23話~ミナスタシア視点~
作戦を決めた日の夜、再び、女性3人が食堂に集まり話をしていた。
「上級モンスターと石鹸ですか…、うまくいくといいのですが。」
エレナが呟くように言った。
「ユータの手前、あんな風に言ったが分の悪い勝負にはなるだろうな。」
ミナが机に肘をついて、頬を手に置きながら言った。
「しかし、どうしてイザベラ様はユータを預かると言い出したのでしょう?"賭け"に負けた場合は、ミナお嬢様に婚約を認めさすだけでいいと思うのですが?」
「元々、婚約は既定路線なのだから、それでは賭けにならんではないか。それに、ユータが婚約の妨げになっている以上、取り除こうとするのは当たり前だろう。」
ミナが続ける。
「だが、案外それは建前じゃないかと私は考えている。」
「建前ですか?」
エレナが相槌を打つ。
「母上はユータが欲しくなったのかもしれん。」
「賭けに負けた場合ユータは本家預かりとなる。そうなれば持ち駒として色々使えるだろうな。戦功を挙げた部下に婿として与える。養子に迎えて他の貴族との繋がりに使う。」
「ユータの気持は無視ですか…」
「ユータだっていずれは結婚せねばなるまい。最初は抵抗しててもいずれ絆されるだろう。あるいは…」
「あるいは、何ですか?」
「母上はユータを自分の男にしようとしてるのかもしれん。」
「まさか!どれほど歳が離れていると思っているのですか?」
「私も馬鹿らしいとは思うが、母上は芯の強い男が好きだと、聞いたことがある。」
「父上と死別して十数年、操は十分に建てた、男の一人や二人作っても問題ないだろうと考えていてもおかしくはない。」
「芯が強い男ですか、確かにユータは意外にそういう所はありますね。」
「そうだな。出迎えの時もあれほど母上に見られれば思わず、視線を下げてもおかしくはない。グスタに絡まれた時も、賭けの話をしていた時も、筋は曲げていないだろう。」
「それにあの容姿だ、女なら自分の男にしたいと言うのは当然の欲求だろう。」
「なんですか?つまりこういう事ですか?」
エレナがシナを作りながら話す。
「ユータそろそろ例の話の答えは出たか?」
「例の話とは、何のことでしょう?」
「決まっておろう、私の愛人になるという話だ」
「その話ならお断りしたはずです。」
「そう邪険にするな、それに体の方は既に準備ができておろう。」
「ああ、ご領主様お止めになってください。」
「止めろという割にここはこんなに膨らんでいるが?」
「そ、それはただの生理現象です。」
「ほう、では本当にただの生理現象か試してやろう。」
「ああ、そんな、ご領主様、そこは…、ダメです、ああっ!」
「淫靡な行為が続く日々、段々と光を失うユータの瞳」
「やがて、身も心もイザベラ様に服従し…」
「まあっ!どうしましょう、ミナお嬢様」
エレナが"ガバッ"と顔を上げながら言った。
「「・・・・・・」」
「なにがだ?」
ミナが冷たい視線でエレナを見ながら相槌を打った。
「私、意外に嫌いではないかもしれません。」
「知らんわっ!」
ミナがツッコむ。
「まったく、相変わらず、お前はブレないな。まぁ良い、そんなことにならないためにもしっかりと功績を挙げなければな。」
「しかし、上級モンスターの討伐などそう簡単に出来るものなのですか?」
「その話なのだがな、先程の話し合いの時はまだ決めかねていたのだが、拠点を暫く領都に移そうと思っている。行くのは私とソフィアだけだが。」
「領都にですか?」
「そうだ、領都の方が、上級モンスターの情報を得やすかろう。勇軍を組む際も人を集めやすいしな。」
「なるほど、確かにそうですね。」
「石鹸についてはどうするのですか?」
「石鹸についてはゼウル村で作ってもらい、領都に運んで貰うつもりだ、運ぶのは前に屋敷に来てもらった商人を使う。それを領都で売る。その方が、本家にも分かりやすい形で功績を示せるだろう。」
「では、ゼウル村の代官業についてはどうするのです?ソフィアさんならともかく、私では代わりにはなれませんが?」
「代官業については、向こうでも出来るだろう。1ヵ月に1回程度は戻るつもりだし、何かあれば早馬で半日の距離だ対応できないことはない。本来なら色々な意味でもソフィアをゼウル村に残したいのだが、"賭け"の見届け人である以上そうもいくまい。」
「私達の役目は屋敷を守る事と、石鹸を作る事ですね。」
「そうだな、屋敷の警備も不安になるから、そこら辺りも併せて、色々調整するつもりだ。暫くは慌ただしくなるが、宜しく頼む。」
ミナがそう言うと、エレナとソフィアが"分かりました"と言って頷いた。




