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46話

誤字報告ありがとうございます。

 武闘大会から6カ月が経過した、学院入学からは2年経過したことになる。俺はもう少しで15歳になる。


 あの後、学院には普通に通うようになった。他の学院生やリリアーナ様とギクシャクするかな? と思ったがあまりそういう風にはならなかった。最初こそ若干の気まずさは在ったがそれも数日すればなくなった。


 リリアーナ様は大会の為に学院を休んで修行していたそうで、授業についていくのが大変そうだった。結局それを助ける形で元の友人のような関係に戻った。それに最近はリリアーナ様の黒い噂は聞かない。むしろ、一生懸命勉強に打ち込んでいるように見える。まぁ、俺は既に人妻ならぬ人夫(ひとおっと)だ、今更ミナお嬢様に色々しても意味はないと考えているんだろう。


 ミナお嬢様との結婚だが、今から3か月前に行われた。ミナお嬢様は怪我が治ったらすぐにするつもりだったらしいが、いろいろ準備が必要になった為、結局、予定より2カ月延期して行われた。その準備の一つが俺と王家との猶子(ゆうし)の件だ、猶子とは養子よりも(ゆる)い親子関係を結ぶ制度の事で、日本だと豊臣秀吉が関白の近衛前久の猶子になって、関白に就任したのが割と有名な話だ。


 つまり、俺は王家の子供として、正確には陛下の子供として、トピカ家に婿に行くことになった。最初はなんの冗談かと思ったが、少しでも俺の立場を良くしたいとの事らしい。少しって陛下の子供なら少しだけの騒ぎではないだろう。まぁ、子供と言っても相続権等は全くない形だけのものだ、それに王家側としても代々尽くしてくれている子爵家とここらで何らかの繋がりを作った方が良いと考えたのかもしれない。


 陛下には"このまま婿に行かずにずっと城に居てもよいぞ"と冗談を言われた。それをやんわりかわしてお礼を言った。ちなみに陛下は50代のふくよかな女性だ、静かに話し、一つ一つの動作はゆっくりだが品があり、また、内から出てくる威厳のようなものがある。俺のような作り物とは違う。なるほど王とはこういう雰囲気を持つのかと妙に納得した。


 俺は14歳で結婚した事になる。この国では珍しくない、少し早いかなという程度の歳だ、この国の女性は15歳前後で成人の儀式を行う。ミナお嬢様は既に成人している。男性の方は成人の儀式すらない。強いて言えば子供を作れるようになった時から成人扱いされる。そんな感じだ。


 結婚は式自体はなく身内の前で儀式のようなものをして終わり。ミナお嬢様は申し訳なさそうにしていたが、盛大に式をやられてもめんどくさいと思う性格なので寧ろありがたかった。儀式の後にはお披露目会があった。トピカ家の人とその知り合いの内でごく親しい人を呼んで開かれた物だ。それでも50人近くの人が参加した。あれっ?これって結婚式なのではと一瞬考えたが、どうもミナお嬢様の考える結婚式と俺の考える結婚式では認識に差があるらしい。


 嬉しかったのはカストー様、商人のカインさんが祝ってくれた事だ。久しぶりに会ったカストー様は俺の事を"ユータ様"と呼ぼうとした。王家の猶子になった影響だろう。だけど、くすぐったいので今まで通り"ユータ"と呼んでもらう事にした。代わりに俺の方が"カストー様"を呼び捨てするようになった。お互い名前で呼ぶようになり、より深く友人になれた気分だ。


 そのカストーは侯爵家ではそれなりに大切にされているらしい。お相手の侯爵様も懐妊したらしく地位も万全だ。それにダイエットはずっと続けていたそうで、痩せてイケメンになってきた。これなら周りもほっとかないだろう。そう聞いたら、カストーは周りの自分を見る目が怖いと言っていた。なるほど女性恐怖症はまだ治っていない感じか、それにカストーは痩せた事により弱気な青年っぽいイメージがある。侯爵様は懐妊中、女性の前でオドオドする青年、次は自分の番だと、さぞかし周りの女性の嗜虐心(しぎゃくしん)を刺激するだろう。そう考えると猛獣の檻の中に放り込まれた生肉と言えなくもない。ご愁傷さまです。


 カインさんは染色技術の件で今も忙しいそうだ。王都や他の都市でも石鹸や簡易ナプキンが広がってきたこともあり、淡い色の服はどこに持って行っても売れる。それにカインさんの商隊はトピカ領から石鹸やシャンプーの販売を請け負っている為、そちらでも忙しいらしい。話を聞くところによるとここ2年で商売の規模は30倍以上になったとの事。ア〇ゾンもビックリの成長率だな。蛇足だが成長した分周りにいる女性の数も増えたらしい。今では20人近くと関係を持っているらしい。ふむ、商売で成長するたびにツヤツヤになる。しかし同時に周りの女性が増えてシワシワになる。その繰り返しかな。そっちの方でも忙しそうだな。お悔みを申し上げます。


 結婚はつつがなく行われいつもの日常に戻った・・・・。という風にはなりませんでした。まず、ミナお嬢様が懐妊した。やる事をやっているのだからそうなるだろう。続いて、エレナさんとソフィアさんも懐妊した。うん、日本なら、投げっぱなしのジャーマンからそのまま紐なしバンジーさせられても文句を言えないような鬼畜の所業ですね。あ、俺が年中発情期ってのはバレました。誤魔化そうと頑張ったんだけどね。無理でした。だって、キスすると隠蔽解けるんだよ。どうみても()んでますよね。


 まぁ、バレたといっても3人だけだ。という事で3人とは協定を結びました。行為を少しだけ御自重して頂く、いわゆるエロ協定ですね。馬鹿らしいと思うのでしょう。しかし、必要なのです。この世界の女性はパワフルだから自重してもらわないとこっちが先に壊れてしまいます。行為自体は気持ちいのですが、魔力とアレが体からスゥーと抜けていくのが分かり、意識がブラックアウトしそうになる。うん、何度もやると絶対馬鹿になるやつですね。いらない情報でしたか。


 後は行為と言えばレナスタシア様ですね。あの人って、"アレ"をスポーツか何かと勘違いしているのじゃないかと思う。いい汗かきましたね。そんな感じです。あの人だけには年中発情期とバレてはいけない気がする。バレたら死亡確定です。ご臨終です。


 ミナお嬢様は妊娠しても普通に学院に通っている。この国では学院生が懐妊するというのは別に珍しくない。ここら辺は女性社会ならではなのだろう。学院生の多くは貴族だし、年齢もまちまちで結婚している人も多い。当然、そこら辺のサポートもきちんとしている。何と言うかこういう所は日本よりも進んでるんじゃないかと時々思う。


 幽閉中に描いていた図面の件だが、取り敢えず、形になりそうなのは缶詰、伝声管、後は、機械式計算機だ、もっとも単純にこれらに力をいれて先に開発したというのが正しい。まず、板金を大量に作れるようになったので、試作として缶詰を作った。缶詰は板金の深絞り加工が出来ないので、底、蓋、胴、が分かれている形式だ。その内、深絞りが出来るようになれば、底と胴を一体にしようと考えている。溶接、メッキの方法なんかも工夫したいところだ。


 伝声管は戦前の船なんかではよく使われていた通話装置でラッパ状の漏斗(ろうと)に細長い管がついており、そこに向かって声を出すと、反対側にある漏斗から声が出てくるという単純な仕組みの物だ。糸電話の進化版だと思ってもらえればいい。工夫としては鉄管は土の中を通すつもりなので、水抜き穴を設ける事、音の減衰を防ぐために表面を滑らかにする事、曲げる部分ではRを大きくする事、錆止め加工の方法などだな。伝達出来る距離だが、50mは余裕でいけそうだった。距離をどれだけ伸ばせるかが勝負だな。


 機械式計算機はそのままで、歯車機構を利用した計算機だ。大きさは黒電話を少し大きくしたぐらいで、使い方を覚える必要はあるが、8桁の足し算、引き算、掛け算、割り算ができる優れ物だ。日本ではソロバンと電卓の間の時代の計算機として活躍していた。実は機械式計算機は昔、夏休みの自由工作で作った事があった。もっともその時は段ボールで作ったもので、足し算と引き算しかできず、計算も3回に1回ぐらいしか合わなかったお粗末な物だった。まぁ、そのお陰で機構部分の構造は当時を思い出すだけでよかった。


 ミナスタシア様は学院を卒業すると同時にトピカ男爵(・・)領の領主になる事が内定している。伝声管は広い建物などで情報の伝達をするのに役に立つし、機械式計算機は税や土木、建築などの煩雑な計算をするの場面で役に立つ、缶詰は新しい領地の特産品として販売できるだろう。


 そういえば、トピカ男爵領と言えば、レナスタシア様も官吏(かんり)として、付いてくるらしい。ずっと不思議に思っていたのだが、ミナお嬢様がトピカ男爵領の領主になると聞いた時、レナスタシア様は全く反対しなかった。順番から言えば次女のレナスタシア様が領主になってもおかしくはなかったはずだ…。最初はコンコード家の事があったから遠慮したのだと思っていた、だけど、領主になれるかなれないかは、貴族の子供としては最大の関心事だろう。流石に全く反対しないのは違和感がある。う~ん、まぁ、あの人の事は考えても仕方ない気がする。


 この世界の男は力がない。その事を恨んだこともあった。だけど、弱いなら弱いなりの戦い方をするしか無い。


 不良少女に誘拐され、本家預かりになりそうになったり、王家に幽閉されたり、色々とトラブルに巻き込まれた。だけど、足掻いたからその先にミナお嬢様達と笑って生きていける道があったのだろう。


 新しい領地ではトラブルなく、せめて平和に生活できる事を願うばかりである。

本編完です。エピローグは2021年10月09日(土)です。どうでもいい、おまけ1話上げます。

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