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第3話 ~魔装国家イグニアス~

1 

――――何てことは起きなかった。

最初に気付いたのは私だった。ちょうど勇者の背後にある出入口が視界に入っていたから気付けた。

音もなく、緩やかに開放される扉。そして、開けた人物。

……マリアンだった。

扉を開け、部屋の中を確認したマリアンの表情は、意外にもあまり変化は生じなかった。

ただ、一言。

『そこに直って』

――――それだけで、世紀の決戦は持ち越された。


「……で、あなたは私の恩人である彼に剣を向けたわけね?」

腕組みをしながら、 無表情で確認を取るマリアン。

兜を外し、直立不動の気を付けの勇者。

勇者が、一触即発となった経緯を事細かに語った。

真っ直ぐ勇者の顔を見詰めながら話を聞き、時折、私にも視線を投げる。視線が合うと、相違が無い事を黙って首肯して示す。

「はぁ……分かった。今回は不問にします。あまり独断先行は為さらないで下さい。私は彼と話があるので、退席を願います」

腕組みを解きながら、勇者に出ていく様に促す。勇者はまだ何か言いたそうだが、渋々出ていく。

「何者なんだ?一体……」

少なくとも、一部隊長クラスが勇者に指示できるとは思えないが。

「あなたこそ、何者ですか?フール」

やんわり微笑みながら聞き返された。

「私の事を話すの良い。話が通じて、礼儀を弁えているのならね。だが、一つだけ願いがある」

言ってみなさい、と興味深げに腕を組む。

「なあに、難しいことじゃない。私は『ここ』に来たばかりで周辺をよく分かっていないんだ。地理的状況なんかを教えてくれれば嬉しい」

嘘は織り混ぜない。好印象を持っている相手にそんなことをしても得することはない。

「私がそれを守る必要はある?」

「いや、特にはないな。ただ、あんたは私に話を聞きたいのだろう?私はあんたに聞く必要はない。そういうことだ。」

「はあ……こういう二択をして、さっきのに発展したのね」

苦笑混じりに組んでいた腕を下ろす。

「また暴れられても敵わない。こちらに害が無い内は受け入れるわ」

「賢明だな」


――――程なくして、新たに机と椅子二脚が運び込まれ、部屋の中央に据えられた。それまでに、部屋の内観を眺めていたが、殊の外物騒な部屋であることが判明した。

四角い部屋に窓は無く、扉が一つ。私はそちら向きに拘束されていたわけだが、ちょうどその背後の壁。

そこには、ありとあらゆる凶悪な形状をした道具が所狭しと、壁に掛けられ、床に散乱していた。しかも、赤黒い『何か』がべっとりとこびりついたままの代物もあったりする。……逆にそういうプレイで使われそうなアレやコレもちらほら見え隠れしている。

九割九分九厘十中八九、拷問部屋だ。……ここまでハードコアでマニアックなプレイをご所望な御仁が居ない、とは断言できないが。

……そんなことは、果てしなくどうでもいい。

私たちは、机を挟んで向き合って椅子に座る。

「自己紹介からでも始めるか?」

「そうですね。あの時は混乱の最中でありましたし」

「じゃ、まあ言い出しっぺから始めるか。さっきも言ったが、私はフールだ。ちょっと旅をしている。そっちは?」

『ちょっと』が世界を越えてのものだとは思うまいだろうな。

「――――マリアンです。国属近衛隊第一部隊の隊長を務めている」

やはり肩書きは部隊長。しかも、言い出しがやけに言い淀んでいた。何かあるのだろう。例えば……、

「姫様――――とかな」

「――――誰の事?まさか、私に言っているのか?」

一瞬の間。荒唐無稽な一言に唖然としたのか、はたまた図星か。彼女の所作にはどこか優雅さを感じ取れるので、貴族とかそういう者の気配がする。これが生来のもので、庶民の生まれだとしたら将来は安泰だろう。

後者だとすれば、初対面の人間に正体を見破られてここまで表情を隠し通せるのだ。余程慣れているのだろうし、そこまでして隠匿したい事実なら、掘り返さなくても良いだろう。……あまり興味も無いし。

「……いや、忘れてくれ。私の国の姫君の面影を感じたんでな」

適当にお茶を濁す。それで誤魔化せたらしく、マリアンも追求はしない。

「では、話を進めるとしよう。フール、君はどこから、何をしにこの国へと来た?」

「目的は特にない。ただ娯楽に餓えて旅をしているだけだ。どこから……っていうのは、遠くから、としか言えないな」

マリアンの双眸は自然と細くなる。見定めるような視線だ。かなり懐疑的になっているようだ。私ならこんな怪しい男の取り調べなぞ、穏やかには行わない。救われた恩義でも働いているのだろう。見かけによらず、直情傾向が強いらしい。

「信じるかどうかは、どっちでも良いよ。信用にならない、って言うならそこら辺に放り出してくれれば良い。まあ……こちらの質問にも答えて貰ってからだけど」

「得体の知れないの不審者を、得体が知れないからと放り出すわけにはいかないよ。なに、今なら勇者様も居る。で、質問は何?答えられる範囲なら答える」


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