人混みパラダイス
今回、かなりながいです。(´・ω・`)
一時間目、二時間目が終わり、十分ほどの休み時間に入った。
今日はやたらと廊下の方で、たくさんの人たちが二組の方に集まり、声がたくさん集まり、騒がしい環境ができてしまっている。
なぜ二組にこんなに人が来ているのかは、すぐに知ることができた。
たくさんの人たちの声がいやなほど耳に入り、内容がだいたい把握できた。
「ねえ!今日二組に新しい転校生が来たんだって!」
「女の子らしいよ!しかも可愛いだって!」
どうやら隣のクラスに女子の転校生が来たらしい。耳に入ってくる情報を聞くと、前の学校でも有名人だったらしく、それに美少女らしい。そんな情報を手に入れて、自分もちょっと会いたくなってきた。
そんな中、たくさんの人たちの声で賑やかな空気になっている様子が気にくわない生徒が一人、彼、月綺さんだった。
「うるさい・・・・眠れないぃ・・・」
「どしたの月綺?廊下が騒がしくて寝れないの?」
「そうなんだよ・・・昨日動画撮影してたら、気づいたときにはもう夜の十時半で、朝から眠たくてしょうがない・・・」
十時半でも十分寝ているような気がするが、月綺はいつも夜の九時半には、絶対に寝る子なので、彼からしたら一時間眠れないだけでも辛いのだろう。
月綺は、普段のんびりした性格で、特に好きなことは、静かな環境で、安心して眠ることが幸せを感じるらしい。眠るだけでそんなに幸福感に満たされるなんて、正直羨ましいよ君は。
「オレも転校生気になるし、行こうかなぁ。月綺も行く?」
「俺は遠慮しておく。眠くて動きたくない・・」
そっかと言って、オレも皆のいる二組のところへ、向かって行った。
オレたちのいるクラスは一組で、廊下に出て、少し進めばあっという間に着いてしまう。
二組の前に着いて、どんな子なのかな?とわくわくしながらその転校生を探しても人がたくさんいすぎて、あまり見つけることができない。
転校生探しに夢中なオレは周りの人たちが一斉に道を開けたのに気づかず、開けた道を早足で突っ走っている、一人の少女が開けた道のど真ん中にいるオレに、見事にぶつかってしまった。
「いたたぁ・・・すみません!周りをよく見てなくて!」
「いやいや!、オレこそちょっと集中してて、あまり周りを見てませんでした!」
ぶつかった少女は、ふわっとした薄茶色の綺麗な長い髪に、体が細くて、何よりもとても美人で可愛らしい少女だった。
「本当にすみません!それじゃあ私用事があるので!」
彼女はオレに一礼と謝罪をして、その場を去っていった。
それにしても、可愛い子だったなぁ。ああゆう子がオレたちの部活に入ってくれると、華やかになるんだろうなぁ。
おっとっといけない、いつまでも廊下の床にしりもちついている場合じゃない、早く起き上がらないと。
立ち上がったあと、気づいたことは、皆が一斉に帰ってしまったことだ。
皆どうしたんだろう・・・?まあ、いっか!転校生を見るのはまた明日で。
別に昼休みに見に行くという方法はあるのだが、その時間はオレが購買で、パンを買いに行く時間だからだ。
実は週に一度、水曜日だけに数量限定で販売される、とても人気のミルク風味の優しい甘さが絶妙のふんわりロールパンが販売される日だからだ。
しかも一日たったの五十個ほど、この学校の生徒数はおよそ、五百何十人はいる。いつもは穏やかで、生徒たちが平和に買いにくる場所だが、水曜日の日だけは、ミルクロールパンを巡り、たくさんの人たちで混雑する、いわば戦場とかすのだ。
ちなみにオレはそんな幻のパンを、一度も食べたことがない・・・。食べてみたい・・・
だから、今日こそは絶対にゲットしてみせると決断したのだ。
教室に戻ると、ちょうど良い時間に授業が始まるチャイムがなり、三時間目の授業を受けた。
放課後、部活の時間になり、オレと月綺は部活の部屋へ向かっていた。
昼休み、始まってしまった競争に参加し、あともう少しのところで負けてしまった・・・。
ちくしょうぅ・・・あともう少しもう少し手が伸びていれば・・・。
最後の一つ、あとわずかに手が届いていれば、まさか後ろにいた長身男に取られることなんて、なかったのにぃ・・・。
負けたオレは残っていた焼きそばパンを買い、腹を満たした。
オレたちの部室は三階にある飽き部屋を校長先生に許可をもらい、部員三人でリフォームした部屋で、なんだか自分家のように落ち着く場所だ。
部室に着いてドアを開けると、オレと月綺以外の、もう一人の部員が音楽を聞いて待っていた。
「今回も一番のりだな正。」
「ごめんね、遅くなっちゃって。放課後になった瞬間に月綺が寝ちゃって、起こすのに時間がかかって。」
「大丈夫だよ。僕もさっき来たばかりだし、もう慣れちゃってるから。」
彼の名前は、野田 正。
オレたちと同じ高校一年生で、この部活をまとめてくれる、副部長。落ち着いた性格で、知らない子にも優しく接する、誰にでも頼られるお兄さん的存在で、この部活の中で一番まともである。
正には、本当に助かっていると思うことが沢山ある。中学二年の頃に、クラスが代わって仲良くなり、高校も同じになって、オレが新しい部活つくりたい!と、いきなり言い出したときも、彼は笑顔で協力してくれた。
最初はグダグダな感じだったけど、正のおかげでかなりまとまった感じになった。どちらかというと、正の方が部長にふさわしいようなきがする。
オレたちの部室は、ちょっと大きめの部屋に、それぞれ好きな物を飾っている感じで、部室の真ん中には、大きなテーブルがおいてあり、数人分のイスがある。テーブルには、一口サイズのお菓子が入った、器がある。
右側の壁の方には、歌手のポスターが貼ってあったり、木材でできた棚に小説から、漫画、雑誌なのが綺麗にそろっている棚があったり、はたまた、左側の壁がわには、月綺のリクエストで、カーペットを敷いたところに、柔らかい大きなビーズクッションがある。
ここが月綺の特等席。誰も触れてはいけない。
この部室以外に左側にはドアがあり、そこから別の部屋に行くことができる。
もう一つの部屋には、動画などを撮影するための部屋と、撮影した動画を編集するためのパソコンなど、さまざまな機材がある。
そう、オレたちなんでも投稿部の部活内容は一ヶ月に一人二回以上は動画、画像を投稿する部活になっている。
このなんでも投稿部は、学校でもかなりの有名な部活で、動画編集や、歌の録音をするためにいろいろな機材を借りている代わりに、この学校の宣伝を時々する約束になっている。
なぜこんなにも有名になったかとゆうと、部員一人一人の才能が動画サイトでも、たくさんの再生数をのばしているからだ。
オレは主にゲーム実況や、オススメの商品の紹介などを投稿していて、面白い、また見たくなると再生回数が一番多い人だったりする。ちなみに動画では、あきという名前で活動している。
月綺は、主に歌ってみたの動画を投稿していたり、時々ゲーム実況を投稿したりしている。
月綺の歌声は、とても綺麗で透き通るような声をしていて、よくコメントでは
『ステキ‼カッコいい!!』
『これは惚れる。』
と、若い男女に人気の、最近評判のある歌い手でもある。月綺は、アオハという名前で活動している。
最後に正、正は主に商品紹介をしていたり、オレや月綺の手伝いや、コラボをしている。
正の商品紹介動画は、正の素直な感想や、コメントが分かりやすくて有名な人物である。そして何よりも正は顔出しをしていないのに、明るい声のトーンや、落ち着く声が評判でもある。正は、そのまま正とかいて、正とよむ。
しかし、今オレたちなんでも投稿部は、投稿のレパートリーが少なく、全然なんでも投稿部ではなくなっているということ。
なんてことだ・・・!
まさか、歌ってみた動画と商品紹介動画とゲーム実況動画の三種類しかそろわなかったなんて。
特に問題になっているわけではないが、これは部長として、なんとかしなければ!!
でも、なかなか部員が集まらないんだよなぁ。
やっぱり、投稿ってなると親の許可だったり、不安になったりして、入りずらいのかもなぁ。
「あっ、ごめん。ちょっとトイレ行ってくる。」
「はーい、行ってらっしゃい。」
部室を出たのは月綺で、部室にはオレと正の二人になった。
「そういえば、先生から聞いたんだけど、今日入部しに来る子が来るって。」
「へぇー、この部活に入部するこが・・ってえぇ?!!聞いてないんだけど?!初耳なんだけど?!」
「落ち着いて、落ち着いて。気持ちは分かるけど、一度落ち着こうか。僕もさっき聞いたばかりだから、橙星が知らないのはあたりまえだよ。」
まじかぁ!!
今日この部活に入る子が来るとか、もはやサプライズだわ!!どんな子なの?!と、正に聞くとその子は女の子らしい。
オレはさらに喜んだ。だって女子だよ?
部員が増えることも嬉しいし、もしかしたら、新しいレパートリーが増えるかもしれないし!
ああ、楽しみだなぁ。どんな子なんだろ。
すると部室のドアをノックし、失礼しますとドアを開けて、オレたちに礼をした、その『女子』がいた。
わあ、可愛い子だなぁ、でもどこかで会ったことあるような・・しかも割りと最近・・。
「はじめまして!黄瀬 明花と申します!このなんでも投稿部に入部したいです!」
「もちろんOKだよ!!もしかして君、休み時間オレとぶつかった子?」
「?知り合いなの? 今日、転校してきた人なのに。」
え?まさかこの子が転校生?ああ、どうりで二組の前が騒がしかったわかったよ。そうだよね、こんなに可愛い子がいたら、見てみたいよね!
そんな時、ちょうどトイレから帰って来た月綺が、転校生の明花さんと目があった。
「ただいま・・・・・え?・・・・・」
「あっ!月綺くん、久しうわぁ!!」
「・・・・・会いたかったぁ・・・・・」
今、何が起きているのだろうか。
あまりの急展開に頭の脳が落ち着いていない・・・・。
・・・・どういうこと?!。ええええええ?!!
あの月綺が?!あの一時期男好きと勘違いされていた月綺さんがあああ?!!
女子に、女子にだきついているうううう!!
そうだ!こういうときこそ、副部長の正になんとか・・・
「・・え?どゆこと?なにが今、僕の目の前に起きているんだ?」
だめだああ!!さすがにあの方も平常心を保っていない!!初めてだよ!正がここまで混乱してるの。記念に写真に納めたいくらいだよ?!
なぜこんな展開になってしまったんだ。
最初はただ、入部希望者がでて喜んでいたのに、なにがうれしいだ、なにがサプライズだ、そんなのは吹き飛んでしまうくらいの勢いで、新入部員という名の喜びは、あっという間にドッキリに変わってしまったようだった。