29話 強敵と援軍
追撃をしてこない。
コロッソのその余裕が、更にルーの神経を逆撫でする。
立ち上がり、努めて冷静にルーは聞いた。
「誘拐した三人はどこにいる…」
「彼らには寝てもらっていますよ」
そういいながら、奥を指差す。
「僕になんの用だ。それに彼らには関係ないだろ」
「いえいえ、ありますよ。彼らにはあなたをこうして誘き寄せる餌として役に立ってもらいました。あなたは前回仕留め損ないましたから。あれから監視をつけ、様子を伺っていました」
舐めた真似を…
ルーはコロッソに向かい走る。右足を踏み込み、砕けた拳を振るう。
コロッソは左の掌を向け、受け止めようとした。
当たる直前にルーは腕を逸らし、右足を更に強く踏み、右肩からコロッソに突っ込んだ。
「タックル!」
木箱に座っていた男は立ち上がり、目を見張りながら言う。
コロッソは衝撃を消し切れずよろける。
顔を上げたコロッソの口元には笑みが消えていた。殺気も強まっている。
殺気は鋭く、ルーの全身を刺すように放たれている。
「本当に面倒なくらい育ちましたね。ですが、もう終わらせます」
そう呟き、右の掌を顔の前に置く。
すると、掌から、細長い何かが徐々に出てくる。
刀身を出し切った所で、コロッソは柄を握る。レイピアだった。
ルーはあまりに危険だと判断し、咄嗟に後ろに飛び退ける。
しかし、気付いた時には、腹部に三ヶ所の穴が空いていた。
喀血し、膝を突く。
レイピアには血が付着していた。
速すぎる…何も見えない。
魔族の本気を感じ、顔が青ざめる。
「では、ごきげんよう」
口角を吊り上げ、コロッソが呟いた瞬間だった。
「ごきげんよう」
後ろから声がした。
振り替えると、そこにはアレキサンダーが立っていた。
 




