16話 魔力と魔壺
アレキサンダーと手合わせしていたルーは、水場で汗を流していた。無事にアレキサンダーに認められ、修行を付けてもらえることになっていた。
「ふう…」
水気を拭い、再び衣服をまとう。
そして、アレキサンダーとの会話を思い出していた。
「良く避けられましたね」
「なんとなくですけど、どこに拳が来るか分かったんです」
「実はね…君にどこを殴るのか。魔力で知らせていたのです。つまり、君は魔力を感じることは出来ている」
「そうなんですか!いつの間に出来るように…」
「おそらく、すでに多少萌芽はあったと思いますよ。魔力を持つ存在を目にし、無意識で薄らと感じれるようになっていたのでしょう」
アレキサンダーは大木の様な腕を組みルーに告げる。
「まあ、肉体も大分完成している様ですし、魔力のコントロールが出来るようになれば多少は戦えるでしょう」
その言葉にルーの表情が輝く。
「本当ですか!」
「ええ、君には素質があると私は思っていますよ」
アレキサンダーが微笑む。人差し指を立てて、続ける。
「それで、これから早速修行に移ります。汗でも流してまた来てください。その間メルキオールさんと話があります」
「はい!」
元気の良い返事をする。
アレキサンダーは手の空いていた者に、ルーの案内を頼む。そして、稽古場を去って、今に至る。
「それにしても、既に魔力が目覚めてたのか…」
未だに実感が湧かない。これから稽古を付けてくれることになってはいるが、何をするのか見当もつかない。
再び稽古場に着くと、既にアレキサンダーがいた。
「お待たせしました」
ルーは駆け寄る。
「構いませんよ。では始めましょう。この壺を見て下さい」
そう言い、足元にあった壺を持ち上げる。
「なんですか、これは」
「これは、持った者の魔力を吸い取るというなんとも困った壺です。が、魔力の消費を抑えるのは、基本中の基本。魔力を吸われない様になるのが最初の課題です」
壺をルーに手渡す。すると、全身から力が腕を経由して、壺に流れていく感覚が襲ってくる。思っていた以上に力が抜けていく。
「これは…なかなか骨が折れますね…」
「ええ、そうでないと修行になりません」
腕を腰にあて、アレキサンダーが笑う。
「さて、ずっとここにいるわけにも行かないので、後で様子を見に来ます。疲れたら離しても構いません。では」
そう言い残して去っていった。
一人残されたルーは、全身に力を込める。が、それでも力が抜けていく感覚がある。
これは中々大変だなー。そう思いつつ、腰を下ろして壺を睨んだ。
 




