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14話

 俺が、助け出されて1ヵ月が経った。俺が誘拐されてた場所は、斜面に作られた塹壕みたいな場所で、入口を草で隠してしまえば、完全に他の場所と見分けがつかなくなるような所だった。


 何故、俺があそこにいるとわかったのかと言うと、こういう事らしい。エレナさんは最初俺がいないのに気が付いて慌てて探した。すぐに、近くで泣いているワンナを見つけて、俺が川に落ちたと判断し、捜索を開始した。ところが、ワンナが泣き止んだ後に、よくよく話を聞くと、俺が連れ去られたことが判明。ちなみに、ワンナは"俺が川に落ちただけ"と言えと、不良少女達に命令されていたそうだ。そうすれば、自分たちに捜査の手が回らないと考えたんだろう。


 俺が誘拐されたことを知って、ミナお嬢様は直ぐに村人全員に捜索命令を出した。ミナお嬢様も捜索に出たがったらしいが、代官として指示を出したり、報告を受ける必要があるため出来なかったらしい。この辺りの事はソフィアさんから聞いた。"取り乱した。ミナお嬢様を抑えるのは大変でしたよ。"とチクリと言われた。


 俺の捜索が始まったのはいいが、一向に見つかる気配はない。まぁ、広い山であんな場所を短期間で見つけるのは不可能に近いだろう。ワンナも捜索に加わって一生懸命俺の臭いを辿ろうとしてたのだが、出来なかったそうだ。一度、川に落ちた為、臭いが消えてしまったんだろう。


 捜索の状況が変わったのは夜だった。ワンナがダメ元で俺が引き上げられた可能性が高い川岸をもう一度嗅いだら、僅かだが、俺の臭いががある事に気が付いたらしい。その事をワンナは不思議がっていた。恐らく時間が経った為に水分が蒸発し、臭いの成分が強く出たので、追跡できるようになったんだろう。あとは簡単で、ワンナが不良少女のアジトを見つけ、エレナさんにそれを伝えたという事だ。


 助け出されたあと、俺はエレナさんにおんぶされて屋敷に帰った。別に怪我をしたわけではなかったので、歩けると言ったんだが、エレナさんが許してくれなかった。帰宅中に説教があるかと思ったが、エレナさんは何も言わなかった。


 今回の事は、俺の危機意識の無さが起こした事件でもある、異世界の常識を知らなかったと言えば、それまでなのだが、この世界に来てどこかフワフワした気持ちがあったのは事実だ、知ろうと思えばチャンスはいくらでもあったはずだ。


 不良少女達の処分については、思うところはあまりない。被害者の立場からみたら軽すぎる気がするが、若いころの3年だ、それを考えると厳しい処分とも言えなくない。日本の法律を知っているため、それに引きづられている面もあると思う。


 身の周りで変わったことと言えば、お見舞いがやたら増えた事だ、お見舞いと言っても、俺は次の日から普通に働いていたので、どちらかと言えば、見物に近いだろう。ミナお嬢様は、最初断ってくれていたが、変に隠すと、逆に良くない気がして受ける事にした。それに、犯罪に巻き込まれたとはいえ、色んな方面に迷惑をかけたのは事実だ、そこはしっかり対応したかった。お見舞いに来てくれた人には、ニッコリ笑ってお礼をいう。味方は増やしておいて損がないからだ。目指せ、愛想のいいパンダだな。


 館で新しく雇われた獣人の少女 ワンナは俺の下に付けられることになった。ワンナには俺の事を"お兄ちゃん"と呼ばせることにしている。別に変な趣味があるわけじゃないぞ、エレナさんの教育方針を真似しただけだ、ワンナは嫌がるかなと思ったがそうでもないように見える。呼び方一つでそこまで変わらないだろうと思っていたが、そうでも無かった。本当の妹のように思う事で、厳しくもできるし、親身にもなれる。形だけ整えても、仕方ないが、形から入る事は意外に重要だった。エレナさんも同じように感じたのだろうか?


 この世界の常識について、1ヵ月経っても消化できていない部分は多々ある。ミナお嬢様についても、打算で俺に優しくしてくれていた部分もあるだろう。しかし、それはお互い様なので気にしないことにした。ミナお嬢様達が俺を大切に思ってくれているのは態度で分かる。それに、俺もミナお嬢様達を大切にしたいと思ってる。男女の感覚が逆転した、ヘンテコな世界だけど、彼女らに巡り合わせてくれた事だけは女神に感謝したい。

一章完です。二章は1ヵ月後ぐらいです。どうでもいい、おまけ1話上げます。

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