36話 決心
それから、しばらくしてルシウスが四人の部屋に入って来た。
そして、全員に対し、言った。
「なあ、俺も旅に混ぜてくれ。どうしても、父の無念はこの手で晴らしたいんだ」
アキラが寝返りをうち、ルシウスを見る。
途端、アキラが殺気をルシウスに向ける。
全身から鳥肌が立ったが、アキラをしっかりと見据える。
むくり、とアキラが体を起こし、胡坐をかく。
「父は死の間際、魔族としての力を僕に渡してくれた。父は、魔族として生きて欲しいからしたんだと思ってた。でも、自分のやりたいことを貫く力をくれたんだ。人として生きる。その前に、父の仇を討つ」
ルシウスは決意みなぎる視線をアキラに向ける。
先程までの豹変ぶりに、皆が驚いたが、すぐに誰からともなく近寄り、握手を交わした。
特に、アキラとアスランはルシウス同様、親しい人を傷つけられている。
もはや、断る理由など無かった。
「じゃあ、早速アイセンブに行くぞ。それから、ルシウスの主君に会ってから東国に行く」
「それ、俺が言った案じゃん」
フランチェスコが笑いかける。自然と皆に笑みがこぼれる。
さっきまでの重い空気が嘘の様に、明るい雰囲気が満ちていた。
 




