23話 剣士と拳士②
向かいあった二人は素手の時よりも鋭い闘気を放っている。
お互い余程の自信があるのだろう、リラックスしている様にすら見える。
二人は睨み合い、間合いを図る。
先に動いたアキラが距離を詰め、右上から切りかかる。少女は左の篭手で受け、腕を振り刀を弾く。
アキラはその威力を利用し、体を一気に反転させる。少女に背中を向けた状態から右足を軸に、左下からの切り上げを放つ。
少女は上体を後ろに反らしつつ飛び退いて避けるが、すかさずアキラが追撃を放つ。右足を大きく踏み込み、頭上に高く振り上げた鞘を叩きつける様に振り下ろす。
少女は腕を上げ、篭手を交差させこれを受け止める。鈍い金属音が鳴り響く。
勢いを流し切れず膝を付いた少女に、アキラが再び鞘を振り下ろす。
少女は全身の魔力を防御に回し、篭手で受けた。受け流しきれない衝撃は、地面にひびとなって表れた。
少女は思い切り地面を蹴って、距離を取る。
アキラは少女を追わず、鞘を左手で、逆手に持ち変える。
少女が空中で体を捻り、着地の姿勢に移る。
次の瞬間、アキラは目にも止まらぬ速さで鞘を振り、魔力を飛ばす。
斬撃を飛ばしたー。鞘に纏わせた魔力を飛ばした技に、アスランは魅入る。
少女も虚をつかれ、直撃を貰う。
背中から地面に落ち、表情を曇らせ咳き込む。
アキラは手を止め、魔力を纏うのを止めた。この姿を見て少女が激高する。
「まだ終わってないもん!」
少女は不満に頬を膨らませ、全魔力を腕に集めていく。しかし、アキラは動かない。
さすがにまずいんじやー。アスランが静止に入ろうとするよりも先に、少女が拳をアキラに向ける。
束ねられた魔力は塊となってアキラに放たれた。
アキラは、この魔力の塊を鞘で受け流し、上空に向けて打ち返す。
アスランと少女は大きく目を見開き、驚きを顕わにする。
「うそ…自慢の技なのに…」
少女は地面に座り込み、うなだれる。
「なかなかいい技だ。が、隙も大きいし力に任せ過ぎだ」
アキラは鞘に刀を納めながら言った。
「それにしても、お兄さんめっちゃ強いね。武器ありだとすぐにやられちゃった」
「これでも、東国の武士の端くれだ。これくらいは出来るさ」
「絶対嘘。相当強いでしょ」
少女はむくれながら言う。まだ拗ねている。
「そうだ。いきなり手合わせしてくれた礼も兼ねて、一緒に飯を食べないか」
アキラはアスランを見ながら言った。
「行くー!強さの秘訣教えて!」
さっきまでのとは打って変わって明るい笑みを浮かべる。
ここまで見ているだけだったアスランが口を開く。
「俺も気になる。二人とも強いもんなあ」
「お兄さんも頑張ればすぐ強くなると思うよ。才能ありそうだし」
「そうかなあ…」
アスランは少し照れたように言う。
こうして、三人は食事処に向かっていった。
 




