表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/31

24.エンジェルじゃなくてエンゲルなんですか

「さてさて。リモコンの効力が数日で切れるとなると、これは由々しき問題なんだよね」

「でしょうね」

 あの三人組に会ってからまだ一週間もたっていない。

 リモコンの効力がどれほど続くのかは教えられていなかったが、数日程度のスパンではないはずだ。

 逆に考えれば、そんなにあっさりと効力がなくなると天使業界の威光にも関わってくるのではないだろうか。

 それともあの三人組はリモコンをすぐに無効化するほどの「悪」だったのか。

 あるいはリモコンそのものの故障ということも考えられる。

 いや。それよりも何よりも。


「私のミスですか?」

 と、カヤはその可能性に思い当たる。

 彼ら三人組には「自立」のビームを浴びせたが、もしかすると正しいのは「共感」あるいは「反省」のビームだったのかも知れない。

 判断ミスが効力を短期化させた?

「いやいや、カヤカヤ」

 とピリポは言下にその可能性を否定する。

「それは大丈夫だよ。多少のズレがあったとしても、簡単に効力は失われない」

「そうなんですか」

 カヤはホッとする。

「考えられる理由は一つ。無効化する力を持つ者の仕業だね」

「無効化する力を持つ者」

「悪魔」

「え?」

「悪を是正する天使の行為に歯向かうことができるのは悪魔だけ」

「それって……」

 まさか、デビーさんのことだろうか? 

 いや、彼がそんなことをするはずはない……。


「大丈夫。カヤカヤが心配している替え玉悪魔のことじゃない」

 替え玉悪魔って。

 デビーは無類のラーメン好きで、いつも替え玉を注文するくらいだ。

 だからと言って「替え玉悪魔」呼ばわりされたら気を悪くするだろう。

 ピリポだって「パフェピリポ」とか言われたくないはずだ。

(いや。案外と気に入ったりしそう……)


「カヤカヤ。話に集中してる?」

「あ、ごめんなさい」

「集中してなかったんだ。やっぱり雑いよね」

「すみません。デビーさんでなければ、誰なんですか?」

「それは分からない。で、カヤカヤチームにお願いしたいのは、その悪魔を見つけ出すこと」

 カヤカヤチーム。いつの間の名づけ?

「見つけ出す、ですか?」

 退治をしろ、とかそういったことはないのだろうか。

 あるいは改心。

 デビーさんが「こちらサイド」の人になったように。


「くれぐれも注意しておくけど、戦っちゃダメだから」

「なぜですか」

「相手は悪魔だからね。人間を相手にするのとは、また話が違う」

「そうなんですね」

「悪魔を相手にするとなるとわれわれプロパーの出番」

 ピリポはキメ顔で言ってウィンクをするが、口元にパフェのクリームがついていた。


「頼める?」

「もちろん」

 くーまはともかくとして、かーらとは昨日の試合の後の会話で通じあうものがあった……カヤの一方的な思いかも知れないが。

 彼女のためにも真相を突き止めたい。

「詳しい話は今夜ミロッキーから聞いて。今あれこれ調べてくれているから」

 ミロッキー。

 この人のネーミングセンスにはじわじわくるものがある、とカヤは思う。

 じわじわ疲れさせる……。


「あ、それとこれ」

 とピリポは楕円型をした白い物体をテーブルの上に出す。

「これは?」

 手にとってみるとグリップ状になっている。

「エンゲルセイバー。ほら、ミロッキーが言ってたじゃん。木刀の代わり」

「エンジェルじゃなくてエンゲルなんですか」

「ドイツ製だから。それにカヤカヤの家、エンゲル係数が高そうだし」

「大きなお世話です」

「ちなみに、それで何かをぶった切ることはできないからね。それじゃ凶器だ。光る木刀みたいな感じで考えて」

 木刀も凶器になり得るのでは。

「あ、でも硬さはコントロールできる。最弱がコンニャク。最強がコンクリート。えーと、うん」

 たぶん「コン」つながりで面白く言おうとして失敗したパターンだ。

 あとで使い心地を試しておこうとカヤは思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ