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取調室の陰キャ

 「あのなあ・・・オレ様もてめえの中二病に付き合っていられる程暇じゃねえんだよ。いいから、どこか言えよ。『ヘーコラ』か?『ナンバショット』か?それとも『タカビー』か?もしかして、もっと遠い国の人間か?」

 阿呆鳥は馬鹿にするというより、呆れている様子だった。

 「(だよな。異世界から来たなんてそんなファンタジーチックな事、すんなりと受け入れねえよな。大抵『こいつ、中二病こじらせたヤベー奴じゃん』って思うよな。俺だってそういうこと言ってる奴いたら同じこと思うし・・・しかし、他にどう言えば良いんだ?学校で習ってねえよ!!いや、習うわけねえだろ!!)」

 桃太郎は必死に頭をフル回転させて、考えた。しかし、これといって適切な言葉が出て来ない。とはいえ、また『異世界から来ました。』と言ったら目の前の鳥がブチ切れかねないなので、同じ言葉及び単語は使えない。

 「・・・で、どこの国の者だ?はっきりと言え。」

 頬杖をつき、左手の人差し指で机を激しくトントンさせる阿呆鳥。それを見た桃太郎は、阿呆鳥が痺れを切らしている事を悟った。

 「・・・『イセーカイ』から来ました。」

 桃太郎は架空の国を作った!!もうちょい捻れよ。

 「『イセーカイ』だあ?聞いた事ねえな・・・まさか、でまかせ言ってんじゃあねえだろうな?」

 「でまかせではないです。それに聞いたことが無いのも無理はないです。何故なら、イセーカイは天空にありますから。」

 「天空に国なんかあるか。もしあるならそれは、『天国』っつーんだよ、マヌケが。」

 「・・・」

 桃太郎は黙り込んでしまった。次の一手が中々思いつかないので、彼は『黙秘権』を発動させる事にした。



 一方ウマシカ王子は玉座に座って、ある人物と面会していた。そのある人物とは、昨日王子が直接リストラを言い渡した元・重役のおばさんだった。彼女はリストラに不満を持っており、抗議しに来たのだ。

 「王子、私は今まで貴方の為、国の為に色々尽くしました。それなのに・・・たかだかイケメンとの浮気に税金使った位で何でリストラさせられなくてはならないのですか!!王や王子も自分勝手に税金を使っているではないですか!!」

 「税金は国の金。朕は国家なので、当然国の金は朕の金という事になる。だから、父や母、朕が勝手に税金を使うのはよい。だが、いくら重役の人間であってもお前のした事は朕の財布を盗んだのと同じ。だから、リストラさせた。牢獄行きにしなかっただけ、有り難いと思って欲しかったぞ。」

 淡々と述べる王子にまだ納得がいかないおばさんは、必死に食らいつく。

 「ですが、私の今までの功績を見て下さい。私はその辺の連中と違い、きちんと国に貢献しているんですよ?」

 「貢献した分だけ朕の金を盗んでいった。」

 「ですが私がいなかったらこの国は今頃、どうなっていたか・・・」

 おばさんが言った今のセリフに王子が反応した。

 「おい、ちょっと待て。今、さりげなく朕を馬鹿にしたな?」

 「馬鹿にしていません。ただ、私がいなかったらこの国はここまで立派にならなかったと・・・」

 弁解しているつもりのようだが、その言葉は更にウマシカ王子の神経を逆撫でした。

 「うぬぼれるなよ、窃盗犯の分際がッ!!この国がここまで立派になったのは朕の父や母・・・偉大なる先祖のおかげだぞ!!貴様・・・今の言葉、侮辱と捉えた!!おい、兵士!!」

 大声で兵士を呼ぶ王子。兵士は一分と経たない内に王子の元へ駆けつけた。

 「この女を地下牢にぶち込んでおけ。税金(朕の金)の窃盗罪と国家侮辱罪だ。」

 「ハッ!!」

 おばさんを取り囲む兵士達。おばさんは、抵抗している。

 「ちょっと、待って下さい!!私は国家を侮辱していません!!」

 「そうか?貴様のセリフは、あたかも自分一人がこの国を支えているかのような言い方だったぞ。それは朕、他の真面目に働いている愛すべき重役達を侮辱しているようにしか思えん。そして、朕は国家なので自動的に国家侮辱罪だ。」

 「そんな・・・私の話を聞いて下さい!!私はあのリストラで色々なものを失ったんです。夫に浮気がばれ、夫に捨てられました。近所の人は私を白い目で見てきます。一日中ネットにかじりついているクソニート共にも馬鹿にされる始末・・・。せめて・・・リストラを撤回してください・・・。」

 税金使って浮気していた自分が悪いのに、あたかも被害者であるかのように訴えるおばさん。さすがに擁護出来ない。王子はそんなおばさんの声に何一つ反応すること無く、その場を後にした。



 「・・・いい加減にしろよ、てめえ・・・」

 バンッと机を思いっきり叩く阿呆鳥。その瞬間、桃太郎の体が少しだけふわっと浮いたように感じたのは気のせいではないだろう。

 「だったら何て答えたらいいんだ。」

 「出身国言えば済む話だろうが!!そんなの幼稚園児でも言えるぞ!!」

 「だから異世界から来たと・・・」

 「てめえの中二病設定はどうでもいいんじゃああああああああああ!!」

 桃太郎も阿呆鳥もお互いに『埒が明かない』と感じ取っていた。一応こうなる前に桃太郎は黙秘権を使ったが結局阿呆鳥にどやされて、わずか二分で終わった。それからの桃太郎はやけくそになったのか、『異世界から来た』の一点張りとなり、今に至るわけである。ここで桃太郎は流れを変える為に、逆に阿呆鳥に質問することにした。

 「・・・あのさ、世界移動出来る動物って聞いた事が無い?」

 「何を藪から棒に・・・ああ、知ってるよ。確か、都市伝説によく出て来る種族だろ?残念なことにオレ様は普通の信天翁だがな。そもそもそんな動物、神話とかじゃない限りいないと思うがな。」

 「その動物に連れてこられたんだよ。」

 「成程、あくまで中二設定を貫く気か・・・。」

 ここで初めて桃太郎は、あの半ば強引に連れてきた亀を必要と感じた。あの亀は世界移動が出来るので、その辺の詳しい話が出来るだろうと思ったからだ。しかし、こういう時に限ってあの亀はいない。桃太郎は、またこの間みたいにメタリーが来てくれることを期待した。

 

 その頃、メタリーは上空から桃太郎を捜している・・・のかと思いきや、またしてもあのアイスキャンディー屋でアイスキャンディーを買って涼んでいた。ちなみに今日はグレープ味。メタリーはアイスをしゃぶりながら、呟いた。

 「まあ、あの人も小学生じゃないから僕がいなくてもなんとかやっていけるでしょ。・・・それにしてもこのグレープ味うまいまいまーい!!」


 「(・・・いや、こういう時に限って頼りにならないのがあの亀だ。変に希望を持つのはやめよう・・・)」

 桃太郎は何かを感じ取ったのか、メタリーが来てくれるという希望を捨てることにした。よくよく考えると、あの亀が役に立ったことより足を引っ張ったことしか出てこない。そもそも来たところで状況を悪化させるだけかもしれないと桃太郎は思った。

 「(でも、どうやってこの鳥に異世界から来たことを納得させようか・・・)」

 そう思うだけで桃太郎は、気分がだるくなった。何言っても『中二病』で済まされそうな上にそろそろ暴力も振るわれかねない。架空の国はすぐに見破られたし、世界移動出来る動物に連れてこられたというのもだめだった。そもそも阿呆鳥は、世界移動が出来る動物のことをいないと言ったので、最初からその動物がいることを信じていない。そんな八方塞がりな彼に更に追い打ちをかけるようにウマシカ王子が現れた。

 「ふん、朕の靴に痰を吐いた忌々しい陰キャめ。・・・阿呆鳥、もういいぞ。ここからは朕がこの陰キャを追及する。」

 「ですが王子・・・こいつは不法入国に国家侮辱と罪を重ねている罪人。ここは補佐である私が・・・(やったぜ!!丁度こいつの中二病設定にうんざりしていたとこだ。たまにはいいこと言うじゃねえか、馬鹿王子。見直したぜ。)」

 「いいや、朕が決着を着ける。」

 そういうと王子は阿呆鳥を押しのけ、席に座った。まだあの公園での出来事を恨んでいるのか、物凄く睨んでいる。阿呆鳥は王子を心配する素振りを見せながら、王子の背後にまわって気付かれないようにガッツポーズをした。しかし、ポーズを決めた時に急に王子が振り向いたので慌てて敬礼のポーズを取り、ごまかした。振り向いた王子は思い出したかのように阿呆鳥に言った。

 「ああ、そうだ・・・玉座のある部屋を掃除したのは誰だ?」

 ドキッとしたのかビーンと阿呆鳥の背筋が伸びる。

 「ええっとですね・・・確か階級が下の兵士だったかと思います。・・・どうしました?」

 「朕の玉座に画びょうが置かれていたのだ。それも針の方を上にしてな。危うく朕のお尻に刺さるとこだった・・・もしかしたら、誰かが朕を暗殺しようと企んでいるのではないか?」

 「(たかだか画びょうの二個、三個で死ぬかよ。っつーか、座る前に画びょうに気付きやがったのかよ。クソが・・・まあ、罰せられるのはオレ様じゃあないんだし、次の策を練るか・・・。)」

 画びょう程度で暗殺だの何だの大げさに言う王子に呆れた阿呆鳥は、早くゆっくりしたいのか

 「念のために兵士の誰かが謀反を起こしていないか調べてみますね。(いねえと思うけど。そもそもあいつら馬鹿みてぇーにこの王子を持ち上げているし・・・。)」

 と、適当に流した。王子は『調べてみる』という言葉を信用したのか

 「うむ、頼んだぞ。愛すべき我が右腕よ。」

 と、一言言った。

 「はっ、有り難きお言葉。(ケッ、都合の良い時だけ『愛すべき』だの『偉大な』だの言いやがって。日頃、パシリのようにオレ様を使っている癖によぉ~・・・)」

 心の中でブツクサ文句を言いつつ、顔はにっこりと微笑んで言った。王子はその言葉を聞いて間もなく、再び桃太郎の方に向いて睨み付けた。この時、桃太郎は思った。

 「(画びょうの犯人・・・あいつじゃね?)」

 と。そして今、現在進行形で睨んでいる王子の顔が靴を汚された時と同じ歪んだ顔になっていた。桃太郎はそれを見て、『俺は一体何を見せられてるんだ・・・』という気持ちになった。ここで、王子が口を開いた。

 「貴様・・・一体何者なんだ?」

 『結局またそれか・・・』と言わんばかりに桃太郎は大きな溜息をついた。

 「異世界から来た者だよ。」

 「はん。陰キャらしい答えだな。」

 王子は鼻で笑い、見下すように顔を少し上に向けた。

 「まあ、実際陰キャなんだから仕方ないだろ。」

 両手の手のひらを上にして『さあ?』のポーズを取る桃太郎。その態度が余計に気に入らないのか王子は机を思いっきり叩いた。

 「開き直るなよ陰キャの分際がッ!!そもそもゴキブリのように朕の国に入ってきた貴様に朕とこうして向き合って話す権利は無いんだぞ!!その辺感謝しろよ、陰キャ。」

 「だったら、とっ捕まえた時に国の外に出せば良かっただろ。追い出されたら別の国に行くのによ。ったく、そこら中クソまずいブラックコーヒーを垂れ流しやがって・・・」

 王子は『ブラックコーヒー』という単語に反応した。

 「おい待て・・・今何て言った?」

 急に王子の声が低くなった。それは誰の目から見ても怒りを抑えているような感じだった。桃太郎は気にせず繰り返す。

 「クソまずいブラックコーヒーを垂れ流し・・・」

 そして、王子の怒りの火山が噴火した。

 「貴様という陰キャはッ!!朕の偉大な父まで侮辱をするのか!!」

 「・・・は?」

 急に『父』、要するに現・国王の話になって困惑する桃太郎。王子は桃太郎に対し、暴れ馬のように物凄い勢いで詰め寄り、騒いだ。

 「父はブラックコーヒーが好きだから、いつでも飲めるようにああして至る所に設置している!!豆にも凄くこだわったし、子供が飲む事を見越して農薬などの体に毒となるものは一切使用していない!!自分だけではなく、国民にもブラックコーヒーを分け与え共有し、王と国民が一丸となる・・・そんな素晴らしい父こだわりのブラックコーヒーをよくも・・・『クソまずい』などとッ!!」

 「まずいものはまずいだろ。それに子供がブラックを飲むと思うか?そりゃ、甘い物が嫌いな子供は飲むかもしれないけどさ。」

 桃太郎は『たかだかブラックコーヒーくらいで・・・』と思ったが、今それを言うともっとやばい状況になりそうなので、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。しかし、そのセリフを吐かずとも、既にやばい状況になっているという事をこの時の桃太郎は感じ取れていなかった。

 「フン!!もう貴様が何者なのかどうでもいい!!度重なる朕に対する愚行・・・万死に値するッ!!」

 王子は箱の中のお菓子を片手でつかみ取りするように桃太郎の髪の毛をつかんで、引っ張った。髪の毛ごと頭皮が引っ張られる地味な痛さとこのままでは将来禿げてしまうのではないかという不安が桃太郎を襲った。

 「地味に痛いからやめろ。あと禿げる!!」

 しかし、王子から告げられたのは『もう二度と侮辱するなよ。』とかではなく、もっと残酷なものだった。

 「安心しろ、禿げることは無い・・・これから死ぬんだからな。」

 さらっと死刑宣告をされた桃太郎は青ざめた。

 「!!?・・・何で!?」

 「貴様は陰キャの癖に朕をコケにしすぎた・・・『出る陰キャは打たれる』という言葉があるようにイキリ過ぎた陰キャは粛清しなければならないッ!!来い。朕の愛すべき王国民の前で無様に死に晒すがいい・・・。」

 それを言うなら『出る杭は打たれる』である。王子は桃太郎の髪をつかんだまま、強引に面会の部屋を出た。そして、すれ違う兵士に『(はりつけ)の準備をしろ』と言っていたので本気で王国民に晒す気である。花咲桃太郎、再び命の危機である。前回はハニー・メイプルが助けに来てくれたが、今回ばかりは助けてもらえそうにない。いや、そもそも他人を当てにしているだけではこの危機を乗り越えられない。(さいわ)い、桃太郎は手錠はかけられていても足枷(あしかせ)はつけられてない。つまり、足は自由に動かせるという事になる。

 「(このまま黙って死ぬくらいなら・・・いっそここで逃げてやるッ!!たとえ、逃げ切れなくても一分でも多く生きてやるッ!!)くらいやがれ馬鹿王子!!」

 桃太郎は王子の膝に思いっきり蹴りを入れた。不意打ちだったので、王子はそのままバランスを崩して床に倒れた。受け身を取る為にうっかり桃太郎の髪をつかんでいた手を離した。

 「よし、今だ!!」

 桃太郎は王子を踏み台にして走り出した。しかし王子も黙って倒れたままではなく、

 「おい!!陰キャが朕の足を蹴って逃げたぞ!!暴行罪も追加だ!!兵士、兵士ィィィーッ!!」

 と城中に響き渡る声で叫んだ。桃太郎は床に突っ伏した王子を見ながら、

 「『陰キャ王子蹴る』っていう言葉があるだろ?ざまあみろ!!」

 と発言し、城の出口を目指して走った。・・・ちなみに先程の桃太郎のセリフにあったことわざなのだが、それを言うなら『窮鼠猫を噛む』である。王子の声が届いたのか、城中の兵士達が桃太郎を見つけるや否や襲い掛かってきた。

 「てめぇ、よくも王子様を!!」

 「王子様を暴行したお前には骨一本たりともこの世に残さん!!」

 「しばき倒すぞオラアアアアアアア!!」

 とか色々言ってきたが、今の桃太郎にとって兵士の言葉はどうでもいいものだったのでシカトした。しかし、廊下いっぱいに兵士が駆けつけてきたので簡単に前に進めない。桃太郎は、変に立ち止まらずそのまま兵士の群れに突っ込むことにした。

 「どけ!!お前ら兵士など、武器無しで十分(じゅうぶん)だッ!!」

 桃太郎はそう言うと、物凄い速さで一直線にパワフルなドリブルをするサッカー選手のように兵士の群れに突っ込んだ。ぶつかった兵士は、ボーリングのピンのように面白い位倒されていった。命に危険が迫った時の『生』に対する執着は時々とんでもないパワーを生むと言われているが、(まさ)に今の桃太郎がそれである。

 「くそ~奴は暴走特急か何かか?」

 「違う!!倒された連中が雑魚(ざこ)かっただけだ!!あんな陰キャ、どうせ日常的に運動していないに決まっている!!」

 「俺は高校の頃、サッカー部のキャプテンだった。負けるはずが無い・・・。」

 次々倒されていく仲間を見ながら、会話をする三人の兵士達。やがて、桃太郎が前の兵士の群れを突破したのが見えると、桃太郎に向かって走った。

 「調子に乗るなよ、陰キャァァァァァーッ!!」

 三人共、物凄いスピードで桃太郎にスライディングを仕掛ける。しかし、ジャンプして避けられた。

 「チィィッ!!あの陰キャは化け物か!?」

 「ああっ王子様に何て言えばいいんだ・・・」

 「やはりサッカー部にいた頃より、動きが鈍くなったか・・・」

 兵士達の激しい追撃をかわしながら、ようやく桃太郎は出口に辿り着いた。

 「(よし、後は街まで逃げて隙を見てこの国から脱走すれば・・・)」

 しかし外に出た次の瞬間、桃太郎は絶望した。

 「(や・・・野郎・・・門を閉めてやがる・・・)」

 城への出入りに使う大きな門が閉じられていたのだ。そして、横からパンパンと拍手の音が聞こえてきた。

 「ふん・・・あの数の兵士共をあっさり抜くとは・・・マグレとはいえ見直したぞ。」

 拍手の主はウマシカ王子だった。きっと、あの後先回りをしてここまで来たのだろう。額には大粒の汗が流れており、手には剣のような物を持っていた。

 「さて、朕の愛すべき王国民に貴様の無様な死に様を晒そうと思ったが、もうどうでもいい!!今ここで偉大なご先祖様が遺したこの『ウマスターシカリバー』の錆にしてやる。光栄に思うがいい・・・本来ならギロチンとか安物の剣で斬るとこを聖剣で斬ってやるんだからな。」

 王子はゆっくりと剣を鞘から抜いた。剣は『聖剣』と呼ぶに相応(ふさわ)しい輝きを見せ、桃太郎の前に姿を現した。その神々しさに兵士達だけではなく、桃太郎も目を奪われた。

 「(フフフ、朕の神々しさにこの場にいる連中は、みんな朕に目を奪われているぞ・・・。)」

 みんなが()()()()()()()()目を奪われているという事を王子は知る(よし)もなかった。

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