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苦労せずに手に入れた力は大体身に付かない

 ブラッディを何とか倒した桃太郎は、その場に腰を下ろした。

 「ふう~・・・一時はどうなるかと思った・・・。」

 今更青ざめたのか、桃太郎は冷や汗をだらだらと流している。

 「助かったぜ、メタリー。ありがとな。お前がいなかったら確実に俺の負けだった。」

 「へ・・・へへへ~・・・もっと感謝しても・・・良いんですよ・・・?」

 桃太郎は、とりあえず近くで甲羅に入ったままのメタリーにお礼を言った。メタリーは、目を回しているのか言葉にいつもの元気が無い。

 「さてと・・・こいつ、どうしたろうかな。」

 ゆっくりと立ち上がった桃太郎は、気を失っているブラッディの元へ歩み寄った。

 「何かさっき、気になるワードを言っていたんだよな。『あの方』とか『不安材料』とか。一体何の事なんだろうな?・・・分かるか?」

 桃太郎は、メタリーの方を振り向いて聞いた。メタリーは、甲羅から手足を出した後に頭をひょこっと出して言った。

 「さあ?・・・それだけでは分かりませんね。そうだ!!この人を無理矢理叩き起こして聞き出しましょう!!甲羅の中に録音機があったはずなので、証言も残しておきましょう。」

 「録音機まであんのかよ・・・便利な甲羅だな。」

 メタリーは甲羅の中から録音機を取り出して、ブラッディの胸板に乗っかった。そして、両手にぺっぺっと唾を吐いて素早くこすり、大きく振りかぶって強烈なビンタをくらわした。

 「てぇいッ!!」

 パーンという乾いた音が響き渡った。しかし、ブラッディは起きる気配がない。メタリーは、むすっとした。

 「中々しぶといですね・・・ぺっぺっぺっ。」

 「お前、ビンタする前に自分の手に唾付けるのには何か意味でもあるのか?」

 「いいえ、ありません。」

 最早、嫌がらせ以外の何物でもない。桃太郎はメタリーの行動に引きながら、気を失っているブラッディがビンタされている様子をただただじいっと眺めているしかなかった。何回もビンタしている内にブラッディは目を覚ました。

 「ん・・・んん・・・」

 その時、ブラッディが目にしたものは、もう一度ビンタしようと振りかぶっていたメタリーの姿だった。

 「うおうッ!?」

 ブラッディは起き上がった。メタリーは、起き上がられた事で胸板から転げ落ちた。そして、だれにも聞こえない位の音量で舌打ちした。メタリー自身は誰にも聞かれていないと思っているが、桃太郎にははっきりと舌打ちの音が聞こえていた。

 「(この亀・・・)」

 桃太郎は、その場で溜息を吐いた。

 「クソッ!!俺を尋問する気か!?・・・そうはいくか!!」

 さっきまで気を失っていたのが嘘のように俊敏に立ち上がるブラッディ。桃太郎は、取り押さえようと手を伸ばしたが掴む前にブラッディが青い光に包まれた。

 「しまった!!これは・・・」

 「『静脈ブースト』。これで逃げ切ってやる。」

 ブラッディは、桃太郎の背後に回って言うと、そのまま街の方へ走って逃げた。・・・にしても、何故気を失っている間に縄でブラッディを縛るなり何なりしなかったのだろうか。マヌケとしか言いようがない。

 「確か、スピードを上げるブーストだっけか!?クソッ!!こうなったら・・・」

 桃太郎は、ちらっとメタリーを見た。

 「え?ちょっ・・・待って下さいよ。・・・何ですか?」

 何故、桃太郎が自分を見ているのか分からないメタリーは困惑した。桃太郎は、そんなメタリーを気にせずに言った。

 「さっきみたいに甲羅に入れ。」

 「ええ!?」

 「早くしろッ!!」

 「は・・・はいぃッ!!」

 桃太郎の威圧にメタリーは素早く甲羅に入った。そして、メタリーを縦にして置くと桃太郎は右足を大きく振りかぶり、鋭い眼光で言った。

 「くらえッ!!これが俺の必殺ゥゥゥー・・・『インキャーショット』だッ!!」

 即席で考えた必殺技の名前を言い終わると、雄叫びを上げながら力を込めて思いっきりメタリーを蹴った。

 「うおおおおおおおおおッ!!」

 桃太郎が蹴ったメタリーは、まるでレーザービームのように天空に向けて一直線に飛んで行った。その様子を逃げながら見ていたブラッディは、桃太郎が追って来ないのが分かると足を止めて、

 「フッ、ノーコンが。どこに向かって蹴っているんだ。」

 と、勝ち誇った顔でほくそ笑んだ。しかし、メタリーは蹴られる瞬間に自ら甲羅を回転させていたので、ある程度の高さまでいくとまるでドライブ回転がかかったボールのように降下した!!これには、ブラッディも驚いた。

 「何!?ちょっと待て!!そんなの有りかよ!?」

 再び足を動かして直撃を回避しようとするブラッディ。だが、反応がちと遅かった。桃太郎に蹴られたメタリーは回転しながら加速していた為、降下スピードもその分速くなっている。それでも、足さえ止めなければ回避出来たものを止めてしまったが故にブラッディは攻撃を喰らう事となった。

 「もっと・・・もっとスピードを出し・・・がっはあッ!!」

 街に入る手前でブラディの背中にメタリーが直撃した。その衝撃により、ブラッディの体は吹き飛ばされながら大きく一回転した後、ゴロゴロと地面を転がっていった。メタリーもぶつかって終わりではなく、車から外れたタイヤの様にコロコロと数メートル転がっていき、最終的に側面に倒れてひっくり返った状態になった。背中にダメージを負ったブラッディは、立つ事が出来ずにアザラシのように腹這いで、街ではなく左側にある近くの草木が生えた場所まで必死に移動した。

 「クソ・・・ここで捕まってぇ・・・たまるか・・・植物の・・・陰に隠れて・・・あのお方にぃ・・・連絡せねば・・・」

 体を引きずりながら草むらに入ったブラッディは、桃太郎や通行人にバレないような場所を探した。そして、地面が見えないくらいボーボーに生えている雑草と大きな木の陰で周りから比較的見え辛い場所を見つけ、そこに身を潜めた。

 「とりあえず・・・今はここに隠れていよう・・・」

 身を隠す場所が見つかって安心したのか、そこからブラッディの意識が途絶えた。

 一方、桃太郎はメタリーを回収する為に落下地点へ走って行っていた。監禁されていた建物から落下地点の場所を考えると、かなりの飛距離である。元々桃太郎にこんなキック力は無いので、これもラピスの力によるものなのだとすぐに理解出来た。

 「それにしても・・・結局、ラピスの力が具体的にどんな物なのかが分からなかったなあ。ただ単に俺の全ての身体能力を上げたというだけのふわっとした感じで終わってしまったし・・・・・・おっ、いたいた。」

 桃太郎は、道の端っこで甲羅に籠ったままの状態のメタリーを見つけ、ついでにひっくり返っていたのを直してあげた。

 「おい、大丈夫か?」

 蹴った本人が何事も無かったかのように涼しい顔でメタリーに問いかける。ブラッディに攻撃を加えるというのが目的とはいえ、もしかしたら桃太郎は、どさくさに紛れて今までの仕返しをしたのかもしれない。

 「う・・・う~ん・・・」

 さっきから何度も回転したせいか、今にもゲロを吐きそうな位顔が青くなっていた。

 「・・・よし、そのまま休んでろ。あの男は俺一人で捕まえる。」

 さすがにこれ以上、メタリーに負担をかけるのは良くないと判断した桃太郎は、メタリーを置いてブラッディを捜し始めた。

 「それにしてもアイツ・・・どこに隠れたんだ?モロに喰らったと思うから、走って逃げたとは考えられないんだが・・・何せ、ブースト中だったからなあ・・・スピードアップ効果以外にダメージカット効果も付いているんだとしたら、走って逃げれてもおかしくはない。」

 その辺をキョロキョロと見回す桃太郎。ふと、足元を見ると何かが這って行った跡があった。桃太郎は、一瞬でそれが『メタリーにぶち当たったブラッディが逃げようと必死になって這った跡』だと分かった。

 「成程・・・回復するまで草木の陰に隠れてやり過ごそうっていう魂胆か。しかし、今の体力では這うのがやっとで、この這った跡を消す程の余裕が無いとみた。・・・きっとこの草むらのどこかに奴はいるッ!!」

 どこかに隠れているブラッディを見つけ出そうと草むらに足を踏み入れた。すると、街の奥の方からドドドドドと音を立ててながら近づいて来る複数の足音がした。カナリアを追いかけていた騎士達である。

 「何だ?」

 桃太郎は、踏み入れた足を戻した。もしかしたら、どこにも書いていないだけでここの草むらは国有地なのかもしれない。明らかにこちらに向かって走って来る騎士達は、今まで散々トラブルに出くわした桃太郎にデジャブの戦慄を走らせた。

 「(ウマシカで色々あったせいか・・・ああいう大群見ると嫌な予感しかしないんだよな~。)」

 そして、その予感は的中した。気が付けば、騎士達は桃太郎の周りを囲んでいた。その集団のリーダーであろう一人の女性騎士が桃太郎の前に出て来た。

 「さっき、不審物が飛んでここら辺に落ちたのが見えた。おい、お前!!何か知らないか?」

 勝気な感じの女性騎士は、高圧的な態度で聞いてきた。『飛んできた不審物』とは、きっと『インキャーショット』で飛ばしたメタリーの事だろう。

 「さあ?分かりません。」

 桃太郎はとぼける事にした。ただでさえ、今はそれどころではない上に説明したところできっと信じない、信じようとしないのが目に見えているからだ。説明自体も面倒臭い。ここで、リーダーっぽい人の隣にいる銀髪の女性騎士が口を開いた。

 「そういえば、お前の顔は見た事が無いな。どこの者だ?名前を名乗って住所を言え!!」

 今の桃太郎にとって一番答えにくい質問である。何せ、攫われた身なので入国記録は当然無い。そうなると、またしても『不法入国』で捕まってしまう。だからと言って、嘘を吐いてもすぐにバレてしまい、結局は捕まってしまう。事情を話したとしてもこういう職の奴は絶対に信用しない。軽くあしらわれて終わりだ。そんな中、桃太郎はふと疑問を感じた。

 「(ん?じゃあ、俺を攫った二人はどうやって入国したんだ?車で入っても、入国前には中を隅々まで確認するだろうから俺がいたらそれなりに問題になりそうなものなんだが・・・)」

 質問に答えず、考え事をしている桃太郎にしびれを切らした銀髪が昭和の雷親父のように怒鳴り散らす。

 「いいから答えろッ!!このクソ陰キャ!!」

 「何で個人情報を赤の他人に言わないといけないんですか。」

 真顔でさらっと言い放った桃太郎に銀髪はイラッとした。その証拠に眉と目がピクピク動いている。リーダーっぽい人は銀髪を『まあまあ』と、なだめながら桃太郎に言った。

 「いいから答えろ。何もやましい事が無いなら答えられるはずだ。それに個人情報を気にしているのなら安心しろ。お前みたいな陰キャには興味無いし、年齢的にも許容外だ。私はショタコンなんだよ。」

 「いや、聞いてないです。」

 『私はショタコンだ。』と言われ、『だから何やねん。』と思った桃太郎は目の前にいる人間を変質者を見るような目で見た。そもそも今の桃太郎は、ブラッディを見つけ出して全てを吐かせないといけないので、騎士達に構ってる暇は無い。しかし、こうも周りを囲まれていると中々抜け出す事が出来ない。イチかバチか、桃太郎は賭けに出た。

 「あっ!!未確認飛行物体!!」

 天空に向けて指を立て、本当に未確認飛行物体を見たような感じに言った。桃太郎の言葉に騎士達一同が空を見上げた。

 「え、どこ!?」

 「本当に未確認飛行物体?うちらのとこの戦闘機じゃあないの?」

 「写真や動画でしか見た事無いから、これはシャッターチャンス!!」

 「・・・ところでその飛行物体はどこ?雲しか見えないんだけど・・・」

 「消えたのかな?」

 騎士達が未確認飛行物体を一目見ようと空を見上げて騒いでいる間、桃太郎は四つん這いになってハイハイをする赤ん坊の様に少しずつ、騎士達にバレないように包囲網を抜けた。そして、未だに顔を青くしているメタリーを回収すると、一目散に走って逃げだした。

 「(とりあえず、あの騎士達がいなくなるまで奴を捜すのは一旦中止だ!!奴がどこに潜んでいるのかは大体見当ついたし、俺との戦闘とメタリーの直撃ですぐには回復しないはず!!今は逃げる事だけに専念しよう。)」

 ここで首が疲れたのか、一人の騎士が空を見上げるのを止めて下を見た。そして、桃太郎がいない事に気付くと慌てた様子で言った。

 「あっ、取り囲んでいた陰キャがいません!!」

 「何ィ!?」

 「あの野郎、しょうもない嘘で私達を騙してみんなが上を向いている間に逃げたんですよ!!」

 「でも逃げたという事は、さっきの不審物・・・あの男が関係しているものと決めて大丈夫でしょう。」

 「それにあの体格・・・普段、運動していないタイプの人間だからまだ近くにいるはず!!追いかけるわよ!!」

 「はいッ!!」

 しょうもない嘘にまんまと騙された騎士達は、逃げた桃太郎を捕まえようと各方角に一斉に散らばった。



 一方、隙を突いて逃げ出した桃太郎は公衆電話を探していた。この前カナリアに貰った番号にかけて、助けてもらおうと思ったのだ。しかし、この世界もスマフォのような物が普及しているせいか、どこにも公衆電話や電話ボックスが無い。

 「クソッ!!どこにも公衆電話が無いッ!!何で無いんだ?全員が全員、あんな機械持っていると思うなよ!!」

 追い詰められているせいか、少し苛立っている桃太郎。そして、それに追い打ちをかけるように急に体が重くなったような感覚がどっと押し寄せて来た。

 「(奴との戦いで体にガタが来ているのか?だが、ここで休んでしまうとさっきの騎士連中に追いつかれてしまう・・・!!どこか・・・よし、ここだ!!)」

 桃太郎は周りを確認すると、その辺の路地裏に入ってゴミ箱の陰に隠れて一旦休むことにした。ハエとかがブンブン飛んでいるが今は場所を選んでいられる時間は無い。

 「(とりあえず、公衆電話を探してカナリアさんに連絡しないと・・・確かにラピスで俺の力が上がったとはいえ、戦いのプロ・・・それも集団相手には通用しないだろう。)」

 ふと、メタリーを見ると疲れているのか眠っていた。桃太郎はメタリーの寝顔を見て、『ふうっ』と羨ましそうに溜息を吐いた。

 「(やれやれ・・・俺も早く家に帰って一日中寝ていたいよ。)」

 ぼうっと上を見上げる桃太郎。ずっとここにいても状況は何も変わらない為、再び公衆電話を探そうと立ち上がった。

 「さてと・・・ん?」

 足に違和感を感じた桃太郎は、ふと足元を見た。そこには、オレンジジュースの空き缶が転がっていた。空き缶を見た桃太郎は何を思いついたのか、フッと笑った。



 「そっちにいた!?」

 「いいや、住人にも聞いたけどそんな人は見ていないって。」

 「こっちの方角じゃあなかったのかしら?早いとこ見つけないと、大惨事になるかもしれない。」

 各方角に散らばった騎士達は、あれから桃太郎をずっと探していた。その地域の住人や路地裏等、隠れそうなところを徹底的に調べあげたが何も進展が無く、時間だけがこくこくと過ぎていった。

 「一旦、他の班と合流しよう。私達は何も手掛かりは掴めなかったけど、他の班は掴んでいるのかもしれない。」

 「そうだね。じゃあ、B班と連絡を取ってどっか広いとこに集まりましょう。」

 スマフォのような物を取り出して連絡しようとした瞬間、目の前に堂々と歩く桃太郎の姿が見えた。勿論、ただ黙って見ているはずもなく、相方の肩をトントン叩いて桃太郎がいる事を知らせた。相方の騎士は、桃太郎を視界に入れるとにやりと笑って叫んだ。

 「見つけたぞ!!」

 その言葉は当然桃太郎にも届いており、一回後ろを振り向くとまっすぐ走り出した。

 「あっ待ちなさいッ!!」

 「もう、何で叫んじゃうかな~。コソコソと腕が届く範囲まで近づいて確保しようと思ったのに・・・」

 「アタシはそういうコソコソ何かをやるのは嫌いなんだ!!」

 二人の騎士が言い合いをしながら必死に桃太郎を追いかける。

 「(二人か・・・やはり、手分けして俺を探しているようだな。)」

 桃太郎は追いかけて来た騎士の数を確認すると、少し行った先にある自動販売機の前で止まった。

 「ん?逃げるのを止めたのか?」

 「最初からそうしておけば良いのに・・・」

 二人の騎士は、走るのを止めて歩き出した。桃太郎は、二人が早歩きではなく普通に歩いているのを確認すると、ポケットから空き缶を取り出して地面に置き、『インキャーショット』の体勢に入った。

 「今だくらえッ!!『インキャーショット』ォォォーッ!!」

 「なっ・・・こいつ・・・騎士である私達に向かって攻撃を・・・!!」

 「陰キャの癖に生意気だぞッ!!」

 とっさに防御態勢に入る二人。桃太郎は、二人の騎士のどちらかに当たるように狙いを定めて空き缶を思いっきり蹴った。

 「うおおおおおおおおッ!!」

 カァーンという音が響き渡る。蹴られた空き缶は、まるでレーザービームのよう一直線に飛んで・・・いくはずだった。そう、はずだった。つまり、飛んでいない。レーザービームどころか、蹴られた空き缶は数センチ先でバウンドして、コロコロと転がっている。それは、誰が見ても明らかに不発だった。

 「な・・・何ィ!?」

 桃太郎と二人の騎士は、『その場で何が起こったのか分からない』と言いたそうに固まっていた。二人の騎士は、いかにも強そうな技が来るんだろうと構えていたので、それが不発で拍子抜けした感じだろう。一方、桃太郎はまさかの不発で戸惑っている。そして戸惑いの中、何となく察した。

 「(しまった・・・ラピスの効果が切れたのかもしれん!!考えてみれば、ちょろっと飲んだだけでパワーアップなんて、そんな虫のいい話があるわけ無いッ!!調子に乗って、この力がどんなものなのかって試さずにそのまま公衆電話を探して、カナリアさんに連絡しとけば良かったんだ!!さっき、走っている時に重く感じたのは、さしずめ効果が切れた合図といったところだろう。クソッ!!判断を誤ったッ!!)」

 じりじりと、後退する桃太郎。そして、自動販売機のゴミ箱を開けて

 「ま・・・まんまと騙されたなバァァァァァァァァァカッ!!空き缶をばら撒いてやるぜ!!」

 と、セリフまで小学校低学年くらいに後退してゴミ箱の中身をひっくり返し、空き缶の雪崩を起こした。その時の桃太郎の顔が少し赤くなっていたのは、気のせいではないだろう。ついでに空のゴミ箱を二人に投げつけた。ゴミ箱は真っ二つに切れた。

 「・・・陰キャの癖に人を馬鹿呼ばわりするとはけしからん。ぶった斬ってやる・・・」

 「ええ、あの陰キャに目にもの見せてやりましょう。」

 二人が走り出そうとした瞬間、二人共空き缶を踏んで盛大にずっこけた。まるでコントのようだ。

 「(不幸中の幸いって奴か。転んでモタモタしている間に遠くに逃げてやる。)」

 桃太郎はその後、一度も後ろを振り返る事無く、体力の許す限り必死に走り続けた。

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