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38話~ミナスタシア視点~

 ユータがコンコード邸に遊びに行っている間、寮の食堂で、あいも変わらず3人の女性が話をしていた。


「ファンクラブ?そんなものがあるのですか?」

エレナが調子の外れた声で言った。


「あるぞ、それも一つや二つではない。派閥ごとに存在する。把握しているだけで10グループぐらいだな。一つのファンクラブの人数も様々だ、大体5人から20人という感じだな。」

ミナが答えた。


「ユータ ラブの人達なんですよね。何故、分かれているのでしょう?」


「それが、貴族という生き物なのだ・・・、と言いたいが派閥ごとにファンクラブがあるのにはきちんと理由がある。」

ミナが続ける。

「仮にだ、ファンクラブの一人がうまくやって、ユータと結婚できたとする。するとなし崩し的にグループ全員がユータと関係を持つことが出来ると考えてるのだ。本人達はファンクラブと言っているが、ユータに関する運命共同体と言った方が良いかもな。」


「それは何とも考えそうな事ですね。単純にユータを囲みたい人達が派閥に別れて徒党を組んでいるだけですよね。」

エレナがため息をつきながら言う。


「まぁ、そうだな。表立って言う事は出来ないから、ファンクラブという名目にしているのだろう。ただ幸いなのは、お互いに牽制し合っている為か、揉め事は驚くほど少ないという事だ。ちなみに、私も誘われたぞ」

うんざりといった表情でミナが言った。


「ミナお嬢様もですか?」


「そうだ、ユータがトピカ領の客分で、私と同じ館に住んでいるのは、皆知っているからな。どうみても有力候補だろう。」


「有力候補と言うか、既に"枕を交わした仲"ですよね。」


「「「・・・・・・」」」


「・・・お前 今、変な事考えただろう。」

妙な沈黙の後、ミナが口を開いた。


「ユータの発情期そろそろのはずですよね。」

エレナが頬に手を当てて静かに言った。


「お前は下半身の事しか考えていないのか。」

ミナが肩を(すく)めながら言った。


「女ですもの。」

エレナは悪びれず言う。


「言っておくが、仮に発情期が来ても今回は何もしないぞ。」

ミナが釘を刺す。


「そんなぁ、もう我慢する必要はないでしょう?」


「ダメに決まっておるだろう。前回は流され過ぎた。欲望に負けて一義に及ぶなど獣と変わらんではないか。」


「いまさら、取り繕っても同じですよ。」


「うっ、何と言おうとダメだぞ。」


「良いですか、ミナお嬢様。」

エレナが人差し指を立てて言う。


「何だ?」


「ユータはかわいいですよね?」


「そうだな。」


「それにカッコいいですよね?」


「そんなの今更だろう。」


「そして、最近、大人になりつつある。子供と大人の狭間の一瞬の美しさは、この間にしかないのですよ。それをみすみす見逃すなんて出来ましょうか?いや出来ない。」

エレナが続ける。

「それにユータを組み敷いて。切ない表情で"お姉ちゃん"と連呼されると、背徳と慈愛の感情で頭が沸騰しそうなぐらい幸せな気分になるのに、それが出来ないなんて。ううう。」

顔を伏せたエレナが"チラッチラッ"とミナの方を見ながら言った。


「ええい、うっとおしい。誰が性癖を披露しろと言った。」

ミナがツッコむ。


「エレナさん、それは違うぞ。」

ソフィアが会話に入ってくる。


「ソフィアさん、どういう事ですか?」


「ユータさんは攻めにこそ、その本領が発揮される。」


「ふむ」

エレナが良く分からないといった感じで、曖昧に相槌を打つ。


「ソフィア?」

ミナは困惑顔だ。


「言葉攻め、そして10歳以上も年下の弱い男に上に乗られて攻められる。そんな敗北感が快楽へ繋がるスパイスとなる。エレナさんなら分かるだろう。」


「・・・・わかる。」


「私、分かります。そんなプレイを思いつくなんて、ソフィアさん、ド変態ですね。」

エレナとソフィアが"ガシッ"と握手をした後、ミナの方を向いた。


「言っておくが、私の性癖はいたってノーマルだぞ。せいぜい学院服や執事服を着せたり女装させたりするぐらいだな。」


「ミ、ミナお嬢様、何て事を考えるのですか。」

エレナが悄然(しょうぜん)と言った。


「天才の発想ですね。」

ソフィアも言う。


「いや、普通思いつくだろう?」


「「ないですよ(ね)」」

エレナとソフィアの声が重なる。


「はぁ、まぁ、猥談はもういい。お前たちの気持も分かる。私だって残念だ。しかし、今回は本当にダメだ。それにユータが今、やっていることがうまくいけば、結婚を早める事ができるかもしれん。」


「ユータがやっていること?ワイヤー作りですか?」


「そっちではない、カストー・コンコード様の事だな。」


「そういえば、ユータは今、コンコード家の別邸に行っている様ですが、大丈夫なのですか?危害を加えられたりするのでは?」

エレナが心配そうに言った。


「そっちは大丈夫だ。確執があったとは言え 友好関係にある家だ、ユータに害をなすような馬鹿な真似はせんだろう。それに、トピカ領が交易面で優遇しているおかげで、コンコード家はかなりの利益を得ている。問題を起こしたくないと考えているのは、むしろ向こう側だろう。」


「なるほど、それでユータはカストー様の事で何をしようとしているのでしょう?」

エレナが本題に戻す。


「あれに婚約相手を見つけると言ってたな。ユータはカストー様に負い目があるようだな、全くそんなの気にしないで良いのに」

ミナがため息をつきながら言った。


「カストー様って、"あまり結婚したくないタイプ"と以前ミナお嬢様が言っていた男の人ですよね。うまくいかないのではないでしょうか。」


「そうなのだが、不思議とユータの言う事をよく聞くそうだ。家人から言い含められているのかも知れん。評判についてもそこそこ良くなってきているそうだ。」


「なるほど、うまく行くかもしれないと。」


「そうだな、成功する可能性はあるだろう。それに・・・」


「それに・・・」

エレナが相槌を打つ。


「ユータからは、私と憂いなく結婚したいとも言われた。断れんだろう。」

ミナが照れながら言う。


「かーっ、ノロケですか」

エレナがピシャリと額を叩く。


「ということでな、うまく行けば我慢の期間も短くなる。今回は辛抱するのだぞ。」


「「分かりました」」

エレナとソフィアが残念そうに返事をする。


「後は頭の痛い問題が一つある。」

ミナが憂鬱そうに言った。


「なんですか?」


「四女様の事だ。」


「四女様?リリアーナ様の事で何かあったのですか。」


「あったぞ、リトルロック公爵家が、正式にユータを譲り受けたいと言ってきた。身受け金は驚きの金貨10万枚だ。」


「金貨10万枚!えっと・・・」


「エレナが2000年働けば稼げるな。全くありがたい事だ。」


「2000年・・・途方もない額ですね。」


「それに此方を非難もしてきたぞ、本来であれば、トピカ領にたどり着いたとはいえ、東方の貴族なら、国として迎えるべき客であろう。それを独占したばかりか、下働きのようなことをさせ、あまつさえ知識を搾り取っている。国の客なら公爵家として、自分たちが預かるのが筋であろうとな。(したた)かな連中だ。」


「それで断ったのですか?」


「無論、断った。だが、公爵家が動いた以上これで終わりと言う事はあるまい。」


「厄介な事にならなければよいが・・・」

最後は誰と言う風でもなく、呟いた。

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