第1話「なまはげのはなし」
「悪い子はいねかぁ~? 悪い子はいねかぁ~?」
なまはげは今日も制服を着崩して昼間に登校している女子高生を探していた。
「ちょっとおっさん、邪魔なんだけど」
制服を着崩した女子高生がなまはげを睨んだ。
「悪い子はいねかぁ?」
なまはげは制服を着崩した女子高生に問う。
「は?日本語しゃべれや」
なまはげの腹に強烈なストレートパンチをかます女子高生。
鈍い音と同時になまはげは倒れた。
「……です」
「は?」
「悪いのは…僕です…」
「気の強そうな女子高生に殴られると興奮する…悪い子なんです…僕は…」
なまはげは制服を着崩した女子高生に自分の性癖をカミングアウトした。
地面に倒れながら、女子高生のパンツを拝もうとするが、暑い日差しで逆光状態になり、上手くパンツも見えない。いったい自分は何をやっているんだろう。今はこんな変態になり下がってはいるが、高校3年間彼女が途絶えたことはないし、大学でもモテていた。どこから狂ってしまったんだろうか、僕の人生は。
「醤油に1週間漬けたジャンプを売るバイトですか…」
それはなまはげが大学2年の夏休みのある日の出来事だった。
彼の大学の「ガリガリ君の上辺のガリガリしてないところしか食べない軍団」というテニスサークルの先輩である田中邦衛から短期バイトに一緒に応募しようと誘われた。
「でもそんなことしたら週刊誌が週刊誌の意味を成さなくなりませんか?」
「それはいい質問ですね」
田中邦衛が池上彰風に返してくるのでなまはげは少しイラっとして田中邦衛のマンションの床に落ちていたうまい棒を袋の上から粉々にしてやった。
「頼むよ。俺もちょっと怖いんだけど、時給はいいからさ」
夏休みでやる事といったら、2歳の息子がいる24歳の若いママであると偽ってEテレで放送されている子ども向け番組の感想を番組ホームページのメールフォームから送るという日課しかなかったなまはげは少し考えたあと、誘いに乗った。
その日の夜は雨が降った。
つづく