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パンゲア書記  作者: 武蔵野紫村
2章 集う
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24話 勧誘

食事が目の前に並び、つつきながらアスランは口を開いた。

「そういえば、君はなんでこの町にいるの?見た感じ地元の人って感じしないけど」

改めて見ると服装も、西方の物ではない。体のラインが分かるほどすらっとして、丈が長く、所々刺繡が入っている。シンプルでありながら、気品を感じる装いだ。多少だぼついた服を好む西方の人間の服装ではない。

「私はねえ、今武者修行してるの。ぶらぶら旅して、行く先々で強い人がいたら戦ってる」

少女は米料理を食べながら答える。

「戦い方と服装で分かった。君東方の出身だろ」

アキラが言う。

「お、正解。さすが東国の武士さん」

少女は猫の様に口角を上げる。

「東方!?二人とも随分と長い旅してるんだな…」

西方から出たことのないアスランには途方もない旅路に思えた。

「うーんと、正確に言えば中央平原の出身かなー。だから東方よりはちょっとだけこっち寄り」

「中央平原と言えば、遊牧民族だろう。一人だけで旅してるのか?」

中央平原は広大な平原が広がる。そこで暮らす遊牧民族は基本的に一族で集団となって生活を送る。一人だけで行動することは稀だった。

少女は頷きながら言った。

「半ば家出みたいな感じで来ちゃったから…家族も結構特殊だし」

「ふーん、そっか。俺は弟を追って旅に出た。誰も知らせずに来ているから家出と言えばそうなのかもしれないなあ」

「へえ、そうなんだ。家族想いなんだね」

少女に笑いかけられ、アスランは頬が赤らむ。

照れ隠しにグラスに入った水を一気に飲む。そして話題を変える。

「そういえば、どうしていきなり手合わせなんてしたんだ?急すぎて驚いたぞ」

「まだ理由を言ってなかったな。訳あって仲間を探しているってのは言ったよな。

そして、最終的には魔王を倒そうと思う。だからその力を貸してほしい」

アキラは少女に向かって頭を下げる。

ふーん、良いよ。と即答した。

「え、もうちょっと考えたりとかしないの?」

「うん、魔王と戦うんだったらいい修行になりそうだし。お兄さん達悪い人じゃなさそうだし。何人目と戦うの?」

「七人目だ」

「東国の魔王か…なるほどね」

「どういうこと?」

一人だけ付いていけず、アスランが聞く。

「魔王は九人いる。基本的に暗黒大陸にいるが、十年前から七人目と呼ばれる魔王が東国へ進出し、今も直接支配している。だから東国を奪還するための仲間を集めている」

アキラが答える。

「それで大陸の反対側まで旅をしてるってことか。ってことはよく考えたら十歳の頃から旅してるってことか?」

「ああ、まあ途中までは相棒がいたからな。なんとかやれてた」

「じゃあさお兄さん。他の武士はいないの?」

「東国の内部では一定数抗う連中もいるだろう。が、正直その数は分からない。こうして国外に出ているのはおそらく俺だけだ」

「そうなんだ」

頬杖をつきながら少女が返事をする。

アスランも真剣な表情で聞き、質問する。

「旅してる中で、仲間って言える奴はどれくらい見つけたんだ?」

「そうだな…正直に言って十人もいない」

やや俯き加減で言う。

「まあ、私が付いてるから安心しなよ!負けちゃったけどねー」

おどけた様子で少女が言った。

「そうだ!まだ自己紹介してないよね?私はカリンって言うの。武者修行の為に旅してるんだよ。これからよろしくね!」

笑顔を浮かべながら、二人に手を伸ばす。

三人は握手を交わし、名乗り合う。

「これからのことは決めてるの?」

とカリンが聞いた。

ウットイムの町に来てからのことを考えていなかったアスランは沈黙する。

一方のアキラは、何か決めているようだった。

「実はな、そろそろ国に帰ろうと思っている。もちろん、途中で会った奴も連れてな」

アスランとカリンはつい最近仲間になったがアキラ自身はもう十年近く旅をしている。数年も待つ仲間には待ち遠しかっただろう。

「良いも何も、俺はアキラに付いていくだけだ。カリンじゃないが、出来るだけ実践を積みたい」

「私はなんでもいいよー最初からあてのない旅だし」

二人を見てアキラは微笑んだ。


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