9話~ミナスタシア視点~
夕食後、あいもかわらず、屋敷の食堂に3人の女性が集まって、話をしていた。
(ジー)
ミナスタシアはエレナを見ている。
(ジー)
ミナスタシアはエレナを見ている。
「羨ましいのですね?」
ポツリとエレナが言う。
「むっ、何がだ?」
「私が、ユータに"お姉ちゃん"と呼ばれている事がです。」
「むう。それは少し、いや、かなり羨ましいぞ。というか私も呼ばれてみたいぞ」
「ミナお嬢様、段々、本性を隠さなくなってきましたね。」
「そもそも、お前、どうやってユータを丸め込んだんだ」
「それは、秘密です。」
エレナが人差し指を唇に当てながら言う。
「ミナお嬢様も"お姉ちゃん"と呼ばれたいならユータにそう言ったらどうですか?」
「そんなこと言えるか!」
ミナが続ける。
「ところで、"お姉ちゃん"と呼ばれるのはどんな感じなのだ?」
「そうですね、子宮の内側から体全体に幸福感が広がって、これが"母性"って気が付くのです。そして、無性にキスがしたくなります。なんなら、その先も…」
「生々しいわ!」
ミナがツッコむ。
「ですが、ミナお嬢様もなかなかやるじゃないですか。」
「なんの話だ。」
「ユータの背中を拭いた件ですよ。駄々をコネて、ユータは大分、困っていましたよ。」
「駄々などコネておらん。」
「いいじゃないですか、スキンシップを増やしていくことが大事なのです。そうやって、いい雰囲気になったときに『えいっ』て押し倒せれば、完璧です。」
「大体お前、処女だろう、そういうのはどこで知るのだ?」
ジト目でエレナを見ながらミナが言う。
「母親に聞いたり、あとは、女同士の情報交換とかですね。」
「母親とそんな話するのか?」
「ミナお嬢様は一応貴族ですからね。結婚相手は親が探してくれるかもしれませんが、平民は男を得るためには手段を選べないのですよ。」
「一応は余計だ、もう良い、そろそろ本題に入ろう。」
ミナがゴホンと喉を鳴らす。
「今日は、本家への報告とユータの市民権をどうするかについて話す。」
「本家への報告はユータの事ですね?」
「そうだな、正式に雇う以上、報告せねばなるまい。」
「"男"という事も報告するのですか?」
「むろん書く、後でバレたら怖いからな。」
「ミナお嬢様、意外にチキンですね。」
「うるさい、定例の報告があるから、そこに潜り込ませるように書くつもりだ。うまくいけば見落としてくれるだろう。」
「ミナお嬢様、意外に卑怯ですね。」
「うるさい、こういうのは駆け引きというのだ、見落とす分には向こうが悪いのだからな。」
「そういうものですか?」
「そういうものだ、次に市民権だな、幸いユータは10歳だ急ぐこともなかろう。折を見て母上に頼むつもりだ。」
「普通、市民権を得るにはどういう場合があるのですか?」
エレナが質問する。
「ソフィア説明を頼めるか?」
ミナがソフィアの方を向いて言った。
「わかりました。説明させて頂きます。」
ソフィアが続ける。
「市民権を得るためには貴族が推薦して、議会に認められる場合と、議会が直接承認する場合があります。」
「我々がやろうとしているのは貴族の推薦ですので、こちらについて説明します。」
「貴族の推薦は毎年行われて、ほぼ100%認められます。認められないのは直前に死亡したとか、犯罪を犯したとかの場合ですね。数も多く一つ一つ調べれないというのもあります。」
「推薦に選ばれる方法は特に決まっていませんが、奴隷が戦功を上げる、商人・農奴が金を積み上げる、あるいは住みついて一定期間以上経過した者、等が一般的です。」
「ふむ、ありがとう、ソフィア」
ミナが言う。
「ユータは推薦要件のどれにもあたりそうにありませんね。」
エレナが言う。
「金を積むのは出来そうだが、前提としてやはり一定の信頼は必要だしな。ただ、ユータは家名持ちで、所作も完璧だ、男という事もあり市民権は得やすいと思う。」
ミナが続ける。
「なので、私は"東の国の元貴族に相応しい待遇を与える"という名目で行こうと考えている。これについて意見を聞きたい。」
「・・・・」
「方針としてはいいかと思います。」
ソフィアが言った。
「ただ、元貴族というのは証明が難しいのでは?」
「やはりそこか、何か良い考えがあればいいのだが」
「まぁ、いいじゃありませんか、大筋の方向性は決まったという事で、良い考えが出れば、採用するという事で行きましょう。」
エレナがまとめる。
「そうだな、幸いまだ時間はあることだしな。次の課題として持ち越すとしよう。」
そうして、女性達の会話は終了した。




