13話~ミナスタシア視点~
「何故、あれだけの事をやって、たった3年なのですか!死刑でも足りません。」
椅子を引いて立ち上がりながら、食堂でエレナが叫ぶ。
「あんまり、大きい声を出すでない。ユータが起きるではないか。」
ミナが続ける。
「ソフィアと相談した結果だ、3年より上の強制労働を科そうとすると、本家の判断を仰がねばならん。」
「仰げばいいじゃないですか!」
「そうすると間違いなく、裁判になる。」
「いろんな連中にユータを奇異の視線にさらすことになるぞ、腹の痣も見せることになるだろう、くだらん政争の材料にされるかもしれん。」
「だから、3年の強制労働だ、代官権限で与えられる最も厳しい処罰だな。」
「・・・・・」
「そんな顔するな、エレナ、悔しいのは私とソフィアも同じだ」
「・・・・・」
「それから自分を責めるのもよせ、あんなのは誰も防げん。もちろん、私もソフィアも、ユータも、誰もお前を責めておらん。」
エレナが顔を上げる。それを見て、ミナがソフィアに顔を向ける。ソフィアが頷くと話だした。
「それから、"ワンナ"という少女の罪については、処分保留としました。実質、無罪という事です。」
ソフィアが続ける。
「但し、保護観察の名目で、屋敷に雇い入れる事にしました。」
「・・・理由だけ聞かせてください。」
エレナが言う。
「処分保留については、単に利用されていたと考えたからだ、むろん、だからと言って罪が消えるわけではないが、年齢から考えて処分するのは妥当ではないと判断した。」
ミナが続ける。
「次に雇い入れる理由だが、2つある。」
「一つ目は単純に危険だと判断した。あれだけ鼻が効くということは、私たちには見えていないものが見えているという事だ。悪用される前に取り込むことにした。」
「二つ目はユータの為だな、今回の事でユータの事が村中に知れ渡ってしまった。不良どもの処分も軽いものになる。となると、よからぬ事を考える連中が他にも出てくる可能性は十分にある。ワンナの鼻があれば、事前に防げる可能性も高まるし、今回のように攫われた場合でも追跡できる可能性はある。」
「・・・いいのですか、ミナお嬢様?」
エレナが言う。
「む、何がだ?」
「あの、ワンナという少女意外に曲者かもしれませんよ。」
エレナが続ける。
「無垢なふりしてユータに近づいて、パックンチョしちゃうなんて事もありえますからね。」
「まさか、まだ、6歳の子供だぞ」
「分かりませんよ~、女はみんな狼ですからね。」
「「ぷっ」」
「調子が出て来たじゃないかエレナ。」
「まぁ、いつまでもプリプリしてても仕方ないですからね。それに私は一歩リードしてますし。」
「何の話だ?」
「不可抗力とはいえ、私はユータの生まれたままの姿を見てしまいましたからね。」
エレナは続ける。
「ああ、ご心配なく、ユータの果実はしっかりと成長してましたから。」
「・・・・・」
「それに、私はピンチに颯爽と現れて、ユータを助け出しましたからね。ユータもきっと私に、ゾッコンラブの筈です。一線を超えるのも時間の問題ですね。」
「・・・・・」
「お前、私とユータの結婚を応援するって言っていなかったか?」
ミナがジト目でエレナを見ながら言う。
「結婚は応援するといいましたが、下半身の事を応援するとは言ってませんよ。」
エレナが続ける。
「ミナお嬢様はユータの上半身と結婚する。私はユータの下半身と結合する。それでいいじゃないですか。」
「おい、調子が出すぎだ、下品が過ぎるぞ。」
いつも通り、ミナがツッコんで、女性達の会話は終了した。




