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7話~ミナスタシア視点~

会談が終わった後、屋敷の食堂に3人の女性が集まって、話をしていた。


「やばすぎない?」

お嬢様がつぶやく。


「やばすぎますね。」

メイドが言う。


「・・・・」

もう一人、秘書風の女性はあいかわらず黙ったままだ。


「やばいとか言いながら、ミナお嬢様相変わらず顔がにやけてますよ。」


「ほう、そういうエレナこそ頬が緩みっぱなしだが。」


「「・・・・」」


「やめておこう」


「そうですね」


「しかし、泣きながら笑うとは反則であろう。あの笑顔を見た女は全てを敵に回してでもユータを守ろうとするだろうな。」


「私もミナお嬢様に激しく同意したいと思います。」


「・・・・」


「ところで、例の件はどうなった?」


「ユータ様の調査の件ですね。いくつか分かった事がありますので、端的に報告させて頂きます。」


「頼む」


「まず、この国の人間でないのは確かです。一般的に使われている照明道具や日用品について使用方法を知りませんでした。」


「ふむ」


「次に、所作や言葉遣いは知っての通り、10歳にはとても思えません。作法はいまいちなのですが、それは文化の違いからきていると思います。我儘わがまま)も殆ど言いません。遠慮もあると思いますが、余程に厳しく育てられたのだと思います。」


「なるほど」


「あとは我々の他に誰かと接触している様子もないですね。間者の可能性は低いと思います。日中はすることがないのか、ほぼ本を読んでいます。歯磨き粉もその本を元に作ったのだと思います。」


「歯磨き粉か、エレナは試したのだったな?どんな感じなのだ?」


「そうですね。かなりすっきりしますね。あれを一度試せば元の方法に戻ろうとは思えないですね。」


「ふ~む、東の国では一般的な方法なのであろうな。私も試してみるか。」

ミナが続ける。

「ところで、一つ気になっていることがあるのだが」


「なんでしょう?ミナお嬢様」


「ユータの性別だ、実は女という事はないか?医者は怪我の状況しか教えてくれないし。男にしては警戒心が少々低すぎる気がするのだが」


「その点については間違いなく"男"と断言できますね。」


「なぜだ?」


「私はユータ様の世話係でもありますからね。体を拭く時とかですね。いろいろ見えてしまうのです。本当に不可抗力ですが、しょうがなく、デュフフ」


「おいっ、エレナ、お前、本当にユータの体を拭いているのか?」

ミナがガタッと椅子を引いて立ち上がる。


「といっても背中だけですけどね。デュフフ」


「その、デュフフをやめい。」


「まぁ、冗談はさておき、私もどうかとは思いましたが、余程に不潔なのが耐えられないようで、確かに片手では背中は拭けませんからね。」

「それにあの顔で申し訳なさそうにお願いされるのです。私の中の色々な(せき)が決壊するかと思いましたよ。ギリギリ耐えましたが。」


「・・・・」


「ちなみにですが、背中は白磁のように滑らかで、私が布を擦り付けるたびに、冷たいのか若干 (うめ)くように声をあげて、なかなかエロティックな感じでした。思わずむしゃぶりつきたくなりましたよ。」


「・・・・」


「エレナ、お前、ショタコンではないと言っていなかったか?」

ミナが白い目でエレナを見る。


「最近はそれでもいいかなと思ってます。」

エレナが答える。


「おい、エレナ、それも冗談だよな?さすがに本気だと世話係はやめてもらうぞ。」


「まぁ、半分は冗談ですね。」


「半分は本気なのか?」


「落ち着いてください、ミナお嬢様、半分本気と言ったのはミナお嬢様自身の事です。」


「ん?良く分からないのだが?」


「ずばり、聞きます。ミナお嬢様はユータ様をどうしたいのですか?」


「どうしたいのかとは?」


「具体的には、女男のサムシングとか結婚とかですね。」


「・・・・まだ、会って2週間だぞ、そんな事考えた事もない。」


「嘘ですね。今、若干間がありました。」


「大体、私は子爵家の三女だぞ。得体の知れない平民と結婚など出来ん。」


「下位貴族の三女など平民と変わらないではありませんか。」

エレナがにべもなく言う。


「いや、そうであっても一応、格とかだな」

ゴホン、とわざとらしく咳をしながら、ミナが言う。


「では、私がユータ様をいただいても問題ありませんね?」


「む、なぜそういう話になる、大体、年齢が釣り合わんだろう。」


「そうですか、私は18歳でユータ様は10歳、5年もたてば違和感などなくなると思いますけどね。」

エレナが続ける。

「それに私、知ってますよ。」


「何をだ?」


「ミナお嬢様がユータ様からお金を受け取らなかった理由です。」


「助けておいて金を請求するなど、(たか)りと変わらんではないか」

ミナが反論する。


「いいえ、違いますね。金銭の受け取りを固辞すれば、ユータ様が代わりに働いて返すと言い出すと考えたのでしょう。」


「うっ…」


「恩を売りつつユータ様を囲い込みたかったのではないですか、まぁ、イヤらしい。」


「ぐっ…」


「いいじゃありませんか、異国の者とはいえ、あれほどの優良物件、この先、お嬢様が1000年生きても出会えませんよ。」

「という事で、作戦変更ですね。不肖エレナがミナお嬢様とユータ様を見事似合いのカップルに仕立て上げてみせます。」

"パンッ"と手を叩いてエレナが立ち上がる。


張り切るエレナをよそに、本心を見抜かれたミナは一人悶えていた。

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