木曜日のエピローグ
メタリーに乗って急いで屋上から飛び立った桃太郎達は、そのまま少し離れた所で廃ホテルが崩壊していく様子を見ていた。
「は・・・廃墟がこうもあっさりと・・・!!」
「すっげぇー迫力ッス・・・・・・ビルとかの解体作業をわざわざ見に来る奴の気持ちが分かった気がするッス。」
「いや~、あのまま屋上にいたらどうなっていた事か・・・とにかく全員無事で良かったですね。ねーねーねー。」
「ん?」
ここで桃太郎が、メタリーの発した台詞に引っ掛かるものを覚える。
「全員・・・?」
そして、気付く。
虫二匹がいないという事に・・・!!
恐らく、まだ一階のロビーにいるものと思われる。
「ゴキブリ!!フンコロガシィィィーーーーーッ!!」
メタリーを下ろさせ、ついさっきまで『廃ホテル』だった瓦礫の山に向かって走っていく桃太郎。
すると、
「呼んだぁ?」
と、間の抜けた声が返って来た。
フンコロガシである。
声のした方へ視線を移し、よくよく見てみると、瓦礫と瓦礫の隙間から彼が顔を出していた。
土埃とかで汚れてはいるが、怪我をしている感じではなさそうだ。
「フンコロガシ・・・無事だったか!!」
「ノーシット(当たり前だろ)!!僕等は、当たり判定が小さいからね。瓦礫に潰される事は滅多に無いよ。」
続いてゴキブリも、近くの隙間から顔を出し、自身の無事を報告する。
「ゴキブリも大丈夫だぜぇ~。」
これを聞いた桃太郎は、心底ホッとし・・・
「よ・・・良かったァ~~~・・・」
意識を失った。
「ああっ、兄貴ィッ!!」
「陰キャァッ!!」
「ゴキブリもびっくりだぜぇ~。」
「おやおやおや・・・」
崩れ落ちるように倒れた桃太郎を見て、仲間達全員が駆け寄る。
ほとんどの仲間が驚いたり、青ざめたりする中、メタリーのみが冷静・・・というより、いつもと変わらぬ様子だった。
彼は、倒れた桃太郎をまじまじと見た後、こう口にする。
「・・・どうやら眠っただけのようですね、ねーねーねー。」
一同、ズッコケそうになるも、寸前の所で持ち堪える。
恐らく安心した途端、疲労が一気に押し寄せて来たのだろう。
無理も無い。
『木曜日』戦は、体力よりも精神力を消耗する戦いだったのだから。
これに対し、虫二匹は安心しつつ、呆れた感じにこう言った。
「なぁ~んだ。」
「ゴキブリ、びっくりして損したぜぇ~。」
一方ニシキは、こう提案する。
「それじゃあ、このまま寝かせときやしょう・・・・・・あっ、でも地べたに寝かせるのは忍びないッスね・・・え~っと・・・・・・」
辺りを見回し、寝かせるのに最適な場所を探す。
そして、それはすぐに見つかった。
別館である。
「あっ!!あそこの建物なら、布団か何かあるんじゃあないッスか!?」
「ゴキブリ、さっき陰キャと一緒にあそこいたけど、それらしき物は無かったような気がするぜぇ~。」
「そうなんスか?でもまあ、地べたより絨毯か畳の上で寝た方が目覚めも良いと思いやスんで、行きやしょう!!」
すると次の瞬間、別館が音を立てて崩壊した。
本館と同じように瓦礫の山と化したそれを見て、ニシキは言う。
「・・・・・・地べたに寝かしやしょう!!」
そして時は流れ、お昼過ぎ。
平原の土の上で目覚めた桃太郎は、目の前にある瓦礫の山々を見た後、色々と思い出し、大きな溜め息を漏らした。
「やれやれ・・・最悪の木曜日だったぜ・・・」
数時間後、彼等はメタリーの上に乗って、『ウマシカ王国』を目指していた。
「元気無いッスね、兄貴。もっと寝てた方が、良かったんじゃあないッスか?」
ニシキの声に、げっそりとした顔の桃太郎が振り向く。
まだ疲労が回復していないというのもあるが、これからやらなくてはならない事(アルバイトに遅れた事をマリーに説明する等)を考えると、億劫な気持ちになって元気が出ないのだ。
そして、それを一々言うのは面倒臭いので、
「いや、大丈夫だ・・・・・・有り難う。」
とだけ答えた。
これを受け、フンコロガシがラップに包まれた茶色い物体を取り出し、彼に差し出す。
「うんこ食べる?」
「要らんッ!!」
即答だった。
しかし、元気は出た模様。
これも『うんこ』の力か。
そんなやり取りをしていると、メタリーが突然ブレーキを掛けた。
桃太郎達は危うく落ちそうになったが、何とか耐える事に成功。
ホッと一安心した所で、桃太郎はメタリーに声を掛けた。
「どうした!?」
するとメタリーが、進行方向へ右前脚を向けてこう言う。
「あれ見て下さい。さいさいさーい。」
「え?」
そう言われ、桃太郎達が一斉にそっちを見る。
瞬間、彼等の視界に映ったのは・・・
「なっ・・・何ィ・・・」
「ゴキブリもびっくりだぜぇ~。」
黒煙を上げて燃えている、ウマシカ王国だった・・・




