15話
俺が、異世界に来てから、約1年が経った。この世界の1年は地球と同じで365日、1日24時間で、1週間の分け方も7日だ、但し、月の分け方だけが違う。月は13個に分ける。1月から12月までは30日間ある。13月だけ5日間しかない。この13月は、地球で言う新年の始まりにあたる月になる。13月なのに新年とは変だが、そういうもんなんだろう。
俺は11歳になった。俺がドラゴンに食われた時は33歳と6ヵ月だったから、正確には11歳6ヵ月だな。歯磨き粉がようやく安定して出来るようになった。どうやら、燃やした木の灰の種類によって、うまく固まるか固まらないかが決まるようだ。今まではゼリー状ぐらいまでしか固まらなかったのが、木灰を濃縮すれば、しっかり固まる事も分かった。まぁ、しっかり固まるといってもチーズぐらいの固さだ、一応は石鹸が出来たわけだ。まぁ、これを石鹸と呼べるかは微妙だけれども
石鹸づくりで失敗した液体は、そのまま洗剤として使えることも分かった。別に使うだけなら固体に拘る必要はなかったんだな。といっても安全な物かどうか分からないから、かなり薄めて使っている。ここら辺の濃度の調整は検討が必要だ。石鹸はお湯で薄めてシャンプーとして使っている。リンスについては水に食酢を加えて使っている。要はアルカリよりになった髪を酸性に戻せればいいだけだから、こちらはあまり難しくなかった。歯ブラシも作った、今までは麻の布で代用していたが、馬の毛を入手できたので作ることにした。もっとも、これも毛を根元で結って、木にくくりつけた簡単なやつだ。
そんな感じで、衛生面はかなり改善した。まだ、満足できるとは言えないが、気になる所はゆっくり直していくつもりだ。このシャンプーやリンスはミナお嬢様達も使っている。エレナさんは外に出るたびに、髪について聞かれるそうだ。男女の感覚が反転してても、美に対する意識はあまり変わっていないのかもしれない。ツヤツヤの髪はやっぱりいいよね。あと、髪繋がりだと散髪も定期的にするようにしている。最初は自分で切ろうと思ったんだけど、普段使える鏡はぼんやりと映るだけで難しい。なので、カットはエレナさんにお願いしている。
この世界について俺なりに調べた。まず、男女比だがゼウル村には約30人の男がいるらしい。村の人口は約600人ぐらいだから、ざっと男女比1:19だ。これはゼウル村が特殊なのではなく、どこでもこんなものらしい。男が極端に少ない理由だが、戦争とか病気とかではない。有史以来この状態が続いている。つまり、この世界はこの状態が正常という事だ。人口維持出来るのか?と思ったが、実際に出来ている以上、そういう事なんだろう。
次に男女の力関係だが、この世界は完全に女性優位社会だ。基本的には男より女の方が力も強い。戦争をするのも女性だし、政治をするのも女性。というより、外に出て働くのは女性の仕事という観念がある。じゃあ、男は何をするのかというと”ナニ"をするだけである。要は種馬だな。あとは内向きの家事労働をする場合もある。ニート思考の人には天国なのだろうが、外に出て活躍したいと思っている男にとっては地獄だな。
困っていることが1点ある。性関連の情報の入手をどうしたら良いかという事だ。馬鹿らしい悩みだと思うだろ?でも、結構、深刻な問題なんだ、日本なら学校で性教育もあるし、ネットも本もある。周りに同性の友達も沢山いる、最悪、親に聞く方法だってあるだろう。しかし、それらが俺の周りには一個もない。まさか、近くの女性達に聞くわけにもいかない。俺の知っている男の人は、商人のおっちゃんだけだ。このおっちゃんに話を聞ければいいのだが、外出するときは必ずエレナさんが一緒だし、何ならワンナがついてくることも多い。
この世界の常識が地球と同じなら問題ない。俺も日本ではそれなりにやることはやってきた。しかし、この世界の常識は地球とズレがある。拉致されたときに、不良少女が言っていたことも気になる。それに俺の地球での"男の子の日"は小6だったはずだ。この体が俺をベースにして作られている以上、この体の"男の子の日"も同じぐらいなんじゃないかと予測している。声変わりも始まったし、思った以上に余裕がない。
仕方ないので、商人のおっちゃんに話を聞きたいから屋敷に招待したいとミナお嬢様にお願いした。ミナお嬢様は最初"買い物に行ったついでに聞けばよかろう。"と言っていたが、俺が"男同士で話したいことがある。"というと、ワンナ以外の女性3人は
『あっ、察し…』
みたいな顔をしてた。
うん、いっそ、殺してくれ。
という事で、精神に多大なダメージを負ったが、商人のおっちゃんを屋敷に招くことに成功した。ちょうど今、俺の部屋に来たところだ。このおっちゃん買い物に行くたびに話すので、結構仲良くなっている。名前は"カイン"と言う。元々、服飾関連を扱う商人の息子だったそうだ、その繋がりで今の商隊をしているリーダーの女性に見染められて結婚したとの事。蛇足だが、結婚しているのはリーダーの女性だけだが、その周りの女性とも関係を持っているらしい。要はリーダーを中心とした女性の関係に男性が組み込まれる形で婚姻関係が成り立っているわけだ。見方を変えれば女性グループと男性一人が結婚したとも言えなくはない。
うん、なんとなくどうやって人口を維持しているか分かった気がする。日本なら男がゴミ野郎って罵られる場面だが、この世界は女性優位社会だ。経済的にも独立していることもあり、どちらかと言うと。女が男を囲っていると見た方が良いだろう。こういった、グループを作ることで、自分が妊娠している時は、他の女性に守ってもらえるし、男を他のグループに奪われるのを阻止できる。そんな所なんだろうな。なんというか、大らかなのか、嫉妬深いのかよく分かんない感じだな。
カインさんは代官であるミナお嬢様からの誘いなので、断れずに、嫌々、屋敷に来たのかなと思ったが、そうでも無いようだ。寧ろ、招待された事を喜んでくれているように見えた。そこら辺の事をカインさんに聞くと、カインさん自身も男性とゆっくり話す機会はあまりないそうで、この会談を楽しみにしてたそうだ。なるほど、俺も、男同士の友情は大切にしたいと思った。まぁ、俺の中身は30歳台なので、同じ30歳台同士話が合うというのもあるんだろう。そんな感じで会談は終始和やかな感じで進んだ、内容はともかく、俺もずっとあったもやもやした疑問を解消できて大満足だった。




