25.お前ら、また来たのか。バカなのか?
カヤは果物カゴを両手に下げて宙を飛んでいた。
ミロッキーならぬミロクが用意してくれたものだ。
試しにミロクに「ミロッキーさん」と呼び掛けたら、珍しくイヤな顔をされたので、カヤはすぐに謝ってこのニックネームを封印した。
「お見舞いに行くのに手ぶらってわけにはいかないでしょ」
そう、お見舞い。
これからカヤはくーまとかーらの病床を訪ねようとしている。
ピリポ言うところのカヤカヤチームのメンバーで話しあった結果(場所はサケノハラ駅近くの公園だった。見回りを兼ねて)、そうすることにしたのだ。
本人たちから直接事情を聞く。
それが手っ取り早いという判断だ。
そしてその間に対策を練る、ということになった。
くーまとかーらを病院送りにしたのがあの三人組とは考えにくかった。
力に圧倒的な差があるのは先日のことで明らかだ。
したがって、他に第三者がいることになる。
その第三者こそピリポが言ったように悪魔ということになるのだろう。
そして実際に、ミロクの調査でその第三者がいたことは判明している。
くーまとかーらの入院先もミロクが調べ上げくれていた。
サケノハラ市内、シシドエリアの郊外にある個人病院だ。
サメタニ組とのつきあいは長いらしく、事情のある患者を診ることを裏家業としているらしい。
事情というのは有り体に言えば犯罪性であり事件性だ。
そうした背景によって負傷したと思える患者に関して医師は警察に連絡を入れなければならない。
だが、それを良しとしない患者ももちろんいるわけで、その病院はそうしたニーズに対応しているということだ。
その代わり、そのリスクに応じた報酬は要求する……。
病院に向かいながら、カヤは今回のことを整理してみる。
事件が起きたのは昨夜のことだ。
カヤが優勝祝いのお寿司を食べ、ぐっすり眠っている23時過ぎに発生した。
事の発端は、この前と同じく行列のできるラーメン店だった。
そこに先日の三人組が現れ、またトラブルを起こした。
行列に割り込んだところを店員にとがめられ、大声で騒ぎ出し、店長がサメタニ組に連絡を入れた。
それを受けて駆けつけてきたのがくーまとかーらだ。
天狗の姿ではなく人間の姿でやって来たが、それは人目があるからだろう。
「お前ら、また来たのか。バカなのか?」
と肩に竹刀を担いだかーらが言う。
「バカはお前だ、のこのこと」
と鼻ピアスが言い、
「今日はこの前のお礼をしに来たんだよ」
と唇ピアスが言った。
どうやらくーまとかーらをおびき寄せるためにトラブルを起こしたようだった。
「お前ら、この前の天使のアレで改心したのではなかったのか?」
「ああ、あいつか。あの白くて胸ぺったんな奴にもお礼をしなきゃな。ついでに呼べや」
と眉ピアス。
「言葉に気をつけて下さいよ」
と、くーまがずいと前に出ながら言う。
「ふん。とりあえず、顔を貸せ」
そして三人組はくーまとかーらをうながしてラーメン店を後にした。
……と、ここまでは店の前の横断歩道でトキオが目撃した光景である。
カヤに言ったように、習慣としての夜の見回りをしてる最中にたまたま目にしたとのことだ。
「胸ぺったん?」
「いや、その……」
とトキオは目を泳がせる。
彼らがどこへ行くのかが気にならないわけではなかったが、くーまとかーらの強さは目にしていたので、そのまま見送った。
それに、これはあくまで「彼らサイド」の問題だった。
その後のことはミロクの干渉はできないが観察はできる能力で明らかになる。
ミロクはタブレット操作し、画面にアニメーションの動画が流れる。




