神隠しはもみじの下で
大きく太い枝に腰かけ、足をぶらつかせる。高さのある枝だからだ。ここで何をしているのかと言えば、空を見上げているのだ。
赤や黄、色鮮やかに染まっている葉と青い空の対比が楽しめるのは、この時期の晴れの日だけだ。空を泳ぐ雲は、確か人間がいわし雲と名づけたもの。水蒸気の塊とわかっていても、なんだかおいしそうな響きの言葉だ。
もうすぐこの道では、狐の嫁入りが行われる。最近はもっぱらこの辺りはその噂でもちきりで、きっと私のように見に来る者も少なくない。
すん、と匂いをかぐと空気に混じっている水の気配がわかる。でも、それ以外にも何かある? この辺りではめったに感じないこれは――。
「人間?」
おかしい。この山はそう簡単に人が踏み入れる場所じゃない。だってここは、妖怪や精霊などの人ならざるモノが暮らす場所。結界が張ってあって、迷い込む人間なんていないはず。
よっぽどのことでもない限り。
とにかく、この気配の正体を探らなければ。人がいるというだけでも困るのに、今ここはいつもより常世――人以外のモノが住まう世界だ――の力が強くなっている。人なんかには、危ないくらいに。
陰陽師や霊能力を持つ者ならば平気だろうが、科学とかいうよくわからないものが発展した現在、私たちの存在は否定され、そんな力を持つ人間も多くないと聞いている。
何より狐の嫁入り行列にみつかれば、人間なんて良くて土産だ。
別に心配しているわけじゃない。ただ、猫は好奇心旺盛な生き物なのだ。
ひらりと枝から降りる。三メートルはあっただろうが、くるりと一回転して軽やかに着地する。これでも猫又、そこらの人間より身体能力は高いのだ。
ぴこぴこ耳を動かして音を聞き、しなやかな黒いしっぽを揺らして気配を辿る。
そこから数分程歩いた頃。無表情でぼんやりと突っ立っている少年がいた。その淡い青の瞳は、何も見ていないかのような色をしている。
「ねえ、貴方」
一応木の陰に隠れて、少しだけ遠くから彼に声をかけた。聞こえる距離のはずだ。猫基準でなく。
なのに、彼が私の方に視線を向けることはなかった。
「ねえ、貴方に声をかけているのよ」
「……ボク?」
私が姿を現して、正面から問いかけて初めて彼は返答をした。私を見て驚いているわけでもなく、かといって呆然としているわけでもない。
変な人間だ。私がじっと観察してみたって、居心地が悪そうにもしない。
「そうよ。ここで何をしているの?」
「別に……。気づいたらここにいた、みたいな……?」
なんで疑問形なのか。彼自身にもよくわかっていないせいなのだろう。これは結界の綻びから迷い込んだか、たまたまあった隙間にでも入り込んでしまったかだろう。
私が案内をして、山から連れ出すのが一番無難だ。それにはまず、彼に納得やら何やらをしてもらわなければ。
「貴方、名前は?」
「雪倉 司。中学生」
なるほど。彼が着ている黒い服は、確か学ランとかいうものだ。中学生の決まった服装だと聞いた。
しかし中学生というのは、十代前半の子供のことではなかったか。彼は見た目こそ年相応だが、口調に子供らしさが少なく思える。
「そう。私は小夜、貴方よりは年上よ。ところで、落ち着いて聞いてほしいのだけど……」
「うん」
淡々と、彼はただうなずく。
自分という意識を突き放しているというか、何というか。何にも大した反応はせず、無関心に目の前の景色を眺めているだけのような。
「ここはね、貴方たちの世界とは地続きだけど違う場所。私みたいな、人ではないモノたちが住む世界。……って説明したって、人間は否定しかしないのよね。とにかく、ふもとまで案内するわ」
ゆらゆらしっぽを動かして山の出口を向けば、彼に背を見せる姿勢になる。くるりと顔だけ振り返って、私はついておいでと言おうとした。けれど。
「か、帰りたくない……」
さっきまで無機質なガラス玉のようだった瞳に、初めて感情の色が宿った。明るいものではない感情の混ざった光は、彼の淡い青の瞳によく似合っている。
綺麗だ。私は少し彼に興味を持った。あやかしにはない、複雑な心の動きに。
「ふうん? どうして?」
「家にも学校にも、いたくない」
この年頃の人間の世界の広さなんて、たいてい家庭か学校しかないらしい。そこが嫌ならば、そんな結論にもなるのだろう。
「しかたがないわね。帰りたいと思っていなければ、帰せないもの」
首と一緒に片耳もくてっと傾く。帰せないにしても、ここからは離さなければ。そろそろ狐の嫁入りが始まる時刻だ。
「帰らなくてもいいから、こっちへ来て」
「……うん」
彼の手をとって歩き出す。山道は人間には歩きにくいから。
遠慮するように離れかけた手を引き戻す。他のあやかしにみつかったら、どうなるかわからない。はぐれたら困るのだ。
それにしても、暖かくない手だった。
「貴方、運がいいわよ。今日はこれから、狐の嫁入りなんだもの」
「天気雨のこと?」
「少し違うわね。狐のあやかしが別の家へ嫁ぐ時の花嫁行列のことよ。確かに雨も降るけれど」
言ったそばから、雨が降りだした。晴れているのに降る、天気雨。木の葉にさえぎられて霧雨程度で、陽の光で鮮やかな紅葉の色が淡く滲んだ景色は幻想的だ。
「司……って呼んでもいいかしら。私のことは好きに呼んでいいわよ」
「うん」
本当に、必要最低限のことしか話さない子供だ。彼と同じくらいの年頃の、この辺りのあやかしたちはたいてい毎日楽しくてしかたがないといったふうなのに。
「特等席があるのよ。猫はそういう場所を探すのが得意なのよね」
「猫……。小夜、さんが?」
「ええ。猫又よ」
ゆらりと、先が二つに分かれたしっぽを見せるように揺らす。艶やかな黒い毛並みが自慢のしっぽだ。
司は驚きもせず、ただ少しだけ首をかしげて私を見る。
笑いかけてみれば、愛想笑いも混じった控えめなものだけど返ってきた。握った手の温度差も、少しずつなくなっている。
「さ、ここよ」
着いたのは、低い木の元。根のあたりに外からではわかりにくい隙間があって、ちょうど人なら大人が二人入れるくらいの広さだ。中は多少薄暗いけれど、充分外の様子を眺めることができるのだ。
「秘密基地みたいだ」
「そうでしょう?」
間もなく、嫁入り行列が通りがかった。
人に見られる心配がないからか、狐姿のままのモノもいる。皆金や白や茶色の大きなしっぽを揺らして、時折ふぁさと動かしたりしながら道を進む。
華やかな鼓や笛の音と共に、厳かな中にも、楽しげでめでたい雰囲気を漂わせている。
しばらくの間、私たちは息をひそめて嫁入り行列を見ていた。やがて狐たちが皆通り過ぎると、木の根元の空間から出る。
「次の場所に行きましょう」
「うん」
うなずいてみせてはいるものの、どうして自分をという疑問はあるらしい。戸惑ったように、まばたきを繰り返していた。
「ただ時間を過ごすだけなんて、退屈だと思わない?」
「ん……」
肯定とも否定ともとれる、曖昧な返事。
「貴方には、二つの選択肢があるわ。あちらへ帰るか、こちらに残るかよ。知らないことには決められないでしょうから、司には常世を見せてあげる」
「小夜さんたちの、世界?」
「ええ」
普通の人間には見えないだけで、私たちは色々なところにいるのだ。
司が視える人間なのかはわからないが、常世の中なら誰でも視えるようになる。今私の姿が、こうして司に視えているように。
私は司を連れて、あるもみじの木の下に立つ。
ここは常世との接点。そういう場所はいくつもあって、そこから私たちがいつも暮らしている、より深い常世へと繋がっている。
「手を離しちゃ駄目よ、司。はぐれたら、どこに落ちるかわからないんだから」
「うん」
ぎゅっと手に力が込められたから、少し怖がらせてしまったかもしれない。
一瞬だけ、全てが歪む感覚。それは、境界を越える時のものだ。
黒い猫耳にもみじが触れるのに顔を上げると、そこはもう常世の景色。よくある人間の商店街のようでいて、歩いているのはあやかしだけ。
人の姿のモノも、獣に近いモノもいる。私のように、人と動物両方の要素を持つモノも。
「おばけ……妖怪?」
司の手の力が、また少し強められる。不安だからだろうか。子供らしくない無表情なところより、よっぽどいい。中学生なんて、まだ子供らしくて良いはずだ。
「大丈夫よ。理由なく人に害を与えるモノは、ここにはいないわ」
「ん……」
「私たちは、守るためにしか戦わない。ここにいるのは、逃げるためじゃなくてここが好きだから。人が山にも入ってきて私たちは追いやられたけれど、抵抗できなかったからじゃないのよ」
「…………」
うつむいた司の表情は見えない。戸惑っているのが手から伝わってきて、気配も揺らいでいた。
少し心配かもしれない。こういうふうに自分がないと、常世の力に感化されやすいから。
「司、私のそばから離れちゃ駄目よ」
ぴるんと耳を動かし、私は念を押した。
「うん」
私の力が及ぶ範囲なら、司を守れる。悪意あるモノがどうこうしない限り、充分守りきれる。
私だって何十年も存在している猫又だ。弱くはないし、この町でも顔が知られている。
手を引いて、私は紅葉に彩られた商店街の景色へ足を踏み出した。
「安心していいけど、油断はしないでね。大事なのはバランスよ」
「難しい、ね」
「ふふ。慣れたらこの町も楽しめるわ」
歩く町並みは、昭和レトロと人間なら表現しそうな様子だ。道を行くモノたちも着物だったりする。洋装もいるけれど、この景色を少しも損なわない。
「あ、小夜お姉さーん」
「あそぼー」
ちょっとした公園を通りがかった時、声をかけてきたのはそこで遊んでいた近所の子供のあやかしたちだった。
動きやすいからか人に化けていても、狐や狸の耳としっぽが残ったままなのが可愛い。
私はよく、猫の姿で彼らの相手をしているので仲が良いのだ。
「お兄ちゃんだれー?」
「人間のお兄ちゃんだ」
「いっしょにあそぼうよ! 小夜お姉さんも!」
そこにいた五人の子供たちが、わっと司の元に集まる。人なら十にも満たない姿の子たちといると、司は兄弟の上に見えた。
こういうことに慣れていないらしく、困惑した顔が向けられる。返事の代わりに、私は艶やかな毛並みの黒猫に姿を変えてみせる。
「えっと、うん。遊ぼう」
司がうなずいたとたん、喜んだ子供たちが彼に抱きついた。大きなしっぽが勢いよくぼふんぼふんと振られる。
「わあ!?」
どったーんと司は派手に倒れた。それすらも楽しそうに笑う子供たちにつられて、司も笑い声を上げる。水色の瞳が陽に輝く水面のように綺麗だった。
*
「鬼ごっことかおままごととか、久しぶりだった」
手を振って子供たちと別れた後、そう言った司の表情は柔らかいものになっていた。微笑ましくて、私が思わず頭を撫でると、うれしそうに目を細める。
この子供は、甘えた経験がとても少なかったのだろう。
でなければ、今日会ったばかりの人外の存在に頭を撫でられたくらいで、こんなふうに笑ったりしない。
司にとって、浮世と常世のいったいどちらが幸せなのだろう。
「行きましょう。今日は狐の嫁入りだったから、町は賑やかよ」
「ほんと? ボク、賑やかなの好き」
今度は自分から、司は私と手をつなぐ。きっと、年齢よりまだ子供なのだ。
「あやかしはお祭り騒ぎも好きよ。ハレの日だから」
「ハレの日って、良い行事とかの日のことだよね?」
「ええ。よく知っているわね」
そんな会話をしながら、私たちは町を歩く。
並んでいる店はほとんど二階建てで、下が店で上が民家だ。だから軒先に季節の花の鉢植え――桔梗や秋桜だ――があったりする。
「こういう時はやっぱり、駄菓子屋かしらね」
二又に分かれた黒いしっぽを揺らして提案する。司はこくこくと二回うなずいた。
「いらっしゃい。おや。小夜はまた今日もかい? 間を開けず来てくれてうれしいよ」
「司。これ昔馴染みでここの店主の薄氷。よろしくしてあげなくてもいいわよ」
烏天狗の薄氷は、背中にある真っ黒な羽が商品にぶつかるからとたいてい奥にいる。が、じっとしていられない性質で結局今日もこちらに寄ってきた。
「彼は……へえ、人間なんだね。君の友人かい?」
ちらりと司と目を合わせる。不安に曇る水色の目に、私はふるんと耳を動かして答える。
「ええ。遊びに来ているの。だから浮世のものを使った駄菓子を選んでくれる?」
異界の食べ物を口にすると、帰れなくなるというのはよくある話だ。もちろんここにもそういう法則はあるが、ちゃんと浮世の食べ物もある。
「お安い御用さ。ねえ君、駄菓子は好きかい?」
「うん」
「それなら良かった。何を選んでも間違いないね。小夜、いい子じゃないか。僕にも紹介しておくれよ」
やっぱり、言うと思った。薄氷はこういう奴だ。世話焼きだし、誰かと接するのが好きなのだ。
だから彼はこの町でも頼りにされる元締めの立場にいる。
「えっと、小夜さん……」
「悪い奴ではないわよ。構ってあげないのも可哀想だから、相手してあげればいいわ」
「小夜は僕にだけ妙に強気だねぇ……」
翼のせいで動きにくそうに駄菓子を探しながら、薄氷は肩を落とした。
猫の習性上、からかい甲斐のある相手にはちょっかいを出す。それが鳥――烏天狗だが――なら余計に。仕方がないことだ。薄氷のことは嫌いではない。
「雪倉 司です。その……よろしくお願いします?」
「おや、ありがとう。でもね、君のような幼い子があやかしに『よろしく』なんて言うのは好ましくないかな。仲良くはしたいけれど、常世に近づきすぎるのは心配だよ」
「心配なんてされたの、久しぶり。ありがとう、薄氷さん」
その言葉に、薄氷と視線を合わせる。長い付き合いなので、言いたいことはだいたいわかった。
と、その時。
「あーっ。司お兄ちゃんだ!」
「また会ったねー」
さっき遊んだ子供たちも、この駄菓子屋に来る予定だったらしい。わあっと司のまわりに集まる子、お菓子を選ぶ子がいた。
「はい、司君。これは君の分だよ。お代は小夜に払ってもらうけれどね」
「小夜さんも薄氷さんも、ありがとう」
「どういたしまして。君はいい子だね。……神隠しをしてしまいたいほどに」
薄氷の紫の瞳が冷たさを帯びる。ひんやりしたアメジストの目で、司を見つめる。
あやかしには別に何でもないことだが、人間には恐ろしく見えるだろう。薄氷の妖しさに無意識だろうが怯えていた。
「薄氷」
「わかっているよ。久しぶりの浮世からの客人が嬉しくて、つい……ね」
「それは理解できるけれど、決めるのは司よ」
最初こそ薄氷の冷たい雰囲気に固まっていた司だったが、後半は子供たちに手を引かれ店先に連れていかれたから聞こえなかったはずだ。
「司君、常世に残ってくれればいいね」
「人間じゃ、常世では苦労するわ。どちらも一長一短よ」
どちらにしろ、最後に決めるのは司だ。
今は外の近くで、浮世で流行っているヒーローの話をしているらしい。司がしてみせた決めポーズに、子供たちがわっと盛り上がっていた。
「僕としては、彼を歓迎するけれど」
この町の元締めはそう言う。
天狗は山の守り神と伝えられることもあり、時代によっても色々説はあるようだが、薄氷はこの山でも力あるモノの一人だ。
「そうだ、小夜も何か一つどうだい? サービスするよ」
「じゃあ、ありがたくいただくわ」
ケースの中から飴を一つ取り出した。私の目と同じ黄色い飴を口に含む。たぶん味はパイナップルだ。
「薄氷さーん、これちょうだい」
「ぼくはこれー」
お菓子を選び終わった子供たちが、薄氷の元へ会計をしてもらいに来る。遅れて司も戻ってきた。集まる駄菓子の数と値段を正確に認識して、薄氷はぱちぱちとそろばんを弾く。
「はい、どうぞ。いつもありがとう」
薄氷からお菓子を受け取り、子供たちは笑い合いながら帰っていった。狸や狐の妖の子供はしっぽをふぁたふぁた揺らして、楽しそうに。
それを見る司の淡い水色の瞳は、深い湖のように澄んでいる。一つだけでなく、いくつもの感情が沈んでいるのが見えそうだった。
綺麗だ。宝石なんかよりも美しい。
「小夜。司君はいつから常世側に来たんだい?」
「そうね……今日の午後からよ」
「そろそろ危うい時間だと思うのだけれど」
浮世と常世では、時間が異なることがある。私にそれを知る術はないから、薄氷の元へ来たのだ。
「一日は過ぎているだろうね」
「そう。……司、今すぐ選んで。浮世か、常世か」
「え……」
戸惑いに揺れてなお、その瞳は風に波紋を描く水面の美しさを保っている。
ああ、できることならこちらに留めてしまいたい。その水面が移ろう様を眺めていたい。
それでも司は浮世の人間だ。花は野にあるから咲き誇っているのであって、摘んでしまえば枯れてしまう。
「さあ、司」
「ボクは……」
ふるんと私の猫耳が動く。薄氷の翼に風の気配が宿る。
沈んだ陽と淡い月が、辺りに影を落とした。
「ボクは帰って、ちゃんと浮世で生きる。……けど、たまに遊びに来てもいい?」
それは二つの世界を選ぶ、唯一の答え。
「もちろん! 歓迎するよ、司君!」
「素敵な答えね」
「うん……。でも、小夜さんのおかげなんだよ。あの時の言葉、『戦え。だけど、争いを避けるのも一つの方法』だって意味だよね?」
私の言葉と行動は矛盾していた。誘ったり、突き放したり。だけど司は、その中から本当のことをみつけ出してみせた。
猫であやかしだから、本心と裏腹な行動は仕方がない。それでも、司がそんな答えを出してくれるのを望んだのかもしれない。
「送るわ。薄氷、あのもみじの木へ連れていってちょうだい」
「いいよ。ちょうど閉店時間だからね」
ぶわっと風が吹き抜けた。一瞬の後、私たち三人は司を連れてきたもみじの木の下にいた。
「ばいばい、司君。またね」
「はい、また。薄氷さん」
何か言いたそうに、司は私に視線を向けた。
「小夜さん。また、ボクを連れていってくれる?」
「ええ。司が望むなら、またこのもみじの下で神隠しをしてあげるわ」
うれしそうに顔を綻ばせた司の姿が消えた。ちゃんとふもとに戻れたはずだ。
それよりもっと、私には花を纏った水面の瞳が印象に残っているのだった。