
フェル「えー、拗らせてるの?ふーん、まっ、いっか。」
フェル「夏を象徴するような、アツアツな挑戦者たちに、冷えっ冷えの試練をあたえる新企画っ!」
ヨハン「始めましょうか。」
ヒュー……ドンドンドン、パフパフ
フェル「みんな沢山の応募ありがとねー!」
フェル「おかげで新コーナーが無事にスタートできるんだけどー。」
フェル「今日さぁこの放送、音ちょっといつもと違うでしょ?反響して良くない?」
フェル「実は!新企画のために、テレビスタジオ借りちゃいましたー!」
ヒュー……ドンドンドン、パフパフ
フェル「奮発したねー!コレ有名なクイズ番組のスタジオじゃない?」
ヨハン「奮発しすぎでしょ?今日最終回だっけ?」
フェル「えー?聞いてないんだけど?」
ヨハン「あはは。え?本当に?最終回?なんだうそ?」
フェル「なんだよ。嫌な冗談だー!」
フェル「気を取り直して新企画【欲望のために】始めるよー!」
ヒュー……ドンドンドン、パフパフ
フェル「チャレンジャー!」
フェル「ナイト&ゼリー!」
バ、ババ、バーン
ナイト「はじめまして、ナイトです。」
ゼリー「ゼリーです。よろしくお願いしまーす!」
ヒュー……ドンドンドン、パフパフ
フェル「何やってる人?」
ナイト「リーマンです。」
ゼリー「受付です。」
フェル「へー、同じ会社?」
ゼリー「別々ー!一緒はリスク高いですっ。」
フェル「へー、じゃあ取引先?合コン?」
ナイト「まあ、そんなとこですかね。」
フェル「付き合ってどのくらい?」
ゼリー「二年七ヶ月です。」
フェル「あー、もしかしてウエディング費用稼ぎに出演してくれた?」
ナイト「あはは、それ込みで【何でも願いが叶う!】に惹かれて。」
フェル「それ、勝者だけね。あとこの企画、カップルが敵になるゲームだけど、大丈夫?」
ゼリー「敵はイヤー!うふふ。」
フェル「だってー、ナイト大丈夫?」
ナイト「うーん、これは既に俺の負け確定ですかね?あはは。」
フェル「……そう。」
フェル「まっ、番組なんで、破局も視野に本気でよろしくー。」
ヨハン「ヨロシクー!」
ヒュー……ドンドンドン、パフパフ
フェル「ルール説明。」
欲望のために ルール説明
・罰ゲームが書かれている九枚のパネルから一枚を選択する
・選択したパネルのお題をクリアしたら勝者、クリアできなかったら敗者
・敗者は該当するパネルの罰ゲームをうける
・罰ゲームをクリアできなかったり、死んだらゲームオーバー
・ゴールドパネルが出ると罰ゲームを相手に投げることができる
ナイト「死んじゃう?穏やかじゃない表現!あはは。」
フェル「あー、ご家族には多額の保険金送るから安心してー。」
ゼリー「なにそれ、ウケる!うふふ。」
フェル「……」
フェル「パネルドーン!」
ドーン
ナイト「凄いっ、ドーンって来たよ!これホントにラジオ?テレビ放送じゃないの?」
ゼリー「えー顔出し困る!ふふっ。」
ゼリー「特にナイト、顔出しヤバいよね!」
ナイト「ヤバいね!ははっ。これって生放送?」
フェル「生だよ。今日は。」
ヨハン「今日は、ねっ!ふふっ。」
ナイト「じゃあ、顔出ても平気かな?みんな寝てるし!」
ゼリー「寝てるしね!うふふ。」
フェル「はいっ、そこ!人のラジオでいちゃつかない!」
フェル「じゃんけんしてくれる?負けた方先行ね。」
ナイト&ゼリー「じゃんーけんポン!」
ゼリー「負けた!」
フェル「先行ゼリー!パネル選んでー。」
ゼリー「うーん。キスは目にして?」
ヨハン『いい曲だよねー!』
フェル「あー曲なの?これ?知らなーい。」
ヨハン『こらこら!エリーゼのために使った曲よ!!』
フェル「へー!」
ゼリー「罰ゲームってカラオケ?じゃあそれ!」
フェル「おっけ。パネルオープン!」
ドーン
ヨハン「早押しクイズ。」
フェル「四谷怪談の主人公は・……」
ゼリー「お岩さん!」
ブー
フェル「お岩さんですか、番長皿屋敷の主人公は誰?」
ナイト「お菊?」
ピンポンピンポーン
フェル「正解!ゼリー罰ゲーム!」
フェル「執行人!」
バーン
ガシッ
ゼリー「えっ?なに?痛い、掴まないで……」
ゴーッ、ゴーッ
ゼリー『ギャーっ!』
ゴーッ、ゴー
ゼリー「あつーい、いたーい!ギャーっ!」
ナイト「ぇ……?」
フェル「くっせー!なにあれ?目焦げてんじゃないの?くせーっ!」
ヨハン「ガスバナー?」
ゼリー「痛いー助けてー。」
ナイト「……なんなんだ。」
フェル「キスは目にして、恋は炎!だから目に炎じゃない?」
ナイト「え?何言ってるの?」
フェル「じゃ、次、ナイト選んでー。」
ナイト「はぁ?なんだよこれ、犯罪だよ。お前らなんなんだよ。」
ナイト「ふざけるなよ、さっさと救急車呼べよ。」
ナイト「あいつ気絶してるだろ?死んだらどうするんだよ。」
フェル「死んだら、家族に保険金渡すって言ったでしょ?」
フェル「ってかさー、これラジオ番組だから、先進めたいんだよね。」
ナイト「はあ?」
ナイト「やってられるか!」
ガタガタガタ……
ナイト「あれ?出れない?」
フェル「どっちか降参しないとロック解除しないよー。」
フェル「早くー、ナイト棄権になるよー。」
フェル「あー、棄権の場合は、キツいお仕置きあるから!」
ナイト「お仕置き?」
フェル「あれ?番組参加契約に書いてあったんだけど、忘れた?」
ナイト「ゆびきりげんまん……」
フェル「そーそー!指切り&拳万ね!」
ヨハン「棄権は危険!ギャハハ。」
ナイト「ヒィッ。」
フェル「ナイトどうするか、早く決めて。」
ナイト「あっ、あっ、あっ、あつい抱擁。」
フェル「おけー!パネルオープン。」
ドーン
ヨハン『十二支を順番通り言ってみよう。』
フェル「じやー、ネズミから続けてー。」
ナイト「ネズミ、牛、虎、ウサギ、辰……」
ナイト「ヘビ、馬、羊、猿、犬……鳥、猪!」
ブー
フェル「ざんねーん!猿の次、鳥だよー!」
フェル「ナイト罰ゲーム!執行人!」
バーン
フェル「おっと!ヘビー級きたねー!」
ガシッ
ギュッギューッ
ナイト「ガハッ、グゥッ。」
ギュッ、ギューッ、バキバキ
ナイト『ギャーッ!』
ヨハン「厚い胸板で、厚い抱擁?」
フェル「あんなにギュウギュウされたら圧死だよ!」
ギュッ……バキッ
ナイト『ギャーッ』
ギューッ、バキバキ……
ナイト「ヒクッ……助け……グーっ!」
フェル「はい終了!罰ゲームクリア!」
ドサッ
ナイト「ガハッ、ゴホッ……」
フェル「肋骨折れたよね?息できる?」
ナイト「ガハッ、ガハッ。」
ヨハン「辛そうだね。肋骨が肺に刺さった?」
カタッ
フェル「あ、ゼリー!気がついた?」
ゼリー「ヒック、ウェッ……なおとぉ……」
ゼリー「優勝すると、なんでも叶えてくれるなんて……」
ゼリー「なんで、騙されちゃっんだろ……ううっ。」
フェル「それはさー、強欲なのが人間のサガたからでしょー。」
ゼリー「片目失うなんて、酷いよう。ううっ。」
フェル「ひどいかぁ…二人はさー、傷つけている人居ない?」
ナイト「は?」
フェル「二人でいじめ?みたいなことしてない?」
ゼリー「まさか!あんた、奥さんに頼まれたの?」
フェル「だれ?奥さん?誰の奥さん?」
ナイト「あっ、あかね?」
フェル「ふふっ、心当たりありまくりって感じたね。」
ヨハン「ふふふっ。」
フェル「大丈夫!悪い魂は、大歓迎だよー。」
フェル「ゼリーパネル選んでー。」
ゼリー「……なんでも叶えてくれるってホント?」
フェル「……」
ゼリー「優勝したら私の目、元に戻してくれるの?」
ナイト「!」
フェル「もちろん、優勝すればどんな願いも叶えるよー。」
フェル「安心してー、その顔も元通りだよ。」
ゼリー「わかった。じゃあ首ったけ!」
フェル「オッケー、首だけ。」
フェル「パネル、オープン!」
ドーン
パッパラーン
フェル「おめでとー!ゴールドパネルー!」
ナイト「あ……」
あの葉書が最初に届いたのは三週間前。
憂さ晴らしゲームのテスター募集で、参加用のQRコードがプリントされていた。
ゲームは、オリジナルのアバターを作り、天誅を下す残虐系だった。
夫とその愛人の嫌がらせに疲弊していた私は、ゲームの中に二人を作り虐待した。
あの女の顔をガスパーナーで燃やしたり、夫を金属ゴミのプレス機で潰したり……
何度も何度も、何度も殺してやった。
三日前、二通目の葉書が届いた。
日時とQRコードがプリントされてこのラジオにつなかった。
…いつものことだが、今日も夫はどこにいるかわからない。
ただラジオから流れる実況はテスターしたゲームと酷似…そのものだった。
ラジオは続く。
フェル「ねー、ゴールドカードなんだけどさ、罰ゲームの回避チャンスつくる?」
ヨハン「良いね、パネルのチャレンジをクリアしたら、罰ゲーム免除にしよっか?」
ゼリー「嫌!それじゃ私、優勝できなくなるかもしれないじゃない。」
ナイト「芹奈!」
フェル「ゼリー、冷たいねぇ。」
フェル「ナイトは優勝したら何を望むつもりだったの?」
ナイト「……結婚。」
フェル「ナイトはゼリーと結婚したかったの?」
ヨハン「それは簡単じゃない?願うようなことかな?」
フェル「だねー。婚姻届け描けばあとは役所の仕事でしょ?あはは!」
フェル「まーこのままじゃ気の毒だし、フラれたナイトに、罰ゲーム回避チャーンスあげるよ!」
ヒュー……ドンドン、バフパフ
フェル「ナイトさあ、今から電話かけてみてよ。」
ナイト「?」
フェル「かけた電話がつながったら罰ゲームクリアーね!」
ヨハン「あはは!なにそれ簡単すぎっ!ズルっ!!」
ゼリー「そんな……」
フェル「いやいや!もう三時だから!」
フェル「深夜なのね、いまっ!」
フェル「ちゃーんと電話出てもらえる人選べるかなー?」
フェル「ナイトー、絶対電話出てくれる人、選んでねー。」
ブ……ブ……ッ
電話が鳴っている。
着信者は【尚人】私の夫だ。
ラジオでゲームをしているのは、やはり夫と愛人だった。
あのゲームの実況に間違いない。
そうすると「首だけ」は……
ブ……ブ……ッ
ああ、電話に出たくない。
「これであの人が死んだら、私は捕まるの?」
ブ……ブ……ッ
フェル「ナイトー、まだぁ?」
ナイト「ハゥッ、ヒッ。あかね、あかねぇ……」
ゼリー「はぁ?なに?奥さんにかけてるの?最低っ!なんで?」
ナイト「あかねぇ、たすけて……」
フェル「…そろそろかな?」
フェル「オッケー終了!」
フェル「勝者、ゼリー!」
ヨハン「敗者、ナイト。」
ゼリー「罰ゲームまだしてないよね?なんで勝敗ついちゃうの?」
フェル「あー、人間が首だけになったら死んじゃうんだよねー。」
ヨハン「罰ゲーム決まればおしまい。」
ゼリー「首だけ?何を言ってもいるの?そんなこと書いてない!首ったけって、えっ?」
フェル「あなたの首だけって書いてあるけど?」
フェル「ゼリー片目燃えちゃったから見えてなかった?」
フェル「まーでも、おめでとう!願い事は目を元に戻すでいい?」
ナイト「セリナぁ。」
ゼリー「目を顔を治して!」
フェル「了解!」
フェル「元に戻った目でナイトの最期を見届けなさい。」
フェル「執行人!」
バーン
ガシッ、ガッシャーン
ナイト「ギロチン?ゴホッ。」
ナイト「やめて、ゲホッ、おねがい。」
シューーーッ
ドンッ
ゴロ……ゴロ……
ゼリー「ギャー!尚人ぉ!イヤーッ!」
フェル「目治ったね?おめでとう!」
フェル「君が救わなかったナイトの首は、忘れないで持って帰ってねー。」
フェル「さてさて、今夜も最後までお付き合いありがとう!」
フェル「そろそろお別れの時間だよ。」
フェル「好みの挑戦者見つけたら、またゲームするからみんな元気でねー。」
フェル「くれぐれも、ゲーム挑戦来ないでねー。」
ヨハン「クスクス、さようなら!」
フェル「JET BLRACKのボーカル、ルーキ・フェルの【Crimson Road】でした!」
フェル「またねー!」
ジャーッ、ジャジャジャーーッ
二日後、警察から電話が入った。
夫の車が事故を起こして発見された。
運転していたのは愛人で、事故のショックで正気を失っていた。
正気を失った愛人は、首だけになった夫を抱き抱えて離さなかった。
警察から帰宅すると、消印のない封筒が届いていた。
中には、「保険金」と書かれた付箋と巨額の小切手が入っていた。
フェルもJET BLRACKというバンドも、ラジオ放送局さえ探すことができなかった。
QRコードの書かれた二通の葉書も消えていた。




