番外編 陰キャとチー牛
2021年最後の異世界陰キャ!!
どうぞ、お楽しみください。
(CM)
ナレーション)「デラックス・ダークマター【UNKnown】!!」
ナレーション)「投げて良し、蹴って良し、ぶつけて良しの安心素材で出来たダークマター!!」
ナレーション)「専用のアプリとリンクして、自分だけのオリジナルダークマターに育て上げ、敵を撃破だァッ!!」
ナレーション)「『異世界陰キャ・DXダークマター【UNKnown】』、おもちゃ売り場で!!」
フンコロガシ)「『異世界陰キャバトルドーム』も出たァ!!」
桃太郎) 「でもこれ・・・専用のアプリを使わなかったら、ただの大きくて茶色いゴムボールだよな。」
メタリー) 「それを言っちゃあ、お終いですよ。ヨーヨーヨー。」
ウマシカ王国・某所の路地裏。
そこで一人の陰キャな男子高校生が、複数人の不良に囲まれ、カツアゲされそうになっていた。
後ろは行き止まり。前方は、逃走経路を塞ぐように不良達が横に並んでおり、少しずつ彼に近付いて来ている。
最早、どうする事も出来ない状況!!『万事休す』とは、こういう事を言うのだろう。
『もう逃げられない』と覚った男子高校生は、目に涙を浮かべて叫んだ。
「や、やめてくれ~!!」
そして、同時に腰を抜かした。
あまりの恐怖に、立つ力すら消え失せてしまったのだ。
しかし、そう叫んだところで、やめてくれるような不良達ではない。だって、『不良』だもの。
「ああん?『やめてくれ』だぁ?『やめて下さい』だろ!?人に物を頼む時はよぉ~!!」
センターの男がメンチを切りながら、男子高校生の腹に一発蹴りをかます。
すると、仲間の不良達も次々と彼に暴行を加え始めた。所謂、『リンチ』ってヤツである。
男子高校生は咄嗟にダンゴムシのように丸くなって防御したが、彼の背中は硬いもので覆われていないので、ダメージが軽減される事は無かった。
「痛い痛い痛い!!暴力はやめて下さい!!財布にあるお金、全部あげますから!!」
ついに四方八方からの蹴りの痛みに我慢出来ず、お金を渡すことにした男子高校生。ポケットから財布を取り出し、不良達に献上した。
「おお、そうか。ありがと・・・よッ!!」
財布に近い不良がそれをブン取り、トドメと言わんばかりに彼の顔に蹴りをくらわす。
「ぐえぇっ!!」
男子高校生は、鼻血を流しながら、その場にぶっ倒れた。
一方、不良達はというと・・・
「ったく、最初からそうしろってんだよな。」
「おっ、三万も持ってやがるぜ、こいつ。」
「え?マジかよ、ラッキー。それで焼き肉食いに行こうぜ。」
とか、仲間同士で話し合っていた。
「おっ、良いねえ。俺ん家の近くに美味い焼き肉屋が出来たから、そこへ行こうぜ。」
「さんせーい。」
そして、彼等がその場から立ち去ろうとした時、
「待てぃ!!」
上の方から男の声が聞こえて来た。
「!! 誰だ!?」
声がした方へ一斉に顔を向ける不良達。
そこにいたのは・・・
「我が名は『チー牛レッド』ッ!!全ての陰キャの味方で、お前等の敵だ!!」
と、名乗る、戦隊ヒーローみたいな赤い奴だった。
因みに今日は、土曜日の昼前。日曜日の朝ではない。
不良達はざわついた。
「ああん?『チー牛』だぁ?ふざけた名前してんなぁ、オイ。」
「っていうか、部外者は引っ込んでろよ!!」
「お前もこいつみてぇーにしばかれたいんか?ああん?」
「降りて来いや、オラァ!!てめえの財布も盗んで、もうワンランク上の焼き肉屋でパーリィしてやる!!」
「大体お前、そんな格好で出歩いて、恥ずかしくないのかよ。」
「ギャハハハハ!!確かに。」
チー牛レッドは、何かカチンと来た。
「むむっ、どうやら口の利き方を知らないようだな。人と話す時は、相手に敬意を払うものだ。これでも喰らえッ!!」
そう言いながら、彼は両手で逆さのハートを作り、それを不良達に向ける。
すると、
「『チー牛ビーム』!!」
という彼の掛け声と共に、そこからレーザービームのようなものが発射された。
「なっ・・・何ィ!?ぐあああああああああああああああっ!!」
まさかビームが出るとは思わなかった不良達。避ける間もなく、全員ビームの餌食になった。
「ああああああああああああああ!!」
まるで電撃を喰らっているかのような悲鳴。どうやらこのビームには、それだけ痺れるものがあるらしい。
ビームが終わると、不良達は地面に突っ伏した。
「て・・・てめえ・・・何しやが・・・・・・」
シュタッと、地面に着地したチー牛レッドにガンを飛ばす一人の不良。
その時、
ドックン!!
彼の心臓が大きく鼓動した。
そして、
「!!?な・・・何だこの感じ・・・急に『チーズ牛丼』の大盛りが食いたくなって来たぞ・・・」
何故か『チーズ牛丼』を食べたいという欲求に駆られた。
これは、彼に限った話ではない。ビームを喰らった他の不良達も、
「こっちもだ・・・どういう訳か、体が『チー牛』を欲してそわそわしているッ!!」
「チー牛・・・ああ、俺にチー牛をくれぇ~~~・・・」
と、揃いも揃って『チーズ牛丼』を欲している。その姿、酒を飲まずにはいられない『アル中』のそれである。
勿論、中にはそんな物を欲していない不良もいるにはいるが・・・
「オイラは早く家に帰って、アニメが観たくなった・・・日常系のクソつまんねえ『萌えアニメ』をよぉ~・・・」
「ああもう、無性に萌えてぇ~なあ!!誰か、俺を萌やしてくれぇ~~~!!」
そいつ等はそいつ等で、別の欲求に駆られていた。これはこれでヤバい。
するとここで、チーズ牛丼に対する欲求が抑えきれなくなった一人の不良が、牛丼屋を求めて走り出した。
「も、もう我慢出来ねえ!!今すぐ牛丼屋に行って、チーズ牛丼を食ってやる・・・牛丼屋はどこだァァァーーーーーーーーーーーーッ!!」
そして、それを皮切りに、
「あっ!!ずるいぞ、てめえ!!」
「待ちやがれ!!一番乗りは、この俺だ!!」
次々とチーズ牛丼を求める不良達が、牛丼屋を目指して走り出した。
「牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼、牛丼・・・・・・」
『牛丼』という単語をブツブツ繰り返しながら、街中を走り回る不良達。その光景は、『シュール』と呼ぶより他は無い。
そして、走り続ける事、約十分。
ついに彼等は、一軒の牛丼屋を見つけた。
「あったァァァーーーーーーーーーーーーッ!!」
その店の名前は、『イヤ家』。この世界で最も有名な牛丼屋のチェーン店である。
彼等は見つけるや否や、我先にと、入り口の扉を乱暴に開けて、中に入っていった。
「すいまっせぇぇぇーーーーーーーん!!!『チーズ牛丼』大盛り、つゆだく下さぁぁぁーーーーーーい!!!あ、半熟玉子トッピングで!!」
「俺も俺も!!」
「こっちは『チーズ牛丼』大盛りのキムチトッピングを・・・」
「俺、『チーズ牛丼』大盛りのみ!!」
各々がカウンター席に座り、手を挙げて注文する。その姿、まるで口を開けて、『餌をくれ』とアピールしている雛鳥である。
女性の店員は、そんな彼等の姿に苦笑いしながらも、
「かしこまりましたぁ~。」
と、一人一人、丁寧に注文を承った。
それから数分後。
「お待たせしましたぁ~。」
不良達の目の前に、チーズ牛丼(と、各々が頼んだトッピング具材)が現れた。
「おおっ!!」
未知の食べ物の登場に、感嘆の声を上げる不良達。
割り箸を取り、丼ぶりをガシッと持つと、一気に流し込むように食べ始めた。中々良い食べっぷりである。
そして、口の中一杯にチーズ牛丼が入ると、一旦丼ぶりを置き、もぐもぐと咀嚼する。30回以上噛むと、ごくりと飲み込んだ。ここまで、全員同じ動き、同じタイミング。
「うんめぇぇぇ~~~~~~~~~~~~~~!!」
「たまんねぇぇぇ~~~~~~~~~~~~~~!!」
「人類の誇りだぜ、『チーズ牛丼』ッ!!」
感想は、人それぞれ。だが、どいつもこいつも『美味い』という評価だった。
それから彼等は、米粒一つも残さず、全部平らげたという。
一方、『萌えアニメ』を求めていた不良達はというと・・・
「家に帰るまで、我慢出来ねえ!!自分の携帯で観てやる!!」
「これを機に、『ミシシッピプライム』に加入してやるぜ。」
「オラは、『ナットブリックス』。」
各々が携帯端末を取り出し、その場に座って萌えアニメを観始めた。
「うほ~っ、この『萌えアニメ』たまんねぇ~!!」
「陰キャ共が夢中になる訳だ。」
「ああ、二次元の味を知ってしまった俺はもう・・・・・・元には戻れねえ!!」
画面の中の美少女に萌える彼等の姿は、正にキモオタのそれ。
そこに『不良としての威厳』は一切無く、代わりに『キモオタの貫禄』が付き始めていた。
「ハッハッハッハッハッ!!」
チー牛レッドの高笑いが、路地裏中に響き渡る。
遅ればせながら、解説しようッ!!チー牛レッドの必殺技の一つ、『チー牛ビーム』を喰らった者は『チーズ牛丼』が大好物となり、全ての『萌えアニメ』を好きになってしまうのだッ!!まあ要するに、喰らった者はもれなく全員、陽キャから陰キャになってしまうという事だ。人によっては、かなり恐ろしい効果を持ったビームである。
チー牛レッドは、カツアゲの被害者である男子高校生の肩に手を置き、陰キャになってしまった不良達を指差した。
「これでもう、彼等は君を虐めない。それどころか、『生涯の友』になってくれるぞ。何てったって、私の『チー牛ビーム』の効果は、死ぬまで一生消えないからね。はい、これ。彼等に盗られた三万ウマシカドルと・・・駅前の牛丼屋の割引券だ。これで『チーズ牛丼』を食べなさい。」
そう言うと彼は、男子高校生の掌の上に、三万ウマシカドルと『牛丼系10%OFF』と書かれた券を置く。券の有効期限は、来月いっぱいまで。他のクーポン券との併用は不可との事。
男子高校生は、それ等をチラッと見ると、
「ありがとう、チー牛レッド。」
と、お礼を言った。
「いやいや、お礼を言われる程の事はしてないさ。また何か困った事があったら、遠慮なく私を呼んでくれ給え。それじゃっ!!」
そう言うとチー牛レッドは、路地裏を去っていった。
「ハッハッハッハッハッ!!」
・・・高笑いしながら。
これは余談だが、この後男子高校生と不良達は、萌えアニメを通じて『心の友』になったらしい。
めでたし、おひたし、かつおだし。
「んん~~~、良い事した後は、『チーズ牛丼』を食うに限るな!!」
そう言いながら、路地裏から少し離れた所にある『定食屋』の中に入っていくチー牛レッド。
紹介が遅れたが、彼は『チー牛戦隊チー牛ジャー』という、陰キャの平和を脅かす悪い奴等と戦うヒーローチームのリーダーである。
仲間は、美少女限定でドMになるブルー、食いしん坊のイエロー、ブリッブリのあざといピンク、常に顔色が悪いグリーンの四人。いずれも、チーズ牛丼が大好物の陰キャである。因みに、ライバルは『イキリオタク過激派』。
「おっちゃん、いつもの一つ。あと、緑茶。」
「あいよ~。」
それで通じるという事は、どうやらここは彼の行きつけの店らしい。店主に対する口の利き方から見て、古くからの常連である事が窺える。
「(う~む、腹の虫が『チーズ牛丼』を求めて、泣き喚いておるわ・・・早く出来ないかなあ~。)」
腹をさすりながら、注文した料理を待つチー牛レッド。
するとここで、彼の視界に丼ぶり物を食べている陰キャが入った。
そいつは花咲桃太郎という名で、この小説の主人公である。
「(おっ、あそこに陰キャがいるぞ。しかも、丼ぶり物を食べている!!私と同じ『チーズ牛丼』を愛する者に違いない!!)」
勝手にそう思い込むチー牛レッド。そして、勝手に『親近感』を抱いている。『迷惑』以外の何物でもない。
「(よし、ここは一つ彼と友達になって、ゆくゆくは我が戦隊に・・・・・・)」
そう思い、そろりそろりと背後から近付く、チー牛レッド。その動き、どこからどう見ても『不審者』のそれである。
「(なっ・・・何ィッ!!?)」
ここで、彼の動きが止まる。一体、どうしたというのだろうか。
「(こ、こいつ・・・見るからに冴えない陰キャの癖に、『チーズ牛丼』を食っていない!!か、かかか・・・『海鮮丼』を食ってやがるッ!!)」
なんと桃太郎が食べていたのは『チーズ牛丼』ではなく、色々な海の幸が酢飯の上に乗っかった『海鮮丼』だったのだ!!
「(ゆ、許せん・・・『チーズ牛丼』を差し置いて、他の丼ぶり・・・しかも、『海鮮丼』なんていう、陰キャのイメージにそぐわない、派手な丼ぶり物を食べるとは・・・・・・ッ!!こいつには、『教育的指導』が必要だな。)」
親近感余って、憎悪百倍ッ!!
チー牛レッドは、桃太郎に対して怒りを募らせ、メンチを切りながら歯ぎしりをした。
彼は、陰キャが『チーズ牛丼』以外の丼ぶり物を食べていると、腸が煮えくり返るのだ!!
なんという身勝手!!自分が勝手に『チーズ牛丼』だと思い込み、勝手に『親近感』を抱いておいて、そりゃあないだろヒーロー・・・・・・
・・・なんて事言っている間に、桃太郎が会計を済ませて外に出ていった。
「!!(奴が会計を済ませて、外に出る!!私が注文した『チーズ牛丼定食』は、完成まで少なくともあと五分は掛かるから、今の内に追いかけて説教をくれてやろう。)」
そう思うと、チー牛レッドはすぐに彼を追いかけた。
「待て!!そこの陰キャ!!」
「ん?」
チー牛レッドの叫びに、一旦立ち止まり、くるっと振り返る桃太郎。
その瞬間、彼の顔は『うげっ』という表情になった。また変なのが出て来たと思ったからだ。
「お前さっき、ここの定食屋で『海鮮丼』を食べていたな?」
「(うわっ、また変なのが現れたぞ・・・しかも、関わると面倒な事になるタイプだ。適当にあしらっとこ。)あ、ああ・・・まあ・・・食べましたけど。」
「この裏切者めッ!!何故、『チーズ牛丼』を頼まなかった!?」
「は?」
チー牛レッドの怒鳴り声に、きょとんとする桃太郎。『目が点になる』とは、正にこの事だ。
桃太郎は少し遅れて、こう返した。
「いや・・・何を食べようが、俺の勝手じゃあないですか。それに俺は、『牛丼』より『海鮮丼』の方が好きなんですよ。色々な魚の味を楽しめるし、見た目も綺麗だし・・・・・・」
しかし、その程度の理由では、チー牛レッドは納得しなかった。
「うるせぇぇぇーーーーーーッ!!陰キャが食べる丼ぶりものは、『チーズ牛丼』と相場が決まっとるんじゃぁぁぁーーーーーーーーーーーーッ!!」
「どこの相場だ、どこの!!陰キャ全員が、『チーズ牛丼』好きだと思うなよ!!」
「そうだそうだ!!」
ここで、桃太郎の背後から乱入者が現れる。
「!? 誰だ、あんた!?」
そいつは、見た目が如何にもコミケ帰りのオタク男性って感じだった。
彼は、桃太郎の問いに、親指を立ててこう答えた。
「通りすがりのキモオタだ。『陰キャ』=『チーズ牛丼好き』という考えに、異を唱えに来た!!」
どうやら、桃太郎に加勢してくれるようだ。
それからオタクは、チー牛レッドに向かって指を差し、こう言った。
「よく聞け、チー牛レッド!!陰キャが真に好きな丼ぶりもの・・・それは・・・・・・」
「それは・・・?」
しばしの沈黙。
これは、良い台詞が思いつかないから、黙っているのではない。溜めているのだ。テレビのバラエティ番組がよくやる手である。
そして、溜めるに溜めた後、彼は大声で恥ずかしげも無く、こう言い放った。
「『姉妹丼』だァッ!!」
「まい丼』だァッ!!」(エコー1)
「い丼』だァッ!!」(エコー2)
「丼』だァッ!!」(エコー3)
「だァッ!!」(エコー4)
「ァッ!!」(エコー5)
その瞬間、時が止まったかのように、周囲の空気が凍り付く。通行人は全員ぎょっとした表情をしており、幼い子を連れたお母さんらしき人物は、青ざめた顔で我が子の両耳を両手で塞いでいる。まあ、無理もない。公衆の面前で叫んでいい単語ではないからだ。
一方、それを言った張本人は、『言ってやったぜ』という満足そうな顔をしている。上手い事を言ったと思っているのだろうか。
このままでは、陰キャのイメージが余計悪くなってしまうので、
「お前、もう黙ってろ。」
と、桃太郎はキツい口調でオタクにそう言った。
オタクは泣き出した。どうやら、打たれ弱いタイプだったらしい。
それから彼は、どこかへ走り去っていった。
「うわぁぁぁ~~~~~~~ん!!せっかく、『陰キャ=チー牛』のイメージを壊してあげようと思ってたのに、こんなのあんまりだァ~~~!!」
そして、そいつと入れ替わるように、
「俺、作者だけど、やっぱ丼ぶりもんといやあ『カツ丼』だよなあ~?」
とか、抜かす陰キャが乱入して来たが、
「ぐあああああああああああああああああ!!」
チー牛レッドの飛び蹴りを喰らい、フッ飛ばされてしまった。
「くっそ~、どいつもこいつも陰キャの癖に『チーズ牛丼』をコケにしやがって・・・・・・こうなったら何が何でも、『チー牛好き』にしてやるッ!!くらえ、『チー牛ビーム』!!」
放たれたビームが桃太郎を襲う!!
「(よぉ~し、命中!!これでこいつも晴れて『チーギュリスト』に・・・)」
だが、そうはならなかった。
「チー・・・え、何だって?あんた、頭大丈夫か?」
「!?!」
さっきの不良達と違い、チーズ牛丼を欲する事も、萌えアニメを欲する事もなく、桃太郎はただその場できょとんとしていた。その表情、『何やってるんだ?お前・・・』と、言いたげである。どうやら、彼には『チー牛ビーム』が通じないらしい。
「(しっ、しまったぁ~~~!!我が必殺の『チー牛ビーム』は、陽キャを陰キャにする技ッ!!最初から陰キャの奴には、全く効果が無かったんだった!!)」
まあ、そういう事である。
するとその時、
ドックン!!
チー牛レッドの心臓が大きく鼓動し、徐々に意識が遠のき始めた。
「?!!(さっ、更にしまったぁ~~~!!今ので我が体力を全部使ってしまった・・・!!も、もう店に戻る体力も残ってない・・・)」
他人はこういう奴を『マヌケ』と呼ぶ。
彼はそのまま崩れるように倒れ、
「む・・・無念・・・」
と、いう言葉を残し、眠るように意識を失った。
「お、おい!!おいおいおいおいおい・・・急にぶっ倒れたぞ、この人!!おい、大丈夫か!?っていうか、これ・・・俺のせいじゃあねえよな?」
そう言って、桃太郎が周囲を見回す。
すると、さっきまで彼等をジロジロと見ていた野次馬共が、一斉にそっぽを向いた。『こっちに振るな』という事だ。
「え・・・ちょっ待っ・・・誰かこっち向けやああああああああああああああ!!」
結局、救急車やら何やらの手配は全て、桃太郎がやる事になった。
その後、この一連の出来事を聞いた『チー牛戦隊チー牛ジャー』のメンバー達は、リーダーを助けてくれたお礼と迷惑かけたお詫びとして、彼に『名誉チー牛』という誰がどう見ても不名誉な称号を与えられる事になってしまうのだが、それはまた別の話である。
(CM)
天の声) 「ラッキーセット!!」
子供達の声)「ラッキーセットに陰キャがやって来た!!」
~おもちゃの詳細~
①桃太郎
直立した状態の桃太郎のフィギュア(?)。背中には、細長いボタンがある。例に漏れず、顔の出来が酷い。
天の声) 「背中のボタンを押して、インキャーショットだ!!」
子供の声)「てりゃぁっ!!」
玩具の桃太郎の右脚がスカッと上がる。
ギミックはこれだけ。効果音等は一切用意されていない。
オマケのおもちゃとは言え、ハッキリ言ってショボい一品。
玩具紹介の子供の迫真の掛け声が、余計に玩具のショボさを引き立たせてしまっている。
もっと他にやりようは無かったのだろうか。
②メタリーのフライングディスク
黄色くて小さい円盤に、メタリーの絵がプリントされている。甲羅に付いているサファイアのような物を再現しているのか、ディスク中央には、青い電球みたいなのが付いている。
天の声) 「広い所で、投げて遊ぼう!!スイッチを入れると、ディスク中央が青く光るよ!!」
子供の声)「スピンアターーーーーック!!」
どっかの草原で、このディスクを投げている映像が流れる。
投げた人が上手いだけなのか、結構飛んでいる。
飼い犬のポメラニアンと遊ぶには良いかもしれない。
③ゴキブリ
ゴキブリのおもちゃ。底面には、タイヤが四つ付いている。
天の声) 「ゴキブリを後ろに引っ張ると、物凄い勢いで走っていくよ!!」
子供の声)「ゴキブリもびっくりだぜぇ~。」
要するに、プルバックカーがゴキブリになっただけである。
④フンコロガシ
カップを前に向けているフンコロガシのフィギュア(?)と、茶色いゴムボールがセットになっている。ゴムボールは、フンコロガシのカップに余裕で入るくらい小さい。
天の声) 「セットになっている茶色いボールを、フンコロガシのカップに投げ入れて遊んでね!!」
子供の声)「この茶色いボール・・・まさか!?」
・・・まあ、フンコロガシだし。
⑤ニシキ
駄菓子屋とかに売ってそうなおもちゃ。胴体は、八つのパーツを繋げて出来ているので、クネクネとした動きが出来る。
天の声) 「くねくねするぞ!!尻尾の先は笛になっているので、吹いてみよう!!」
子供の声)「わ~、本物の蛇みた~い。」
笛は、リコーダーの演奏に失敗した時のような、甲高い『ピー』という音が鳴る。
⑥ウマシカ王子のコップ
プラスチック製の青いコップに、ウマシカ王子の絵がプリントされている。底面には、スイッチとスピーカーがある。
天の声) 「コップを持ち上げると、喋るよ!!音声パターンは、全部で三種類だ!!」
コップ) 「朕は国家なり!!」
子供の声)「ぎぃやあああああああああ!!喋ったァァァーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
因みに、残りの二つのボイスは以下の通り。
「朕は国家、国家は朕!!」
「朕こそ世界の中心であり、この星は朕を中心に回っているッ!!」
声優さん次第で、六種類の中で人気ナンバー1になれる可能性を秘めてはいるものの、台詞があまりにもうざすぎるので、正直微妙なところではある。
天の声) 「異世界陰キャのオマケは、今度の金曜日から!!土日は、『異世界陰キャミニ図鑑』が貰える!!」
天の声) 「野菜もしっかり食べよう!!」
桃太郎) 「これ絶対、①がネタにされるヤツじゃん。」
メタリー) 「良かったですね、国家予算並みの価値になりますよ。ヨーヨーヨー。」
フンコロガシ)「そもそもこの小説、『子供向け』じゃあないから、こういうオマケとは無縁だと思うよ。」
ゴキブリ) 「ゴキブリもそう思うぜぇ~。」
ニシキ) 「それなら、未来永劫安心ッスね。」
メタリー) 「『○番くじ』に期待しましょう。ショーショーショー!!」
その前に書籍化が先である。
~ウマシカ王国・某所(紅白とかやってそうな会場)~
●チー牛戦隊チー牛ジャーの歌 作詞:K-ZHK(っていうか、作者)※お好みの曲調でお楽しみください。
助けを呼ぶ声 聞こえたら 今すぐ向かおう 君の元
チー牛バイクは 今日もご機嫌 ブンブン吹かして スピードアップ!!
レッド!! (レッド!!)
ブルー!! (ブルー!!)
イエロー!!(イエロー!!)
ピンク!! (ピンク!!)
グリーン・・・は、欠席!! (体調不良!!)
五人の戦士 五つの魂 五つの力
みんな違って みんな強い 悪い奴等よ覚悟しろ
(チャラ男にDQNにクソヤンキー 陰キャの天敵全員参戦!!)
(行くぞ!!お前等!!)
チー牛パンチ チー牛キック チー牛はずかし固め
チー牛パンチ チー牛キック チー牛フェイスウォッシュ
必殺のチー牛ビームで お終いだ
(最後は仲良くハッピーエンド)
チー牛 チー牛 (チー牛 チー牛)
チー牛 チー牛 (チー牛 チー牛)
チー牛戦隊チー牛ジャー!!
桃太郎) 「あの、すいません。俺、『海鮮丼』の方が好きなんで、『陰キャ=チーズ牛丼』っていうイメージを不特定多数の人間に植え付けるのやめて貰えませんか?ホント迷惑なんで。そもそも『牛丼』系は、運動部の陽キャが部活帰りに食ってるイメージがあるから、陽キャじゃあねえの?そこは。」
メタリー) 「多分、『チーズ』のせいですね。ほら、陰キャってチーズが好きなイメージがありますし。しーしーしー。」
桃太郎) 「嫌なイメージだなあ。っていうか、今年最後の話がこんなんでいいのか?大晦日とか全く関係無いぞ。」
メタリー) 「作者的には、『忘年会』と称して色々な話を載っけるつもりだったみたいですけど、チー牛が思いの外長引いたせいで、他の話が出来なかったそうです。すーすーすー。」
桃太郎) 「おのれ、チー牛レッド・・・」
メタリー) 「と、言う訳で、新年の予定を色々変更しまして、その『新年会』と『初詣』の話をやった後、いよいよ本編後半スタートって流れになります・・・多分。」
桃太郎) 「多分かよ。」
メタリー) 「まあ、何はともあれ・・・読者のみなさん。今年も有り難うございました。来年からもどうぞ、この小説をよろしくお願いします。すーすーすー。」
???) 「ちょっと待ったァ!!」
桃・メ) 「ん?」
ウマシカ王子)「朕は国家なりッ!!その朕の出番が、『番外編』でも無いとはどういう事だ?納得のいく説明をして貰おうか。」
桃太郎) 「いや、俺に言われても・・・」
デヴィット) 「ど~も~、デヴィット・チャーハンでぇ~す。」
カミーテル) 「んっん~~~、俺って神ってるぅ~。」
阿呆鳥) 「王子様の出番を増やせ!!(でないと、俺様が酷い目に遭うんだよ!!あのクソ王子に!!)」
コバルト) 「麗お嬢様と私こそ、主役に相応しい。陰キャは降板して下さい。ハッキリ言って、不愉快ですから。」
桃太郎) 「来年は羊じゃなくて虎だぞ、ラムチョップ。」
コバルト) 「だから、羊じゃねえよ!!」
楓) 「たまには女の子だけの話があっても良いと思う。」
沙耶香) 「そうそう。女子サッカー部の話とか、『女子会』の話を『番外編』で優先的にするべきよ。陰キャは本編だけで充分。」
チュラ) 「僕もそろそろ出番が欲しいなあ~・・・なんて。」
桃太郎) 「ま、まずい・・・あまり出番のない連中が次々に押しかけて来ているせいで、会場が『蜜』になりつつあるぞ・・・」
メタリー) 「ど、どうしますか?かーかーかー。」
桃太郎) 「ここはひとまず・・・・・・撤退だッ!!」
桃・メ以外) 「な、何ィ!?」
ウマシカ王子)「逃がすか・・・追え、追えぇぇぇーーーーーーーーーーーーッ!!」
桃太郎) 「よ、良いお年をッ!!」
『強制終了』
来年もこの小説をよろしくお願いします。




