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班行動していると、いつの間にか知らない奴が一人混じっている事がある

 確保された桃太郎は、この間と同じ『取調室』に連れて行かれた。そして、武装した兵士にそこにあるパイプ椅子に座るよう命じられ、大人しくちょこんと座った。清掃はされているようだが、部屋自体が古いので壁とか床は黒ずんでいる。よく見ると、パイプ椅子も机も傷だらけでボロボロの状態だ。

 そんな事はさておき、椅子に座った桃太郎は周りを見回して、初めてこの部屋に連れて行かれた時の事を思い出した。

 「(あの時は大変だったなぁ~・・・確か、最終的には王子に『死刑』を言い渡されたんだっけな。)」

 寒気で体を震わせる桃太郎。だがそれも今となっては良い(?)思い出である。

 「(さて、今度は誰が来るんだろうな?出来れば鳥と王子はやめて欲しいが・・・鳥は確実に来そうだな。)」

 桃太郎は、出来る限りあの二人だけは避けたかった。何故なら、あの二人が絡むとろくな事にならないからだ。そんな事を考えている内に取調室のドアが開いた。そこに立っていたのは・・・

 「ど~も~、デヴィット・チャーハンで~す。」

 「いや、誰だよッ!?」

 見知らぬ白髪のおっさんだった。



 城の車庫にキンキラキンの車を入れた阿呆鳥は、早足で『取調室』に向かっていた。

 「(急げ・・・こうしている間にも兵士共が何をしでかしているか分かったもんじゃない・・・・・・ん?)」

 取調室がある廊下を早足で歩いていた阿呆鳥は、部屋の前で数十名の使用人やら兵士やらが集まっている事に気が付いた。この時点で阿呆鳥の嫌な予感は的中したと言っても過言ではない。阿呆鳥は、人だかりを見るや否や大声を上げて怒鳴った。

 「お前らッ!!仕事をさぼって何をしている!?とっとと自分の持ち場に戻って自分の仕事をしろ!!」

 いつもならここで、『わークソ鳥が来たぞー!!』と心の中で叫びながら、各自逃げるように戻って行くのだが、今日はどこか様子が違った。なんと、誰もその場を離れなかったのだ。

 「あ、阿呆鳥王子補佐殿。実は・・・」

 ここで一人の兵士が取調室を指さして言った。

 「見知らぬおっさんが勝手に陰キャの事情聴取を始めてしまいまして・・・」

 「は?」

 『何を言っているんだ?』と言わんばかりの顔をしながら、阿呆鳥はいつものように取調室のドアを開けた。そこには、桃太郎と向かい合って茶をしばいている見知らぬおっさんの姿があった。

 「誰だお前!?」

 どうやら、阿呆鳥も知らないようだ。見知らぬおっさん・『デヴィット・チャーハン』は、ティーカップを持ったまま、声のした方を振り向いて、レモンティーを(すす)りながら言った。

 「どうも、貴方のデヴィット・チャーハンです。」

 「いや、知らねえよ!!」

 阿呆鳥の刃物の様に鋭いツッコミが取調室全体に響き渡る。桃太郎は、デヴィットが()れたのであろうレモンティーを飲みながら、阿呆鳥に言った。

 「何だ、このおっさんは城の人間じゃあないのか。どうりで手厚くもてなしてくれたわけだ。」

 「当たり前だ!!こんな得体の知れない奴、兵士とか使用人に採用してたまるか。こいつは城の人間の振りをした、城とは無関係のおっさんだ。おい、お前ら、おっさんのお帰りだ。とっとと出口まで案内して差し上げろ!!」

 デヴィットの襟を掴んで引っ張る阿呆鳥に部屋の外にいた兵士達が続く。数人がかりで無理矢理追い出そうとしている連中に対して、デヴィットは大声で叫んだ。

 「な・・・何をする!?まだレモンティーを飲んでる途中でしょうがぁぁぁー!!」

 「うるせえ!!地下牢にぶち込まないだけ有り難いと思え!!」

 「嫌だ・・・私は帰らんぞ!!まだ、この人の『事情聴取』を終えていないのだから・・・ッ!!」

 「それはお前の仕事じゃあないだろうが・・・ぐぬぬぬぬぬ・・・」

 阿呆鳥が襟を力強く引っ張り、デヴィットの体を三人の兵士が引っ張る。やっと椅子から体が離れたと思った矢先、今度はドア付近で追い出されまいと踏ん張り始めた。鳥はともかく、日頃から鍛えている兵士が三人がかりでも押し出せないとなると、このおっさんは相当な手練(てだ)れであると思われる。この三人が真面目に鍛えているならの話だが。

 桃太郎は、目の前で繰り広げられている攻防戦を見ながら、

 「愉快、愉快。」

 と、レモンティー片手に一緒に出て来たクッキーをつまみながら眺めていた。きっと、今の彼は『家でテレビを見ているような』感覚なのだろう。どちらかの勢力に加勢する事無く、ただひたすら皿の上にある色々な味のクッキーを黙々ともぐもぐしていた。

 阿呆鳥たちがデヴィットをようやく追い出せたのは、それから約十五分後の事だった。ようやく事情聴取が出来ると阿呆鳥が椅子に座った時には、桃太郎は授業中に居眠りする生徒の体勢で寝ていた。その光景に阿呆鳥がキレないわけはなく、

 「起きろォォォーーーーーーーーーー!!」

 と、城中に響き渡る位の声量で桃太郎を起こした。そのあまりの声圧に桃太郎は椅子ごと後方にぶっ倒れた。

 「いってぇ~!!」

 頭を打ったのか、起き上がるや否や自分の頭をさする桃太郎。

 「そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか。」

 「やかましい。とっとと、事情聴取を始めるぞ。」

 イライラしている阿呆鳥に桃太郎は『ヘイヘイ・・・』と、だるそうに返事をした。

 「まずは・・・そうだな。何故あんな事になったのか、最初から丁寧に説明して貰おうか。」

 「あ~・・・はい。え~と・・・」

 『説明しろ』という言葉に必死に頭を回転させる桃太郎。第三者からすれば、『あった事を洗いざらい話せばいいだけじゃあないか』と思うのだろうが、そうはいかない。何故なら、なるべく『異世界人』とか『神星』といったワードは使わないように説明しなければならないからだ。これは、『これ以上大事(おおごと)にならないようにする為』というのもあるが、どっちかというと『言ったところで信じてもらえないし、中二病のそれと思われるのがオチ』の方が今の桃太郎の心境に近い。おまけに自分の目の前にいる阿呆鳥は、前回の取り調べの時にそういうものは信じないタイプだと分かっているので、尚更そういうワードは使用しない方が良いだろう。

 桃太郎は、即席で考えた説明文で阿呆鳥に説明した。

 「街を歩いていたら、すごく太った奴が絡んできたので逃げました。そしたら、向こうが建物を壊しながら俺を追いかけて来ました。んでもって、追いつかれて戦闘になり、ボコボコにされました。一応、持っていた包丁で応戦しましたが、ダメでした。そんなこんなで、あんたらが来て今に至ります。」

 誰が聞いても『お前それ、今適当に考えたろ』と、言いそうな文章に阿呆鳥も呆れたように口をカパッと開けた。

 「・・・・・・あのさ、俺様は『丁寧に説明しろ』と言ったんだぜ?今のどこが丁寧なんだ?ああん?」

 「これが俺の思う『丁寧』だ。まあ、感じ方は人によってそれぞれ違うから、しょうがないね。」

 両手を広げて『さあ?』というポーズを取りながら発言する桃太郎。その態度にイラッとした阿呆鳥は、自身の感情を抑える為に大きな溜息を吐いて、気をなだめた。

 「まあ、良い。説明は雑だが、なんとなく理解した。・・・・・・ん?ちょっと待て、『すごく太った奴』だと?相手の男は、ボディビルダーみたいなマッチョマンに見えたが・・・」

 「ああ、そいつ途中からマッチョマンになったんだよ。・・・・・・あっ。」

 桃太郎はそのセリフを言った瞬間、自分が突拍子も無い事を言っている事に気が付いた。いや、突拍子も何も本当にあった事を言ったまでなのだが、『その瞬間』を見ていない阿呆鳥からすると、今の桃太郎のセリフは『突拍子も無い』以外の何モノでもなかった。桃太郎自身が気が付いた時には、時既に遅く、取調室は心臓の鼓動が聞こえそうなくらい静寂した空気が漂っていた。

 「・・・お前さ、そんな事言われて『はい、そうですか』と俺が言うとでも思うのか?」

 「思いません。」

 再び呆れたような顔で桃太郎を見ながら言う阿呆鳥。桃太郎はとりあえず、

 「まあ、あそこら辺の監視カメラを調べれば分かりますよ・・・。」

 とだけ言って、後は笑ってごまかした。

 そして、その後も阿呆鳥の聴取は続き、桃太郎はそれから約一時間後に解放された。何故、その後の聴取の様子をカットしたのかというと、これといった出来事が起きなかったからである。



 「よし、次はこの先を真っ直ぐ行った所にあるコンビニだ。」

 「ええっ、またですかあ!?これで七件目ですよ!?」

 王子とカミーテルを乗せて運転している記者の男は、王子のコンビニ巡りに付き合わされていた。最初は城まで送るだけだったのだが、その途中で寄ったコンビニに王子が求めている商品が無かった事で今に至る。コンビニを探していった為、目的地である城との距離は縮まるどころか、どんどん離れていっている。

 「(もう勘弁してくれ・・・)」

 記者の男が心の中でそう思っていると、前方にこちらに向かって大きく手を振っている人間が現れた。それを見た王子は、それが自分に対する声援だと思い込み、気分を良くした。そして、

 「おい、止めてくれ。」

 と、言って車を止めさせると、後部座席のドアを開けてその人の元へ歩いて行った。声援に対するお礼を言いに行ったのだろうか。さっきから王子達に振り回されている記者の男は、王子が外へ出て行った後、げっそりした顔で椅子にもたれ掛かった。この時点で男の体力は、最早限界を超えようとしていた。よく『限界を超えた先に新しい自分がある』なんて言われるが、今の彼を見る限りでは、限界を超えた先にあるのは『死』という『人類が最終的に辿り着く、確定された未来』しか感じない。それぐらい、疲弊していた。

 しかし、そんな彼に一ミリも気を遣わない王子は、とんでもない爆弾を持って来た。いや、そいつは人間なので『連れて来た』が正しい。そして、その人間は我々が一度目にした事がある人物だった。

 「ど~も~、デヴィット・チャーハンでぇ~す。」

 なんとその人物は、さっきまでウマシカ城で阿呆鳥たちと攻防戦を繰り広げていたデヴィットだった。城から追い出された後、その辺をウロウロしていたのだろう。それにしてもすごい偶然である。王子は嬉しそうにカミーテルと記者の男に話した。

 「このおっさんがさっき朕に手を振ってくれていたのだ。」

 この時、記者の男は嫌な予感がした。

 「へぇ~・・・・・・それで、何で私の車に乗せるんですか?」

 恐る恐る聞く男に王子は、いつものテンションで言った。

 「ここで会ったのも何かの縁だから、一緒にコンビニ巡りをする事にしたぞ。こういうのは、大勢の方が楽しいからな!!」

 「(クソがァッ!!)」

 記者の男は怒りのあまり、ハンドルをドンッと思いっきり叩いた。拳がぶつかった部分がクラクションのボタンだった為、『プアァーーーーーン!!』という音が鳴り響いた。いきなりのクラクションに驚いた王子は、

 「意味も無くクラクションを鳴らすんじゃあないッ!!『意味無きクラクションは騒音』というのを知らんのか?騒音は立派な公害だぞ。・・・それより、早くコンビニに急いでくれ。」

 と、運転席の男に注意した。確かに意味も無くクラクションを鳴らすのは良くないが、王子だけには言われたくなかった。記者の男は、『むしろ公害はお前だ』と言いたげな顔をしながら、

 「(誰か助けてくれえぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーッ!!)」

 と、心の中で自身の救済を求めた。

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