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パンゲア書記  作者: 武蔵野紫村
2章 集う
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31話 後悔と決意

ルーは、今までの出来事に困惑する。

「奴は、魔族の中だとどれくらい強いんですか」

「うむ…おそらく魔王の幹部くらいでしょうか。もしそうなら、まだ生きているでしょう」

「倒したんじゃ?」

「そうやすやすと倒せはしませんよ。最後の瞬間には既に抜け殻も同然でしたから」

魔族は生命力もあるのかー。ルーは改めてこれから戦う相手の実力を知った。

それから二人は、誘拐された三人を探して奧に進む。

「そういえば、どうしてここが分かったんです?」

ルーが聞く。

少し間が空いてアレキサンダーが答える。言っても良いのか迷っている様だ。

「この国、もとい首都には大きな結界があります。本来は検問を正式に越えていない侵入者を見分けるための物です。まさか、内側から越えるとは…おかげですぐに連絡が来ましたよ。これでも国防を担っているので」

「迷惑をかけてしまいました…」

「本当ですよ。次からはすぐに声をかけてくださいね」

「…すいません」

それしか言えなかった。怒りにのまれ、すぐに駆け出していた。本当に反省している。

「まあ、そこが君の良いところなのですよ。お兄さんのこと然り、周りの人を大切に出来るのは素晴らしいことです」

慰めの言葉も素直に受け止められない。

もし自分が強ければ、もっと頭を冷静に保てれば。そんなことばかり頭によぎる。

「ほら、君がすぐに行動したから、彼らも無事ですよ」

言われて顔を上げると、見た目には傷もなく、寝ている三人の姿があった。

カスパール、アロタ、メルキオールの三人は、ただ眠らされていただけの様だった。

安堵すると同時に、右手と胴に痛みが走る。

コロッソとの戦闘では興奮からか、そこまで痛みを覚えなかった。しかし、今になるとじりじりと鈍い痛みが襲う。

「三人を一度に持ち帰るのは難しいですね…」

アレキサンダーはルーの様子を見て、眉間に皺を寄せる。

そして、ぐっすりと眠るメルキオールの側で屈むと、手をかざす。

するとメルキオールは少しだけ呻き、目を覚ました。

「あれ、アレキサンダーさん。それにどこですか、ここ」

メルキオールに驚きの表情は無い。それどころか、周囲を見渡し、ため息をつく。

「なるほど…そういうことですか。助けてくれてありがとうございます」

「さすが、理解が早くて助かりますよ」

にこりと笑い、アレキサンダーはカスパールとアロタを肩に担ぐ。

「では、帰りましょう。起きたばかりで恐縮ですが、ルー君に肩を貸してあげてください」

メルキオールは頷き、立ち上がると、ルーに肩を貸す。

支えられながら、ルーは今までの出来事を振り返る。

不甲斐なさはどうしようもないが、それ以上にアレキサンダーの強さに圧倒されていた。

僅かな時間だったが、魔力を無駄なく使い、かつ非常に滑らかだった。

流れを感じ、多少コントロール出来るだけで、驕っていたのかもしれない。

存在自体が魔力で構成され、生まれた頃から魔力と慣れ親しんでいる魔族が相手だ。

きっと練習などしなくとも感覚で使えるのだ。

呼吸するが如く、魔力を使う。そうした存在とこれから戦っていかなければならない。

さらに修行を積み、皆を守れる強さが欲しいと感じたルーであった。


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