第一話 ~ちょっと異世界に転生してみます~
第一話
決意してから半年ほど掛かった。だが、ようやく完成した。
異世界への転移魔法陣。
それ自体は組むのは簡単だった。だが、それの安全性や確実性の検証が難しいため、今の今まで尽力していた。この世界での最後の仕事にして、今までの人生でも最高の時間だった。
一番に手を尽くしたのは、転生用の術式を組み込まなければならなかった事だろう。折角異世界に行き、新しい人生を歩むのに、今の外見を保持したままだと興が覚める。かと言って、完全に赤子からやり直すほどでもない。その辺の微妙な調整をさながらゲームの容姿自動設定機能のようなものだと考えてくれていい。あくまで訪れた世界の平均を取って反映させるわけだからあまり選り好みは出来ないが、そこは仕方がない。ここで姿を決めてしまうと、転移先によっては異常な姿と取られるかもしれないのだ。
よって、そんな機能の取り付けも無事に終わり、細々とした準備も終え、ようやく転移魔法陣が完成したのだ。心待ちにしていた瞬間だ。すぐにでも転移したいが、私の存在が突如消えてしまえば、世界は恐慌に陥るかもしれない。そんな事は望んでいないので、何かしら理由をつけとかないといけないが……。
「なっ……!!!???」
思わず声が出たのは、作成した転移魔法陣が淡く輝きだしたからだ。もっと言えば、まだ操作をしていないのに、いきなり転移を開始し始めたのだ。もちろん対象は私だ。
途中でキャンセルしようと思えばいくらでも出来るのだが、ほぼほぼアドリブで組み上げた魔法陣は効果を失うだろう。一回限りのものなのだ。もう一度作り直すのも可能だが、さすがに面倒だ。
と、言うわけで。私は流れに乗ることにする。
徐々に微粒子となって魔法陣へと収束していく自分の体を見ながら、一抹の不安を覚える。しかし、それが何であるかを考える前に、部屋を監視していたのであろう黒尽くめの魔法使いが数人突入してくる。何かしら叫びながら、魔法陣を破壊しようとあらゆる魔法を立て続けに発射するが、あいにくと、この部屋は私の部屋だ。その程度の魔法で傷の付く物など一つもないし、そんなことをすれば自動迎撃機能によって、反撃を喰らう。
泡を食う男達を尻目に、転移は確実に進行し、意識も揺らいでいく。私は、途切れそうな意識の中で、
「ちょっと異世界に行ってくるわ」
サムズアップして、この世界に別れを告げた。




