夢の始まり
目を開けると辺りにまるで空き缶のように人の死体が転がっていた、そしてそれを眺める私の装いもカーキ色の制服に変わっていた、まるで映画を見てる感覚に呆然としていると
空から何かが落ちてくる音と共に視点が変わる。
今度は薄暗い部屋で僕は沢山の人達と体を寄せ合って震えていた、暫くすると外から怒声が聞こえ銃を持った集団が乗り込んできた、そして乾いた破裂音とともにまた視点が変わった。
今度は
今度は
今度は
今度は
今度は
ピピピピッとオーソドックスな目覚まし時計の音で目がさめる、掛け布団をどけてカーテンを開けて朝日を浴びながら夢の内容を思い出す、夢というには鮮明に描写されていて現実というには曖昧だった。
もしかしたら今見ているこの世界も実は夢なのではないか、というミステリー小説にありそうな展開を考えながら部屋の扉を開けて階段を降りていく。
机に母親からの朝食の場所を示す書き置きを見てそれを取り出しレンジで温めながらスマホを確認すると、連絡通知がたくさん来ている、げんなりしながら確認すると予想通り犯人は幼馴染の深優だ。
『やっほー!叶!ちゃんと起きた?起きないと悪戯しに行くぞー!』
朝からよくこんなテンション上がるな、しかも学校で話す時とのギャップが凄い、そんなことを考えながらオーブンから温め終わった朝食を取り出して食べ始める。
もそもそと冷蔵庫から取り出したばかりのサラダを口にしながら日課の朝のニュースを見る。
芸能人のスキャンダルに政治家の天下りなど学生からしたらどうでもいいような話が取り上げられる、しかしその中で一つきになる話があがる第二次世界大戦中のの不発弾が発見されたというニュースだ、しかも見つかったのは自分が住む町内の一角でまだ見つかる可能性があるとのことだ、気にしない方が無理という話になる。
食べ終わった食器をいつも通りに水の中につけ今度は歯を磨く、必ず前歯の裏から磨き始めるのが癖となっている、そして興味のなくなったテレビの電源を落とし口の中をゆすぐ、ハンガーにかけてある制服をズボンから着て、家の鍵を閉め晴天の空の下を歩き学校へと登校した。
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教室へと入るとクラスメイトがおはよう、と挨拶をしてくるので、挨拶を返して自分の席に着くと机の中から最近デビューした人気芸人の自伝と言った如何にもつまらなそうな本を取り出し読み始める。
「…」
「その本面白くないの?」
誰にも聞こえないように呟いた言葉に対し返答が来て少し体をビクつかせて声の主を確認する。
「なんだお前かよ深優、いきなり声をかけるな驚いただろ」
机の反対側に屈んでこちらを見上げる幼馴染の深優の姿があった。
「気づかない方が悪い、それに結構前から見ていたよ? 」
「それは悪かったな本に夢中で気づかなかった」
「…その本面白くなさそうに読んでたのに夢中だったの? 」
「ああつまらなすぎて逆に夢中になったよ、読めば読むほど書いた人のつまらない本質が見えてくるからな」
深優の揚げ足に対して言葉を返す。
「本当に昔から人の本質を探るの好きだね、まあいいや、今日提出の宿題ちゃんと終わらせてきた?」
「別に好きじゃない、癖なんだよまるで前世から日常的にやっていたようになり、それと宿題だが天然なお前と違って忘れてきたってミスも犯してないぞ? 」
「私は天然じゃないって何度言ったらわかるの? ただミスが多いだけだよ」
「それを天然って言ってるんだよ」
「むぅぅ、先生が来たからこの辺にしておくけど、昼休みになったら覚悟しておいてね!」
「はいはい、覚悟しておくよ、覚えてたらな」
こうしていつも通りの日常が始まっていく。
あれれ、息抜きの方が筆が進む!?




