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11話

誤字報告ありがとうございます。

 出鼻をいきなり挫かれた気分だが、俺とエレナさんはミナお嬢様達に見送られて、村の中央部に向かった。村の中央部は屋敷から600mぐらいの距離だそうだ。人口600人の村だから、もっと小さいのかと思ったら意外に大きい。エレナさんは何故か途中から手を繋いできた。ぶんぶん手を振って放して欲しいとの意思表示をしたのだが、放してくれないので諦めた。傍にいろとは言われたが、手を繋げとは言われてないのだけど。反対側の手には風呂敷を持っていて、商人達に売るものが入っているらしい。ちなみに隣にいても風呂敷からは変な臭いがするのが分かる。怖いので中身が何か聞いていない。


 道中の街並みは、普通の田舎の村といった感じだった。木で建てられた家が多い、俺がお世話になっているゼウロ村は林業が主産業だから、その辺りも影響しているのだろう。ただ、石造りの家もちらほらある。道を歩いていると、エレナさんに声をかけてくる人は多い、驚いたのは獣人も普通にいる事だ、見た感じ話しかけてくる人の半分は獣人だ、みんな市場に向かっている。話かけてくる人に"あら姉妹みたいね。"とよく言われる、似てないのに何故だろう?まぁ、"みたいね"だから、姉妹みたいに仲が良く見えるという事なんだろう。俺にも声をかけてくる人はいる。ニッコリ笑って自己紹介をする。もっとも家名は使うなと言われてるので、名前を名乗るだけだ。


 自己紹介した後は、エレナさんの井戸端会議が終わるのを待つだけなので手持ち無沙汰になる。ふと、横を見たらエレナさんが持っている風呂敷の臭いを嗅いでいる獣人の少女がいた。犬っぽい見た目をしている。年齢は5,6歳ぐらいだろう。臭くないのだろうか?一通り臭いを嗅いで納得したのだろうか?今度は俺の方に来て、俺の臭いを嗅いでいる。あの風呂敷と同じ臭いがすると思われているなら心外だ。特に害もないので放っておいた。というか、モフモフしたい。


「おい、"ワンナ"何でも臭いを()ぐ癖を止めろと言っただろ。」


声がしたのでそちらを見ると不良っぽい少女がいた。此方は猫の獣人ぽい。猫の獣人はワンナと呼ばれた少女の手を取って去っていった。何か一言 言われるかなと思ったが、睨まれただけだった。


 エレナさんが話しかけられるたびに雑談が始まるため、市場に付くまでにかなりの時間がかかった。市場には既に20人ぐらいの客がいた。今回は3台の馬車が来ているそうだ。村の中央部っていうから、賑わっているかと思ったら、街道沿いに広場が広がっているだけだった。街道の横には大きい川が流れている。この川を使って木材を運んでいるのかもしれない。客が見やすいように、馬車から品物を出して置いているが、市場というより、イメージ的には日本の移動販売に近い気がした。


 商人は男性が1人いただけで、残りは全員女性だった。何気に異世界に来て初めて会う男だなと思って見ていたら。目があった。一瞬此方をみて、驚いた顔をしたが、すぐに興味がなくなったのか視線を逸らした。見た目は30代の男性なのだが、何故か干からびた昆布を思い出した。全員嫁ならハーレムなのになとか思ったが、普通に子供もいたから違うだろう。あれ、そうするとこの人たちどういう集まり何だろう?少し、気になったが、さすがに人間関係を聞くのは無粋なので止めておいた。


 出された商品は小麦、干し芋、豆、塩、油、衣類、日用品と基本的に日持ちがするものが殆どだ。武器も扱っているっぽい。エレナさんは風呂敷の中身を銀貨300枚と交換していた。俺の給料の3か月分、驚愕だ。見た感じ鹿の角みたいなものだった。商人はそれを受け取って喜んでいた。余程価値のあるものなのだろう。俺は何か面白いものがないかなと、並べられた商品を見てたら。不意に服の裾が引っ張られた。見ると、さっき見た"ワンナ"と呼ばれた獣人の少女がいた。


「あのね、ワンナと来て欲しいの。」


俺が不思議に思っていると、街道の横の川を指さした。川の方に来て欲しいという事だろうか?何かオドオドしているように見える。川に何か落としたのかもしれない。エレナさんを見ると商人とまだ話をしていた。川と街道は並行して居る為、距離は殆どない。これくらいなら大丈夫だと思い。俺はワンナの後をついていった。ワンナと川辺に立つ、水の流れは穏やかだが、濁っているため、ここに落とし物をしたら見つからないだろう。深さは分からない。ワンナに話しかけようと、そちらを向いたとき、不意に足が引っ張られて、そのまま、声も出せずに、俺は川に引きずり込まれた。

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