王は司令室、男はツインテールの部屋へ
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謎の王の城・情報部隊本部・司令室。
この部屋は沢山のモニターや電子機器が配備されており、常に数人が待機している。基本この部屋にいる時は、一日中自分のデスクに置いてある大きくて薄手のパソコンをつついて、スパイから送られてきた情報の整理等をしている。人によっては、足が付かないようにここから様々な所を経由して、直接ハッキングしたりもする。ここに配属している人間のほとんどが、その道のエキスパートなのだ。スパイや自分らが盗んできた各国の機密情報は、『定期連絡』等の時に紙に印刷して、謎の王に手渡している。彼らの仕事はそれだけではない。城の周辺に設置した監視カメラや生命探知機で、城に近づく者がいないかという監視の仕事も同時に担っているのだ。
そんな司令室を訪れた謎の王は、司令官と話をしていた。
「アブラギッシュの件はどうなった?駒田司令。」
司令官の名前は、駒田というらしい。見た目から歳を察するならば、四十代後半から五十代前半といったところか。駒田は、謎の王の言葉にビシッと姿勢を正してこう答えた。
「はっ。それに関しましては、手を打つのが早かった事もあり、どうにか丸く治まろうとしています。」
「そうか・・・では、この件に関してはもう何も言うまい。すぐに用件を伝えるとしよう。」
謎の王はそう言うと、駒田にメタリーの画像を渡した。メタリックな亀の画像に駒田は、『何だ?この亀。』と言いたげな顔をした。
「各国に送り込んだ精鋭たちにこの亀の種族と、『蒼水晶』の情報を手に入れるよう命令を出してくれ。『最優先事項』だとな。」
「はっ。了解しました。」
駒田は渡されたメタリーの画像を近くの部下に渡し、小声で
「こいつをスキャンして、見やすい様に加工しておけ。後ですぐに命令文と一緒に送信出来るようにな。」
と、命令した。画像を受け取った部下は、嫌な顔一つすること無く、そのままスキャナーの所まで歩いて行った。
謎の王は、情報部隊の能力を信頼しているので、
「駒田司令、私の用事は以上だ。良い報告を待っているぞ。」
と、駒田に後を任せて、司令室から出て行こうとした。すると、
「王様。」
駒田が謎の王を呼び止めた。
「・・・・・・」
無言で駒田の方を振り向く謎の王。その時向けられた鋭い眼光にビクッとしながらも、
「あの・・・差し出がましい質問で申し訳ないのですが、どうしてあの超合金みたいな亀と『蒼水晶』の情報が必要なのですか?」
と、質問をした。確かに各国の機密情報よりも『最優先事項』だと言われれば、気になってしまうのは当然の事である。謎の王は、駒田の質問にすぐには答えず、数秒経ってから口を開いた。
「駒田司令。」
「はッ!!」
急に呼ばれた駒田は、びくびくしながら返事をした。さっきの話声よりトーンが若干低いので、自分の質問で機嫌を損ねてしまったのではないかと思ったのだ。しかし、謎の王は別に機嫌を損ねているわけではなかった。
「・・・隣の部屋は今、誰か使っているのか?」
「い・・・いえ、今日は誰も使いませんが・・・」
「では、そこで話をしよう。司令官であるお前には、『知る権利』があるからな。」
謎の王はそう言うと、司令室から出て行った。どうやら、誰も使っていない隣の部屋で質問に答えるらしい。司令室で言えないという事は、一部の人間にしか話せない内容なのだろう。駒田は謎の王の後を追って、司令室を出た。
一方その頃、五黒大天衆のリーダー・普通の体格の男は、ツインテールの女の部屋に来ていた。この城の中に異世界人が何らかの形で紛れ込んでいるという事を伝える為だ。しかし、彼が来るまで何か用事をしていたらしく、彼女は急な訪問にとても迷惑そうな顔をしていた。
「で、伝えたい事って何?早く済ませて、とっとと自分の部屋に帰ってほしいんだけど。」
ギロリと男を睨むツインテールの女。どうやら、よっぽど大事な用事をしていたらしい。彼女の方からは、薬品のような匂いが少ししていた。
「ああ、すまない・・・まさか取り込んでるとは思わなくてね。もう少ししてからまた来るよ。」
「そんな事は言わなくて良いから、早く『伝えたい事』ってヤツを言って。今すぐッ!!後でまた来られても、それはそれで面倒だから。」
「そうか・・・」
帰ろうとする男を引き止めて、『伝えたい事』を言わそうとするツインテールの女。彼女の言葉に普通の体格の男は帰るのをやめて、自身の『異世界人ワカール』のくだりから今に至るまでの事を簡単に話した。始めこそ、頬づえついてだるそうに聞いていた彼女だったが、聞いていく内に真剣な顔になっていった。
「まあ、にわかには信じがたいけど・・・一応、頭の中に入れておくわ。」
「ああ、そうしてくれ。・・・・・・じゃあ、伝えるものは伝えたから帰るよ。忙しい時に邪魔してすまなかった。」
普通の体格の男は、忙しそうだった彼女を気遣い、すぐに帰ろうとした。すると、
「あ、ちょっと待って。」
と、ツインテールの女に呼び止められた。さっきまでは『早く帰ってほしい』とか言っていたのに、何故呼び止めるのか。それは、彼の話を聞いて彼女も何かを思い出し、それを伝えようとしたからだ。
「『あの側近の女に脅された』と聞いて思い出したんだけど・・・大分前にカネホシスがこんな事を言っていたのよ。『あの女が知らない銀髪の男とよろしくやっている』ってね。」
「カネホシスが?・・・何でまた・・・」
「さあ?何か暇潰しに城の中を歩いていたら、たまたま誰も使っていない個室に二人でいるところを見たんですって。ま、カメラとかを持っていなかったから、証拠写真は撮れなかったみたいだけどね。それさえあれば、いつも見下した目でアタシ達を見てくるあの女をギャフンと言わせられたのに。」
ツインテールの女は、側近の女性に対して、良い印象を持ってないようだ。それは普通の体格の男も同じようで、同調するように首を縦に軽く振っている。
「・・・で、結局その銀髪の男の正体は分かったのか?」
「さあね。でも、アイツの部屋に行けば何かあるんじゃない?知らないけど。」
「そうか・・・もしかしたら、その『銀髪の男』が『異世界人』かもしれないな。それなら、私を脅してきた事にも説明がつく。」
「まあ、どうでもいいけど、調べるんなら早い方が良いわよ。綺麗に整理されるから。」
ドアの方を指さして言うツインテール。普通の体格の男はドアの方を見ると、
「ああ、そうするよ。有り難う。」
と、お礼を言って、そのまま部屋から出て行った。ドアが閉まり、去っていく足音が聞こえなくなるのを確認したツインテールの女は、『ふう』と溜息を吐いて言った。
「やれやれ・・・ただでさえ陰キャの異世界人がしぶといのに、ここに来て城の中にもいるって・・・・・・ま、その事はアイツに全て任せておけばいいか・・・」
そう言うと、彼女は指をパチンと鳴らした。すると、彼女の影が奥の壁の方まで大きく広がり、その中にアンティークな飾りが付いた扉が現れた。ゆっくりその扉を開けると、真っ黒な空間が広がっており、その先にある物は何一つ見えなかった。しかし、彼女はそんな空間でも何があるか見えているようで、扉の奥にある何かを見るや否や、嬉しそうに口角を上げた。
「良かった、ちゃんと薬が効いてる。いいところでアイツが来たから、薬の分量をきちんと確認出来なかったのよね。」
奥にある何かのとこまで歩いて行った彼女は、子犬を撫でるかのようにそれを優しく撫で始めた。
「フフフ・・・」
どことなく不穏な空気が広がる中、影の扉はひとりでにバタンと閉まった。




