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特別編 ウマシカ福男決定レース

 皆さん、明けましておめでとう御座います。

 今年もこの小説をよろしくお願いします。

 「皆さん、明けましておめでとう御座います。そして、レディース・ア~ンド・ジャントルメ~ン!!今年もこの季節がやって参りました、『ウマシカ福男決定レース』。実況と解説は(わたくし)、へーコラピューマの『アディ』と・・・」


 「へーコラ黒豹の『コンバー』がお送り致します。」


 突然始まったのは、『福男』を決めるレースの中継。


 映っているのは、ウマシカ王国のとある広場の風景。


 数秒後には、スタート地点っぽいとこに人間の男性がウジャウジャ集まっている光景。


 今のところ、アディとコンバーは声だけで、姿は映っていない。


 恐らく野球中継と同じように、このまま声だけの出演で終わるだろう。


 因みに二匹とも、このレースを実況する為だけに、わざわざへーコラから来たようだ。


 自己紹介を終えた彼等は、話し始める。


 「いやぁ~、それにしてもコンバーさん、今年も大勢の人間の男性が集まっていますね。」


 「そうですね。やはり、一位になると『福男』として今年一年周りからチヤホヤされるってのと、賞金の29万ウマシカドル、更には副賞で沢山且つ色々な種類のお肉が貰えるからでしょうね。」


 「はい。用意されたお肉は、どれも高級品ですからね。私、さっきつまんでみたのですが、肉が舌の上で(とろ)けて最高でした。」


 「貴方もですか。実は私もトイレに行くついでに、一個つまんだんですよ。良いお肉でした。」


 「さて、ここで本イベントの主催者である、知井(ちい)(たける)さんにお話しを伺いましょう。知井さん、今年も参加者が大勢いて賑やかですね。」


 「んぐっ・・・そうですね・・・クチャッ・・・副賞のお肉、どれも美味しいですからね・・・チャッ・・・」


 何故だろう・・・咀嚼音(そしゃくおん)が聞こえる。


 アディは、誤魔化すようにこう切り出した。


 「さあ!!もうすぐスタートの時間です。今年は、どんなドラマが待っているのか・・・いやぁ~、楽しみですねぇ~。」




 一方、こちらはスタート地点。


 レースの開始を待つ有象無象の中に、なんと桃太郎の姿があった。


 その近くには、ニシキの姿も。


 「兄貴、頑張って下さいッス!!」


 「ああ・・・!!」


 準備体操をしながら、ニシキの声援に応える桃太郎。


 彼は、『福男』になりたくて参加した訳ではない。


 賞金と肉目当てで参加したのだ。


 金も肉もいくらあっても困らないので、ここいらで稼いでおこうって感じなのだろう。


 そんな彼の数人前には、こんな人物の姿も。


 「まさか数年前から、こんな催し物をやっていたとはな・・・・・・『福男』の称号は、(ちん)にこそ相応しい!!」


 ウマシカ王子である。




 さて、そんなこんなでレースが始まった。


 参加者全員がピストルの音と共に走り出し、ゴールを目指して一直線に進む。


 おっと、そういえばコースの紹介を忘れていた。


 今年のコースは、例年のような神社の周りを三周するものではなく、一本道。


 さっきの広場から神社まで、道なりに走っていく。


 途中、『補給ゾーン』なるものがあり、参加者はここで補給食を一つ取る事が出来るようだ。


 それ以外に、これといったゾーンや障害物等は無し。


 ()いて言うなら、キツめの上り坂があるくらいだろうか。


 以上、コースの説明終わり!!


 と言う訳で、話を元に戻そう。


 スタートした参加者達が、一つの塊となって広場から出て行く。


 『ヌーの大移動』に匹敵する迫力だ。


 しかし、この状態はそう長く続かないだろう。


 優勝者は、一人しかなれないのだから。


 「朕は国家なりッ!!朕の走りを邪魔する奴は、全員『国家反逆罪』だ!!捕まりたくなければ、今すぐ道を開けろ!!」


 先に仕掛けたのは、ウマシカ王子。


 彼は、誰よりも前に出たいのだが、前後左右囲まれて思い通りに動く事が出来ず、イラついているようだった。


 そんな彼の言葉に、同じくイラついていた他の参加者が、こう言い返す。


 「うるせぇッ!!ロイヤル馬鹿は、引っ込んでろッ!!」


 「何ィッ!?」


 イライラ・・・大爆発!!


 すかさず声のした方を向き、犯人を捜し始める。


 そいつは、すぐに見つかった。


 「今の聞こえたぞ、貴様ァッ!!朕は国家なので、『国家侮辱罪』だ!!兵士ィィィーーーーーッ!!」


 「ははぁっ!!」


 「おおっと、ここでウマシカ王国の兵士数名が、乱入しました!!序盤から、いきなりカオスな展開です!!」


 「見ている分には、めっちゃ楽しいです。」


 コース脇から予め待機していた兵士達が、次々と参加者集団に襲い掛かる様子を見て、興奮気味に実況するアディと、お笑い番組でも観ているかのように楽しむコンバー。


 これにより数名が『リタイア』となり、集団がバラけ始める。


 そんなこんなで、参加者達は『補給ゾーン』に辿り着いた。


 「ここで補給ゾーンに突入!!テーブルの上に置かれた補給食入りの紙袋を、一人につき一つ、取る事が出来ます!!」


 両サイドに長いテーブルが数台設置されており、その上に紙袋が参加者と同じ数だけ置かれている。


 紙袋を一つ一つ見てみると、膨らみ方がそれぞれ異なっているので、中身は全部違う物なのだろう。


 ウマシカ王子は、一番最初に目に付いた紙袋を手に取った。


 「ほう・・・では早速。」


 そう言って中身を取り出すと、それは紙カップに入った球体のアイスだった。


 しかも、ダブル!!


 ご丁寧に、透明な蓋が被されており、その上には木製の小さなスプーンがセロテープで貼られている。


 「ああっと!!あれはアイス・・・キンキンに冷えた、『バニラと黒ゴマのミックスアイス』です!!夏なら最高の補給食ですが、真冬にこれはちょっと・・・」


 「ふむ、丁度体が熱くなっていたところだ・・・朕の栄養になる事を許す。」


 カパッと蓋を開け、剥がしたスプーンで一口すくい、口に運ぶ。


 すると次の瞬間ッ!!


 「美味(ウマ)ァァァーーーーーーーーーーッ!!」


 歓喜の叫びと共に、彼の体が光に包まれた。


 そして数秒後、光が消えると彼は・・・


 ・・・シマウマになっていた。


 「おおっと!!補給食を食べたウマシカ王子が、シマウマになりました!!」


 「走るスピードが、とても速くなります。」


 実況の二匹が特に驚いていないところを見るに、どうやらそういう仕様のようだ。


 アイスを完食したウマシカ王子は、カップをその辺に捨て、再びゴールを目指して走り出した。


 コンバーの言う通り、走るスピードがとても速くなっている。


 先に補給食を完食し、前を走っていた参加者達の殆どが、物凄い勢いでやって来た彼にコース外まで弾き飛ばされた。


 「フハハハハハ!!何か知らんが、体がドンドン進んでいくぞ・・・このスピード、車以上だ!!」


 「ウマシカ王子、シマウマパワーで他のランナー達を片っ端から蹴散らしていきます!!」


 「オンラインでレースゲームやってると必ずいますよね、ああいうの・・・『無敵アイテム取ったら、わざとぶつかって来る奴』。」


 これにより、ウマシカ王子が堂々の一位!!


 抜かされた者達の殆どが『リタイア』した事で、ほぼ独走状態である。


 果たして、こいつを抜かせる者は現れるのだろうか・・・!?




 一方、場面は『補給ゾーン』へと戻る。


 そこでは参加者の一人である一般男性が、紙袋を念入りに選んでいた。


 いや、『どの紙袋にするか迷っている』と言った方が適切か。


 何せ、当たりを引く事が出来れば、大逆転も容易なのだから。


 とはいえ、そう迷ってばかりもいられない。


 この間にもウマシカ王子は走り続けている。


 早くしないと、せっかく良い変身を引けたとしても無意味になってしまうので、そろそろ決めた方が良いだろう。


 「オ、オラ・・・オラは・・・!!」


 迷いに迷った末、一般男性は右手の近くにある紙袋を掴む。


 そして、すぐさま中身を確認すると、そこには厚めの肉が四切れ刺さった串が一本入っていた。


 炭火の良い香りが、一般男性の鼻腔をくすぐる。


 「これは、『炭火豚カルビ串』ッ!!その名の通り、豚カルビを串に刺して炭火でじっくり焼き、黒コショウをパパッと振りかけた一品です!!」


 「恐らく補給食の中では、一番の当たりですね。果たして、変身の方はどうなんでしょうか。気になります。」


 二匹が実況している間に、肉をガツガツ頬張り、完食!!


 謎の光が、一般男性を包み込んだ。


 「さぁ~て、変身は・・・」


 こうして彼は・・・


 ・・・巨大な豚になった。


 「豚・・・・・・豚です!!それもかなりデカい!!何なんでしょうか、あの豚はァ~ッ!?」


 力が(みなぎ)って来たのか、一気に走り出す一般男性。


 サイズがサイズだけに、あらゆる物を破壊し、蹴散らしている。


 当然、彼の前を走る参加者も例外ではない。


 「ヒィ~ッ!!」


 「うわああああああああああ!!」


 悲鳴を上げながら、次々とペシャンコにされる参加者達。


 『のしいか』もびっくりなレベルのペラペラ具合だ。


 勿論、レースを続ける事は不可能なので、被害に遭った彼等は全員『リタイア』である。


 「巨大な豚となった彼が、他のランナー達を踏み潰していきます!!」


 「オンラインで・・・・・・いや、二度目は言わないでおきます。」


 「これで参加者の殆どが『再起不能』!!レースは、ウマシカ王子と一般男性の一騎打ちに・・・あっ、ちょっと待って下さい。いる・・・いました!!無事な参加者が一人だけ・・・!!」


 アディがそう言うと、映像が一般男性を追いかけているドローンの物から、『補給ゾーン』前に設置してあるカメラの物になる。


 するとそこには、土煙を上げながら全力疾走している一人の男が映っていた。


 桃太郎である。


 「陰キャです!!陰キャがまだ残っていました!!」


 「恐らく最後尾だったので、二人の犠牲にはならなかったのでしょう。『ドベの功名』ですね。」


 そんな(ことわざ)は無い。


 一方、桃太郎は『補給ゾーン』に入り、適当に取った紙袋から中身を取り出していた。


 「何だ、これは・・・?金色の焼き芋?バナナでもキノコでもなく・・・?」


 キンキラキンでホックホクなそれを見て、一瞬困惑するも、とりあえずガツガツ食べる。


 アディとコンバーは、ワクワクした様子でそれを見守った。


 「陰キャも補給食を食べました!!さぁ~て、何になるんでしょうか・・・」


 「楽しみですね。」


 ところがどっこい!!


 光にこそ包まれたものの、桃太郎は変身しなかった。


 これには実況二匹だけでなく、観客もガッカリだぜぇ~。


 「あ~、変身しませんでした。ノリが悪過ぎます!!」


 「そういうとこなんですよね。だから、陽キャから煙たがられるんですよ。」


 「やかましいわ!!」


 実況二匹に対し、思わずツッコミを入れる桃太郎。


 するとその時、


 「うっ!!」


 彼のお腹に異変が生じた。


 何と言うか、空気がパンパンに溜まって来ている感じがしたのだ。


 さすがにこのままでは走行に差し支えるので、彼はこっそりその空気を抜く事にした・・・


 ・・・次の瞬間ッ!!


 「おおっとォ!?」


 彼の姿が『補給ゾーン』から消えた。


 空気を抜くと同時に、物凄い速度でダッシュしたのだ。


 これは一体どういう事なのだろうか。


 実況二匹も、あまりにも突然の事だったので驚いている。


 「い・・・陰キャが急に超加速!!これは一体・・・」


 そして、判明する・・・・・・その理由が!!


 「ああっ!!オナラ・・・オナラです!!物凄い量のオナラが、陰キャのケツから噴き出しています!!」


 なんと、さっき食べたゴールデン焼き芋の効果で、ジェット噴射のようなオナラが出るようになったのだ。


 一回ブッと出す度に超加速を与えるそれは、レースにおいて『チート級の効果』と言わざるを得ない。


 さすがは『主人公』・・・良い効果を引き当てた!!


 だが、見て()れは凄く格好悪い。


 彼の追い上げを見たコンバーは、呆れた感じにこう言う。


 「新年早々、何やってるんですかねぇ・・・汚過ぎます。」


 「いやしかし・・・しかしですよ、前を走っている二人との差がどんどん縮まっていきます。これはもしかすると、もしかしますよ!!」


 アディがそう言っている間に、横並びで走っているウマシカ王子と一般男性の間に、桃太郎が後ろから加わる。


 二人共変身は解けており、桃太郎も丁度ゴールデン焼き芋の効果が切れたようだ。


 ウマシカ王子は、後から来た桃太郎を邪魔くさそうに見る。


 「ぬぅっ・・・貴様は、いつぞやの陰キャ!!」


 「げっ!!(コイツも参加してたのかよ・・・)」


 どうやら桃太郎は、今気付いたようだ。


 ついでに一般男性も、彼を邪魔くさそうに見る。


 「おい、今更優勝争いに割り込んで来るなよ。『ご都合主義』が過ぎるぞ、あんた。」


 「お前は、誰だよ!!」


 「さあ、三人が横一列に並びました。変身も解けた今、本来のスピードで勝負となります。」


 ゴールの神社が三人の視界に映り、各々がラストスパートに突入!!


 脚が千切れるのを覚悟で、優勝を狙う!!


 そりゃあ、そうだ。


 このレースにおいて、一位と二位では『雲泥の差』がある・・・ッ!!


 二位じゃあ『福男』にもなれんし、賞金と肉も貰えない!!


 一位・・・!!一位でないと駄目なのだ!!


 「(賞金と肉は、俺が貰うッ!!)」


 「(朕は国家なりッ!!『朕が負ける』と言う事は、『国家が負ける』という事!!あってはならないッ!!そんな事ォ~~~ッ!!)」


 「(『福男』になって、今年こそモテモテにィ~ッ!!)」


 ゴールラインまで、あと少し。


 果たして、この三人の内、誰が優勝するのか・・・!?


 その答えが今ッ!!出ようとしているッ!!


 「ゴォォォーーーーーーーール!!」


 アディの声と観声が神社・・・いや、ウマシカ王国中に響き渡る。


 ゴールラインを越えた三人は力尽き、勢いが付いたまま地面を転がっていく。


 目視では三人同着に見えたが、果たして・・・!?


 「三者、同時にゴールインしたように見えました。判定は、ゴールラインの両サイドにいるロボットに委ねられます・・・・・・あっ、判定の結果がたった今出たみたいです。果たして、優勝は誰になるのでしょうか・・・!?」


 そして、実況二匹と観客が固唾を呑んで、神社のド真ん中に設置されたスクリーンを見る。


 映し出されたのは、縦並びになった三人の名前。


 次にその横へ、各々のゴールタイムがドンと表示される。


 一緒だ・・・コンマ以下の数字も、全部!!


 つまり、本当に同着・・・!!


 優勝は三人・・・!!


 「おおっと!?コンマ一秒の差も無く、三人同時にゴールしていたようです!!こっ・・・これは凄い!!このレース始まって以来、初めての同着ゴールだァ~~~!!」


 ワアアアアアア!!と、大盛り上がりの観客達。


 新年早々に起こった、この奇跡・・・・・・今年は、良い年になりそうだ。






 ところがそれからすぐ、主催者である知井が副賞のお肉を全部平らげていた事が判明。


 副賞は無しに・・・!!


 これにより、肉を楽しみにしていた桃太郎とメタリー、ニシキから恨みを買う事となる。


 ウマシカ王子は、勝つ為にわざと他の参加者達にぶつかった事で、被害者及びその家族からの支持を失った。


 一般男性は、巨大な豚に変身した時あちこち破壊した為、賞金はゼロ。


 それどころか、数百万の弁償!!


 桃太郎は、わざと他の参加者達にぶつかる事もしなければ、あちこち壊しもしなかったので、賞金はちゃんと貰えたが・・・・・・オナラのくだりで、大切な『何か』を失った。


 しかし、『人生』とはそういうもの。


 幸運があれば、不運もある。


 『福男』になったからといって、『幸運のみの人生』にはならないのだ。


 だから我々は、今年も生きていく。


 少しでも多くの幸運と巡り遭う為に・・・。

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