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東横線の女  作者: 愛莉
1/1

you can fly

社会人になって1年目。

憧れていた旅行会社に入社した渚は、みなとみらい支店に配属された。

自宅からは東横線で30分以上かかるが、下りなので座れるからラッキーだ。

同期は10人で仲が良かった。

毎朝3、4人の同期と出社し、帰りはほぼ終電。

飲み会が多く、終電を逃して居酒屋で朝まで過ごすことも多かった。

容量が悪く仕事を覚えるのが遅かったが、とにかく必死だった。


渚は疲れ果て、家に帰るとすぐお風呂に入り、髪も乾かさずに寝た。

昨年お母さんが病気で亡くなったばかりで、高校生の妹と大学生の弟と住んでいた。お父さんは単身赴任で九州に住んでいる。

20歳の誕生日に買ってもらったチワワのタツオを世界一可愛がっていた。

渚は毎朝妹のお弁当を作り、タツオを近所のおばあちゃんに預けて、東横線に乗って出社した。


妹の七海とは8歳年が離れているので、喧嘩をした記憶はほとんどない。

自慢の可愛い妹で、地味な自分とは違い、性格も明るい。

そんな妹が最近、夜に出掛けるようになっていた。

私が寝たのを見計らって、終電で渋谷に遊びに行っているらしい。

「どこに行ってたの?」

と問いただすと、

「どこにも行ってない」

と笑いながら答えた。


夏のある日、渚は新しい水着を買ってクローゼットにしまっていた。その水着は、いつの間にか洗剤の匂いがした。

おかしい。

七海のインスタを見ると、七海の友達がその水着を着ていた。

「使ったでしょ」

「使ってない」

また七海は笑いながら答えた。

どんなに怒っても笑っている。

七海の携帯を壊れない程度にベッドに投げた。

「やめてよ」

やっと七海は笑わずに言った。

思春期は箸が転んでもおかしい年頃なのだ。


渚の支店では辞める人が多く、よく送別会が開かれた。

体育会系のノリで、渚には付いていけなかった。

渚の同期の男の子が先輩に、

「この中で好きな人を言え」

と言われた。

「渚さんです」

突然名前を呼ばれた。

周りに立つように促され、

「ごめんなさい」

と本気で答えると、みんな笑った。


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