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パンゲア書記  作者: 武蔵野紫村
2章 集う
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22話 剣士と拳士

二人は先ほど捉えた人物を追い、町を歩いていた。

もうすぐだー。アスランは歩きながらでも感知を行えていた。

その人物はどうやら、この脇道を入った所にいる様だ。

「ここだな」

「そうだ。やれば出来るじゃないか」

二人は脇道に入る。すると、昨夜会った少女の姿がそこにあった。

「あれ、なんか見られてると思ったら昨日のお兄さんじゃん」

「君が三人を一瞬で倒した少女か。さすがというべきか、よく分かったな」

「お兄さんは上手いこと気配隠してたけど、そっちのお兄さんはバレバレだったよ」

屈託のない笑みを浮かべながら少女はアスランを指す。

実力不足を少女に言われ、アスランが頭を掻く。

「それで、私になんの用?」

「単刀直入に言おう。君と手合わせしたい」

「ふーん、良いよ。その代わり本気で来てね?」

少女はやる気だった。先ほどまでの幼さに残る柔らかい雰囲気から、獲物を前にした獣の様に鋭い眼光をしている。

「本気を出せれば良いな」

アキラもやる気である。拳を鳴らしながら首を回してほぐしている。

アスランにはもはや口を挟める空気ではない。

大丈夫なのかー。アスランには少女を襲っている様にしか見えなかったが、二人にしか分からないことがあるのだろうと納得した。


お互い、構えを取り睨み合う。じりじりと距離を詰めていく。

先に動いたのは少女だった。二歩三歩と素早く近づき、左足を踏み込み、右ハイキックを放つ。

アキラは左腕を立て、前腕で受けた。しかし、アキラの上体が右に傾く。

「なるほど…魔力を纏うくらいは朝飯前か」

全身から湧き出る魔力を見て、アキラが呟く。

次に仕掛けたのはアキラだった。腋を締め、蹴りに備えつつ近づき、左右のジャブを放つ。少女は体を左右に振り躱す。

少女が左に避けた所で、アキラは右ストレートを放つ。

少女は身を捩り、左回転しながら右の回し蹴りを胴めがけて打つ。

アキラは屈んでこれを回避し、足払いを放った。

思い切り足を蹴られ、少女の体が浮く。

頭が下に来たタイミングで、少女は両手で地面を掴み、左足をアキラに向かって突き出す。

すかさず、両腕をクロスし、これを受け止める。しかし、受け止めきれず、後ろに転がる。

「まじか…アキラが押されてる…」

想像以上に激しい戦いを見て、息をのむ。手に汗が滲んでいる。

立ち上がったアキラは呼吸を整える。

「ふう…想像以上だな。お望み通り、本気を出す」

「わお、ほんとに?やった!」

再びあどけない笑みを浮かべガッツポーズをする。

「いい機会だ。見てろアスラン。魔力を纏える者同士が戦うとはどういうことかを」

言うや否や、アキラは腰の刀を抜く。そして、刀を近くの壁に立てかけ、鞘だけを持つ。鞘に流れる魔力の流れは鋭く、まるで生身の刀を持っている様だった。

「本当は、刀を使ってやりたいが、あいにく殺し合いたいわけじゃない。許してくれ」

「いいよー。ちゃんと本気出してくれてるみたいだし。私も準備するね」

そう言って少女は反転し、地面に置いてある袋から何かを取り出し腕にはめる。

「篭手…生粋の拳法家ってことか」

「そーゆーこと」

お互い得物に魔力を籠め、構えをとる。臨戦態勢に入っていた。


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