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現在、私ことアリスは面倒なのに捕まっています。
「アリス!なぜ急に人の国などに行くのだ!」
「そうだよ、アリス!なにもそんなに急ぐ必要はない。やりたいことがあるなら、この国でやればいいだろう!だから....」
「「一旦落ち着こう!!」」
いやお前らが落ち着け。
理解していただけただろう。今私はめんどくさい二人のシスコンやろ....兄二人に囲まれている。どこから嗅ぎ付けたのか、私が人の国へ行くことが伝わってしまったのだ。
「ちょ、本当にうるさい。なに言われようと、もう決めたことだから。父さんのところ行くから、いい加減通してよ」
私がはっきりと拒絶の言葉を言うと一瞬二人は愕然として、なにやらこそこそ話し出した。
「アリスが、アリスが反抗期に......」
「落ち着いてイフリート兄さん。これもアリスの愛情の裏返しと思えばそう悪くは....」
「はっ!そうか!」
いや、「はっ!」じゃないよ。違うからね。
こうしてみると本当にただの残念な人、じゃなかった竜だけど、竜族からは憧れと尊敬を集めている立派な人物なのだ。ただ、妹が絡むとただの残念な竜なだけで。
もう相手をするのも疲れたので、めのまえで壊れている二人を無視して父に会いに行くことにした。
「父さん、アリスです。入ってもいいですか?」
父の執務室の大きな扉の前で、なかにいるであろう父に声をこけた。
「ああ、いいぞ。入れ」
返事をもらい扉を開けて入った部屋の奥では、銀髪の美丈夫がゆったりと座っていた。がっしりとした体格で威圧感を放っていたが、アリスの姿をみとめると顔を微かに綻ばした。
「そろそろ来る頃だと思っていた」
「知っていたのですか?」
「当たり前だ。イフリートやダルトルが知っていて、私が知らないわけがないだろう」
「それもそうですね。....お許しいただけるのですか?」
不安そうにこちらを窺う娘に、竜王は苦笑した。
「反対したところで、おまえは行くだろう?一度決めたら頑として譲らないところは、母さんにそっくりだ」
何かを懐かしむように、窓辺に飾られたラベンダーの花を見つめた。
「母さん......ですか」
「ああ。おまえはあまり覚えていないだろうが、そのラベンダー色の髪も、目元も竜化した姿も母さんそっくりだ。もちろん口元や鼻は私似だがな...」
父は優しく笑うと、「行ってこい」と言った。
その頃、兄二人は......
「レオン、わかってるだろうな。アリスに手を出してみろ、家族総出でシメに行くからな」
「本当は、僕たちが一緒に行きたいんだ。代わって」
レオンに絡んでいた。
当のレオンは涼しい顔でその絡みをかわしていた。
「いくらお二人でも代わりませんよ。それから......」
二人を避けて歩き出しながら、レオンはゆっくりと口を開いた。
「手を出すか出さないかは、保証できませんね」
去り際に、彼はとても大きな爆弾を落としていった。