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2.変な美人ビースト

 東の国「イースト」

 ここは、人間界と亜人界の入り口がある国で、他の三つの国とは違い四季があるのが特徴的な国だ。

 そして、亜人界の入り口があるということで、この国には、エルフ、ドワーフ、ビーストなどの亜人がいろんな国に行くための通路にしている。

 中には、一番危険のないこの国で永住する亜人もいるらしい。

 そんな国の中でも最も大きな都市「グランデ」に俺は来ていた。

 来た、というよりは飛ばされたんだけどな……。

 かちゃりとコップに入れられた氷が、飲み干されたエールを継ぎ足してくれとでも言いかねない寂しさを放っている。

 俺は、からのジョッキの傍に銀貨二枚を置いて、酒場から出ていく。


「はぁ……これからどうすればいいんだよ、手持ちのお金もいつかは底をつくぞ」


 まぁ、どうすればいいって、働けばいいんだろうけどな……。

 働くにしたって、商売とかじゃ、俺に商才があるとは思えないし。

 普通にダンジョン教会の職員として働くのもなんか忙しそうで嫌だし。

 国の兵士とかは論外だし。


「やっぱり、探索者としてまたダンジョンのある街まで旅していくしかないよな……」


 俺はとにかく楽して生きたい、ダンジョン探索者で大きな成果を上げて、ダンジョン教会からの支援金でウハウハの生活を送っていきたかったのに……。

 あの野郎ども、後少しで『陸のダンジョン』の攻略ができそうだったのに、後少しってところで俺を見捨てやがって!

 絶対に後悔させてやるからな。

 そんな事を考えながら、適当に歩いていたら、ダンジョン教会イースト支部の入り口に立っていた。


「とりあえず、何か割のいい依頼がないか探すか」

 

 俺は、ダンジョン教会の入り口付近にある掲示板を見つめる。

 

『我が家の子犬が逃げてしまった! 探索系の恩恵・スキル・魔法をお持ちの探索者を急募!」


『亜人界にある果物の採取、尚 通行料などは自腹となります」


『あなたもダンジョン教会で働きませんか? 楽しい仲間がたくさんいますよ! ※注これは個人の意見であります』


 なんだこれ……いや確かにイーストの近くにはダンジョンがないからモンスターがあまりいないけどさ……コブリンの討伐依頼くらいあってもいいだろうよ……。

 どんだけ平和なんだよこの国、ってか最後の依頼だけは平和じゃないな。


「はぁ……ろくな依頼がないな~」


 やっぱりこの国を出て、ダンジョンが近くにある国に行ったほうがいいかもなぁ。

 とぼとぼと歩いていく俺。

 空模様が夕焼けになってきた辺りで、いい加減今日の宿を探さなければと思い……安宿を探していると……。


「やっ! やめてください! 治安署に報告しますよ!」


「へっへっへ、報告してみろよ」


「兄貴こいつ、かなりいい女ですぜ」


「あぁ、やっぱり女は胸とケツが大きいほうに限るな」


「誰のケツがでかいですって! このセクハラ男どもが!」


 なんか、気の強い美人で猫のビーストをガラの悪そうな三人の人間が囲んでいる。

 路地裏でそんなことをしている彼らを見ていたら、美人のビーストと目があった。


「あっ! そこの人助けて! それか近くの治安署に行ってこのことを報告して!」


 俺は、必死に助けを求めてくるビーストの女性のほうに行く。

 男達が俺を見て、怪訝な顔をすると一人が俺に掴みかかってきた。


「なんだよ、あんちゃん、あっちに行きな」


 俺の胸ぐらをつかむ男のあご辺りに、両手を添えると、そのまま力いっぱい押す。

 男は掴んでいた手を放して、その瞬間に俺は男の右の襟と、左の袖を掴んで、足を払って地面に倒す。


「お~、かっこよく決まったな~」


「な、なんだこいつ探索者か!」


「おっ、正解~、君達その胸とケツがでかい美人さんから離れないとこの男みたいに倒しちゃうぞ」


「ちくしょう! こんな巨乳でケツがでかくていい女を見逃さなければいけないなんて!」


「あんたら! ケツでかいって言い過ぎよ! 全員しばかれたいの!?」


「ほらほら、ビーストの子もあんたら嫌いって叫んでるよ」


「どっちかって言うと、あんたも嫌いよ! 誰のケツがでかいですって!」


 美人に嫌われてしまった……帰るかって俺帰る所どこにもないじゃん。


「っけ、探索者が何だってんだ! オラァ!!」


 俺が少しがっかりしていると、男の一人が襲い掛かってきた。

 俺は、その男の拳を軽々と避けて、わき腹、みぞおち、テンプルの三か所を殴る。

 男は意識をなくして、先ほど倒した男に重なった。


「あと残るのはお前だけだな」


「ぐっ……こいつダンジョンの深層到達者か!」


「おっ、今の動きでそれが分かるってことは、おじさんは元探索者かな?」


「あぁ、そうだよ! なんでお前みたいなバケモノがこんな平和な国に居やがるんだ! ダンジョン探索でもしてやがれよ!」


「いやぁ~、この前パーティーのメンバーに捨てられてしまいましてね~、今絶賛無職なんだわ~」


「クソ!」


 やけくそになったらしい男が、俺に襲い掛かってくるので、蹴りを払ってから、地面すれすれで足を回して男を横倒しにしてから落ちていく男の腹に5発パンチをする。

 すると、男がゲロ吐いて、腹を押さえながら地面にバタンっと落ちる。


「よし、いっちょ上がり~」


 俺が、手を払ってその場を去ろうとすると、あの、と後ろから声をかけられる。

 振り向くと、美人のビーストが手をわしわしとさせていた。


「ありがとうございます」


「おう、んじゃな~あっ、そこの男達をどうするかはお前に任せる」


「お前じゃないです……グレーデンス家のイリス・グレーデンスです」


「お、おう……そうか」


「あの、貴方は?」


「俺は、アラン・ローウェン、まぁ……さっきは無職とか言ったけど一応探索者だ」


「アランさん、このお礼はいつかさせていただきます」


 イリスはそう言うと笑ってから、お辞儀をする。


「あぁ、そういうのいいから」


 俺はそう言ってから、立ち去ろうとすると、イリスが俺の目の前まで走ってきた。


「いいえ、助けてもらったものとして、礼はちゃんとしなくては」


「ええ~」


 なんかこれ、このままじゃ解放してくれない雰囲気だなぁ……。


「じゃあ、今度ご飯でも奢ってよ、もうしばらくこの都市にはいるつもりだからさ」


「分かりました! それでは明日の昼にダンジョン教会付近の噴水で待ち合わせでいいですか?」


「お、おういいぞ」


「あっ、それと~」


「ん?」


 イリスが拳を握ると、その拳を俺の腹目がけて殴ってきた。


「ウグッ!」


「これで先ほど、私のお尻がでかいとか言ったセクハラ発言を無しにしてあげます、ではまた明日~」


 結構深く入った右ストレートで苦しむ俺は、さよならどころじゃなかった……。

 とんでもないやつに出会ったなぁ~。

 


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