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パンゲア書記  作者: 武蔵野紫村
2章 集う
42/56

42話 空帝

アスラン達がアイセンブに来た当日、コジモの計らいで立派な宿を用意してもらっていた。

三食付きで、必要な物はすぐに用意してくれている。

一行は、翌日以降二手に分かれることにした。

フランチェスコは実家の様子を伺いに、それ以外は特殊部隊との訓練をすることになっていた。

しかし、翌朝には宿にコラソンが来ていた。

どうやら、ロタリオを見付けたらしい。その報せを聞いて、アキラはコラソンと共にロタリオの元へ赴いた。

ロタリオは、大通りから少し外れた路地にある、古臭い酒屋にいた。コラソンが発見した時から酔っており、足を蟹股に開き酒をあおっている。

その様子を見て、呆れた様にアキラが話しかける。

「はあ、あんた、アイセンブに帰ったら酒を止めるんじゃ無かったのか」

ロタリオは気だるそうにアキラを見る。腫れぼったい瞳はどんよりとして、下から睨めている。

「なんだあ、てめえ。関係ねえだろ」

不快感を露わに言い放つ。

「覚えてないか」

「生意気なガキなんぞ、覚えとらんわ」

「ふむ、確かに三年も経っているからな」

「人違いじゃねえか。こんな飲んだくれは放ってくれい」

酒瓶をひっくり返し、最後まで飲む。口からこぼれているが、気にする様子はない。

「…これでも思い出せないか」

瞬間、アキラは殺気を放つ。鋭く、嫌でも背筋に冷や汗が滲む。しかしそれでいて、どこか慈しみを感じさせる気配だった。

周囲の客も驚いてアキラを見る。

当のロタリオは、豆鉄砲を食らったように、目玉を剝いている。

「うそ…だろ…。お前さん、アキラじゃねえか!おい、マジか、本当に来るとは!」

「やっと思い出したか、おっさん、変わんねえな」

アキラもロタリオ笑顔を見せる。

再会の喜びもほどほどに、ロタリオの顔が曇る。

「来てくれて悪いんだが、約束の飛空艇、用意出来てなくてな…」

「ああ、設計場すら取り壊されたとか」

「そうなんだ。俺のことを快く思わん連中がいてな、逆恨みってやつよ。家も飛空艇も獲られ、今じゃこのザマだ」

ロタリオは自虐的な笑みを作る。

「飛空艇に関しては、この国にある物、どれでも使える様にします」

コラソンが言った。

「どういうことだ?それにあんたは」

「申し遅れました、私はコラソン。議員であるコジモ氏に、同盟国である東国の為に飛空艇技師から一隻借り上げる書類を頂いています」

「つまり?」

「つまり、貴方が以前設計した型、あるいは最新の型でも国の命として自由に使えるということです」

ロタリオの目が変わる。

「なるほど…ただの同盟国ではねえと思っていたが、それほど肩入れするたあな」

顎ひげを撫でながら言う。

「よっしゃ、“空帝”の名にかけて最高の船にすっか。そうと決まれば早速行くぞ」

ロタリオは新たに酒瓶を取り出し、二人の間を過ぎる。

「どこにいくんだ、おっさん」

「おれの設計場跡地よ。そこにここぞって時の為の魔水晶を置いてある。コラソンって言ったか、あんたも来てくれ」

「ええ、もちろんご一緒します」

飛空艇を取り上げられ、酒に溺れたロタリオが、かつての様に前を向いていることに嬉しさを感じたアキラだった。


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