13話 魔道具
「はあああああ…!」
アスランは全身に力を込めていた。それでも、アキラがした様に魔力を纏うことは出来ていない。
「まあ、こればっかりはな。魔力を見ることは出来ても纏う段階まで行ける奴は実はそう多くない。だから鑑定をしたりお祓いをするとかで、使えないなりに頑張ってる奴は良く見かけるぞ」
「鑑定とかお祓いって…呪いでも流行ってるのかよ」
アスランは苦笑しながら言う。
「そうだ。意外と多いぞ?後は、めっちゃ古くからある物とか、強い想いが込められている物にはけっこう魔力が宿ってたりする」
「へえー、そうなのか」
アスランが驚きながらアキラを見る。
二人はアスランが魔力を見れる様になってから、町を出ていた。今は、野営をしながら休憩をしていた。道端にあった切り株に腰を掛け、水を飲んでいる。
「それなら俺も最悪魔力が込められた物を使って戦うしかないかなあ…」
アスランは頬杖をつきながらため息をついた。
「それは意外とありだな。東国では呪具と呼ばれている得物を使う戦法だ」
東国の武士の中でも、自ら魔力を纏えない者は、呪具で武装し戦う。直観で魔力が籠められているのかどうかは分かる者もいるが、大抵は鑑定をしてもらうことでそれが実用に値するか決める。
道端で会話している二人の元に、遠くから馬車の音が聞こえる。
御者の男は二人を見つけると声をかけて来た。
「兄さんがた、ちょっといいかな?ウットイムの町へは、この道で合ってるかい?」
ウットイムというのは、アスランとアキラの次なる目的地だった。ウタツの町から北上し、数日歩いた距離にある。
「そうですけど…もしかして行商人ですか」
アスランが答える。
「そうだよ。南に北に行って、各地の珍しい品を仕入れては売ったり買ったりでね」
「なるほど。ところでその町まで俺たちを連れて行ってはくれないか?道案内はばっちりだ」
アキラが言う。
「ふむ、それはありがたい限りだが、お礼は期待してくれるなよ?こっちだって文無しなんだ」
「連れて行ってくれれば良い。数日とはいえずっと歩くのは堪える」
「それならいいぞー」
御者の男は無邪気な笑みを浮かべながら答えた。
「俺はフランチェスコだ。よろしくな。道中は荷台にでも乗っててくれ。迷ったら聞くから」
「ああ、よろしく頼む。俺はアキラだ。こっちはアスランだ」
そう言いながらアスランを親指で指す。
そしてアスランも会釈した。
荷台に乗ったところでアスランが聞いた。
「道案内なんて出来たのかよ」
「いや、俺じゃない。アスランが出来るだろ。こうやって相乗りするのには慣れてるんだ、役割分担ってとこかな」
頭の下に手を回し、寝転がりながらアキラは答えた。
さすがさすらいの旅人だなと感心しながらアスランは乾いた笑みを浮かべていた。
 




